Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
秋から冬にかけての時期は、1年で最もおしゃれの選択肢が広がる時期です。いろいろな着こなしが楽しめるから、まるで日替わりのように、気分やシーン次第で装いをスイッチしていきたいもの。
そこで、今回はコートからシャツまで、様々なウエアを使った、秋らしい着こなしをご紹介します。共通するパートナーに迎えるのは、ジーンズ。最も身近で、最も使い勝手のよいボトムスと言えるジーンズを軸に、秋冬の1週間着回しパターンを考えてみましょう。
最初に試したいのは、英国紳士服の面影を残すチェスターコートです。本来は着丈が長めのコートですが、こちらはあえて軽い着心地のコートジャケットに仕上げています。チェスター本来のスレンダーなシルエットはそのままに、コンパクトサイズへアレンジ。ウールの質感、光沢を帯びた風合いが、デニムとの違いを際立たせました。
小ぶりで縦長のフォルムは、着る人の体型を選びません。ジーンズに重ねても、デニム生地が隠れすぎないから、全体が好バランスに整います。色と素材のコントラストを利かせて、ツートーンにまとめるのが上手な着こなしです。
サキソニーチェスターコート ¥48,000(+tax) BUY
次はシャツに目を移しましょう。トレンドが続くオーバーサイズはシャツでも支持が広がっています。秋らしい色味のカーキカラーはシャツにオータム気分を呼び込んでくれます。空気をはらんだようなボックスシルエットが伸びやかなムードを漂わせています。
オーバーサイズの量感を引き立たせるには、正面の裾だけをジーンズにウエストインするのが効果的。前後でアシンメトリー(不ぞろい)になり、動きが演出できます。程よく光沢があるので、デニムとの風合いの違いも出せます。襟元に抜け感を漂わせたオープンカラーのシャツに、ジーンズを合わせてジェンダーミックス的な着こなしを楽しんで。
ボックスオーバーシャツ ¥19,000(+tax)
この秋冬に勢いづくトレンドの一つに「ストリート」があります。代表的なアイテムがスウエット生地のパーカ(フーディー)です。ただ、ありきたりのスウェットパーカでは、子どもっぽく見えがち。そこで、大人女性向けに仕立てられた「格上パーカ」を選ぶ必要があります。
こちらはフードが首元で少し立つ造りだから、ルーズに見えません。生地もスエードタッチの裏毛素材を使っているので、リッチな風合い。適度に上品な雰囲気があるおかげで、ジーンズと合わせても、きれいめカジュアルにまとまります。ジーンズをエレガント系スカートに差し替えれば、雰囲気の異なるパーカとスカートが互いを引き立て合うミックスコーディネートにも整えられます。
「オーバーボリューム」が合い言葉になりそうな、2018年秋冬シーズン。ただ、むやみにかさばらせればいいというわけではなく、きれいなフォルムを描き出すことが条件となります
ドレープをたっぷり配したシャツワンピースは、眺めているだけでも、穏やかな気分に誘われそう。襟をワイヤーがささえているので、どこか凜としたたたずまいに。1枚で着ても、もちろん素敵ですが、ジーンズの上からまとえば、今年らしいレイヤードに仕上がります。ビッグシルエットのワンピース裾からジーンズが覗くことで、脚がスレンダーに映ります。
フレアサックシャツワンピース ¥20,000(+tax) BUY
秋の休日にぴったりの、伸びやかな雰囲気を印象づけるのは、やはり薄手のロングカーディガンでしょう。しんなりとボディラインに沿ううえ、腰周りも包むから、体型を目立たせません。さらりと羽織るだけで、こなれた着姿に。リラクシングな縦落ちイメージが着姿全体をほっそり見せてくれます。
接ぎ目のない「ホールガーメント手法」で編まれたおかげで、引っ掛かりのない、極上の着心地。肩周りのつっぱり感もないので、気持ちまで楽になれそう。オータムカラーのカーディガンは、浅くウォッシュを掛けたジーンズのブルーと調和。やわらかい着映えに見せてくれます。カーディガンのソフト感とジーンズのアクティブ感をクロスオーバーさせるミックススタイリングがおすすめです。
ホールロングカーディガン ¥18,000(+tax) BUY
コートの表現力が一段と増しています。厚ぼったくてかさばるという古いイメージとは別物の、軽くしなやかなコートが登場。ノンシャランとしたムードで羽織りやすい、ストレッチの利いたコートは、ボトムスとの相性にも優れています。
ノーカラー(襟なし)のラウンドネックは気負いを感じさせない着映え。身頃にタックを施してあり、適度な立体感が備わりました。コートの軽やかさを印象づけるには、前を開けて、ジーンズをできるだけ広くのぞかせて。靴をピンヒールにすると、ぐんとフェミニン度がアップ。ジーンズのデイリー感を遠ざけてくれます。
(c)Rie Miyata
ヴィンテージ風味を帯びたテーラードジャケットを、ジーンズと組み合わせるアレンジが大人っぽい着姿に導きました。スポーティなジップアップ・トップスを内側に着込んで、アクティブ感も盛り込んでいます。
ハイウエストのジーンズに、トップス裾をウエストイン。伸びやかなレッグラインをアピール。テーラード、スポーツ、ジーンズというトリプル・テイストミックスの味わい深い装いが完成。ハイウエストのジーンズは秋冬アウターを重ねても、シャープな印象を保ってくれるから、ワードローブに迎え入れておきたくなります。
様々なトップスや羽織り物と組み合わせても、程よく主張してくれるジーンズはシーズンを越えて重宝なプレーヤーです。デニム生地の持ち味を生かしつつ、別のムードを添えるスタイリングを手に入れれば、着回しのバリエーションが格段に広がります。秋冬はアウターの存在感が大きくなる分、かえって装いが単調になりやすいから、こうしたコーデを駆使して、秋冬のおしゃれを楽しんでみてください。