Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
大人っぽくて端正なジャケットが2018-19年秋冬シーズンのトレンドアイテムに浮上してきました。クラシカルな風情で、きちんと感のあるジャケットが見直されています。お仕事で重宝するのはもちろんですが、あえてデイリーに着こなすのが今度の秋冬らしい新鮮なスタイリングです。
とりわけ注目が集まっているのが、深く打ち合わせるダブルブレストのジャケット。かなり男性的なシルエットだけに、難しそうに見えるかもしれませんが、実はフェミニン感を引き出せる、おすすめのアイテムです。その効果を見てみましょう。ゆるっとした夏服にそろそろ飽きたら、ジャケットの出番です。
ヴィンテージ感を帯びたコーデュロイは今度の秋冬に脚光を浴びるトレンドマテリアル(素材)。どこか懐かしい風情があるのに加え、リッチな質感も備えているので、ジャケットとして羽織れば、着姿全体にクラス感が漂います。
全身を同じ色味でそろえるワントーン・コーディネートもおしゃれの新ルールとして勢いづいています。あえてカジュアルアイテムと交わらせるのが、上手なジャケット使いの鉄則だから、シンプルな白Tシャツの上から重ねて。
ノーカラー(襟なし)は襟がない分、やわらかい着映えに仕上がります。ドロップショルダーのフォルムも気負いを遠ざけています。同じ生地のスカートが用意されているので、スーツ風にセットアップ(上下そろい)でまとって、お仕事ルックをイメージチェンジできます。休日はスニーカーに履き替えて、軽やかに着こなして。
エアタンコーデュロイジャケット ¥38,000(+tax) BUY
サキソニーウールワイドパンツ ¥25,000(+tax) BUY
ブレザーのうれしい進化が続いています。アイビールックに象徴されるボーイッシュなイメージがありますが、ノーカラーのブレザーはフェミニンな表情。そして、金ボタンとダブルブレストが正統派イメージを印象づけます。
内側に着たシャツやブラウスを胸元からのぞかせるのが基本の重ね着ですが、きれいに隠れるインナーと組み合わせれば、まるでジャケットを1枚で着ているかのように見える、クールでエレガントな着姿に。すっきりしたVネックに映り、フェミニンとマニッシュが融け合った、趣の深い装いに整えられます。
スタイリング技を投入して、こなれた着映えに見せられます。たとえば、ひじのあたりまで両方の袖をまくり上げれば、抜け感を出せます。紺色のジャケットに、少し色味を変えた、黒のニットパンツで合わせて、型にはまりすぎない「ずらしセットアップ」のコーデに。普段使いにもスイッチしやすく、自然と出番が多くなりそうなジャケットです。
英国ムードを醸し出すチェック柄は今季のキーモチーフと位置付けられています。もはや一時的なトレンドを超えたスタンダード、マスト級の存在に昇格。ブリティッシュトラッド調のジャケットとは、発祥が同じだけあって、抜群の相性を発揮します。
トラッドな仕立てのウールジャケットは大人の品格をまとわせました。大きめの襟がヴィンテージライクなたたずまい。水牛ボタンは特別感の高いパーツ。ダブルブレストの紳士服ライクなダンディー仕上げがかえってフェミニンさや華奢感を引き出してくれます。
ジャケットにメンズ感がある分、ボトムスはマキシ丈スカートのような、女っぽさを宿したアイテムを選ぶと、ソフトな着映えに。秋にぴったりのニュアンスカラーでまとめると、品のよい見え具合に整えられます。マスキュリンなシューズを添えて、揺らめくスカートとのずれ感を生むのも、「大人ジェンダーミックス」の賢い操り方です。
丁寧にテーラードされたチェック柄ジャケットは、それ自体に本物感があるから、自在の着こなしが選べます。たとえば、デイリーウエアの代名詞的なジーンズに合わせても様になります。タートルネックのニットセーターに、ウォッシュを利かせたジーンズというベーシックなコンビネーションに、本格ジャケットを羽織るだけで、ムードに深みが加わりました。
ダブルブレストの前を開けて、ゆったりしたムードを漂わせると、普段着使いになじませやすくなります。秋から冬にかけての羽織物としては、ブルゾンよりもきちんと感が出せて、コートよりも軽やか。最後にサッと羽織るだけで済むので、忙しい朝の「時短コーデ」にも役立ちそう。
ウィメンズ用のジャケットは丸みを帯びたフォルムに仕立てることも多いのですが、あえてメンズライクに仕立ててあります。ジャケットにマニッシュな薫りがあるおかげで、たおやかな雰囲気のスカートでも合わせやすくなっています。手持ちのスカートやパンツに別の表情を添えてくれるから、秋から冬にかけての着回しを助けてくれるでしょう。
チェックピークドジャケット ¥44,000(+tax) BUY
(c)Rie Miyata
こちらはシングルフロントのジャケットですが、ダンディーな総柄タイプ。まるでカーディガンのようにさらりと羽織って、気負わいないムードに仕上げました。程よいヴィンテージ風味もこなれ感を生んでいます。パープルのストライプシャツにブルーのV襟ニットを重ね、色で着姿を弾ませています。ロウデニムのジーンズは裾を深めに折り返して、足首見せで軽やかな足元を演出。複数のテイストミックスした秋レイヤードはジャケットコーデのお手本にしたくなります。
ジャケットには仕事やセレモニーのイメージがありますが、実はデイリー使いにも向く万能タイプの羽織り物です。紳士服テイストの本格ジャケットが1枚あれば、オフィス用にも普段使いにも自在に着回せるから、秋冬コーデに幅と深みを加えられます。