Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
一昔前はシーズンごとにトレンドがめまぐるしく変化していましたが、近年は2、3年にわたって続く「長持ちトレンド」が増えています。その代表格と言えそうなのがチェック柄の人気です。ブリティッシュ(英国調)ブームからの流れを受けて、さらにバリエーションが広がっています。 カラフルなタイプや格子大きめのチェック柄は着姿を程よく華やがせてくれます。ただ、着る人が多くなってきただけに、ありきたりを避けたいところ。新たに狙いたい着こなしの新ムードは「フェミニンチェック」。ネルシャツに代表される、ボーイッシュな従来イメージを裏切る、女っぽさを帯びたアレンジです。
チェック柄は秋冬トレンドのマスト級と見られていますが、ジャケットやコートでは着る期間が限られます。そこでおすすめしたいのは、このようなシャツワンピース。ワンピースとガウン、両方の気分を楽しめるうえ、シャツ感覚で着られて、暑苦しくもないので、夏のうちから使えます。味わい深いオータムカラーのチェック柄は、1枚で着ても、落ち着きが備わります。マキシ丈ワンピース風にノンシャランな雰囲気でまとえます。
ウエストでゆるくたるませるブラウジングを施すと、表情が変わります。カットソーの上から着て、ロングスカートに重ね、ルーズにブラウジングすれば、くつろいだ風情に。前を完全に開けて、ローブのように羽織ると、自然な落ち感が生まれます。手間いらずで縦長シルエットを印象づけてくれるから、使いこなしたい重宝アイテムです。
シーズンをまたいで使い回せるのもうれしいところ。たとえば、さっぱりしがちな夏服にさらりと羽織るだけで、ほんのり秋気分を添えられます。ジーンズにTシャツといったシンプルなコーディネートの上から羽織って、カジュアル感を抑える使い方もできます。袖をまくり上げたり、前の開け具合を変えたり、様々なアレンジで見え方が変化するから、どんどん引き出しを開けてみてください。
「フェミニンチェック」を際立たせるのは、ラッフルやドルマンスリーブ、抜き襟といった、女らしさを醸し出す演出です。ラッフルは可憐なフリルに比べ、ひだが大きい分、たおやかなムードに。こちらのブラウスはラッフルとメンズ風チェック柄が同居して、味わい深いたたずまいです。
ゆったりしたドルマンスリーブに、すっきり開いたワイドV襟ライクなネックラインが伸びやかな風情。抜き襟風のネックラインが女らしさを演出しています。 チェック柄の色調は、どこか懐かしげなヴィンテージトーンを帯びました。いつものジーンズに合わせるだけで、ムードを変えられるから、コーデが手間いらず。甘さとスパイスのバランスが取れた「おいしい」風味のチェック柄ブラウスが装いを盛り上げてくれます。
チェック柄の魅力はもともとメンズテイストを帯びているところにもあります。英国紳士風のスーツが物語るように、きちんと感も出せます。その持ち味を生かして、フェミニンなスカートと引き合わせれば、品格を宿しつつも、こなれコーデに仕上がります。 レディーライクなスカートに、ブラウスやTシャツなどを合わせて、程よくハズす(=堅さをやわらげ、リラックスした雰囲気を出す)スタイリングは、もはや一般化した感もあります。その先を狙うのであれば、こちらのようなチェック柄のノースリーブを取り入れてみては。適度なメンズ感やきちんとテイストが備わります。秋の足音を感じさせるうえ、袖がない分、涼しげな着映えは夏のうちから楽しめます。
クラシックなムードのカラーミックスが施してあるので、単調に見えません。実は首の詰まった正面と、深めのVネックになった背中側を、ぐるっと入れ替えて着られる「前後2WAY」の仕立て。その日の気分や、着て行くシーンに応じて、前後を自在にスイッチして着回せるから、出番も2倍です。
こちらは色違いのピンク系チェックです。ソフトな色味を生かして、このようにジーンズとのコンビネーションも組み立てられます。見慣れたTシャツよりも洗練された着映えに整えられます。 ウエストの始末は、正面の裾だけをボトムスにしまう「ゆるイン」で決まり。バッグとブーツも秋らしさを加えるのに役立ちます。季節の変わり目にはカーディガンを肩掛けしたり、ジャケットやライダースを羽織ったりして、温度を調節できます。
チェック柄トップスと無地ボトムスのコーデになれたら、別のモチーフとクロスオーバーさせる「柄on柄」のコーデもおすすめです。こちらのようなレトロな小花柄のロングスカートに先に紹介したチェック柄のトップスと合わせみても新鮮です。質感や柄の違いを際立たせるスタイリングを楽しめるようになれば、さらにコーデの幅が広がります。
(c)Rie Miyata
異なるモチーフ同士を響き合わせる「柄on柄」は上級者向けと思われやすいのですが、必ずしもそうでありません。こちらはプリントブラウスとプリントスカートでの柄on柄コーデ。くすんだ色味を取り入れ、落ち着いた抽象的モチーフを生かした、レトロ感と上品さを兼ね備えた着こなしは参考になりそうです。
ニットをはじめ、巧みな生地使いに定評のある英国ブランド「MARKUS LUPFER(マーカス ルプファー)」は見事なチェック柄のミックスコーデを披露しました。2018-19年秋冬ロンドンファッションウィーク(18年2月)を現地取材した際に見たルックです。チェック柄のコートドレスやセットアップなどが秋冬コーデを上品に彩りました。ロングマフラーを長く垂らして、ベルトではさんだ提案も、秋冬になったら使いこなしたい小技です。
チェック柄はこの秋冬のビッグトレンドですが、その先もアレンジを変えながら、勢いが続く気配です。シーズンにとらわれず、ほとんど通年で着回せるのは、ロングトレンド物の大きな魅力。夏にはシンプルな着方でまとい、続く秋冬はレイヤード主体で別の表情を引き出せるので、季節ごとに違う着こなしが楽しめます。