Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
一回り大きめの「オーバーサイズ」のフォルムがこの秋冬もおしゃれトレンドの主役になります。ニットが醸し出す、ゆるっとしたざっくり感はゆったりシルエットにしっくりなじみます。ニットならではの心地よさはオフの日だけではもったいなくて、お仕事ルックにも持ち込みたくなります。大人の余裕を漂わせつつ、ルーズに見せないざっくりニットをまとうなら、「素材、編み方、シルエット」の3点セットに目配りして。今回は、人気のざっくりニットをバリエーション豊富にピックアップ。それぞれの持ち味を生かした着こなしもご紹介します。
量感と軽さが両立した、ゆったりフォルムのチュニックです。贅沢なボリュームのあるニットウエアは、着たときの重たさが気になりがちですが、カシミヤ100%なら軽やか。少しだけ深めのVネックラインが気負いを遠ざける「エフォートレス」のたたずまい。絞った手首の手前でたるませたニットがやさしげムードを醸し出しています。
コーディネートプランのおすすめは、生地をたっぷり使った、優美なフォルムのボトムス。エレガントなドレープがチュニックと響き合うよう。チュニックは締め付け感のないカシュクール仕立て。実は左右で編み地を変えてあるので、着姿に自然な動きが加わりました。同じ素材で用意されたマフラーも顔周りにボリュームを添えて、小顔効果を引き出してくれます。
カシミアカシュクールチュニック ¥45,000(+tax) BUY
シルクサテンワイドパンツ ¥45,000(+tax) BUY
この秋冬に盛り上がるトレンドのひとつに、どこか懐かしげなレトロテイストがあります。程よくオーバーサイズのタートルネック・ニットは、ノスタルジックで人なつこい表情。とびきりソフトなラムウールはこのフォルムと好相性。立体感の豊かなプルオーバーに仕上がりました。袖先のリブ編み部分が長めになっているのも、愛くるしいムードを醸し出しています。
タートルネックののどかな雰囲気に合わせて、スカートも穏やかな見え具合のタイプをチョイス。大人レトロなイメージにまとめ上げました。プルオーバーの裾が前後で丈違いになっているうえ、ゆるやかに曲線を帯びているので、自然な立体感が生まれています。着心地は楽ちんなのに、程よい「きちんと感」があるおかげで、着て行けるシーンも広がりそうです。
ラムウールオーバータートルニット ¥21,000(+tax) BUY
ニットの存在感がぐんと大きくなったのは、この秋冬の様変わりポイントと言えるでしょう。とりわけ、ニットアップ(ニットのセットアップ)はスーツに取って代わる勢いでトレンドアイテムに急浮上。やわらかいニットの質感が生きて、織物仕立てのスーツに比べて、格段にフェミニンでやさしげなムードに。
もちろん、お仕事ルックにも使えます。こちらのプルオーバーはネック周りにもしっかり分量を取って、小顔効果を発揮。袖先や裾の編み地が着姿をうまく引き締めています。セットアップで使うほかにも、単品でコーディネートを楽しめる、出番の多いニットです。
セットアップのスカートはリブ編みがスレンダーなシルエットを描き出しています。よく見ると、上下で編み地を変えてあります。統一感があるのに、のっぺりして見えないので、一段、格上のニットアップに見せられる仕掛けです。ニットの質感を引き立てるには、つややかなレザーのロングブーツを足元に迎えてみましょう。
ニットトップスを着こなしのキーアイテムに据えるなら、素材や色でニットの持ち味を際立たせたいもの。ケーブル編みのプルオーバーは、アンゴラウールをブレンドしてあるから、さらに上質感が加わっています。
チュニックに重ねて、風合いの違いを印象づけました。プルオーバーとチュニックの着丈がずれている分、縦長感が強まっています。パンツを添えて、大人っぽいレイヤードに。プルオーバーのオーバーサイズが細感を引き出してくれ、優美なレイヤードルックに導きました。
ケーブル杢プルオーバーニット ¥22,000(+tax) BUY
ロングチュニックブラウス ¥18,000(+tax) COMING SOON
サキソニーウールワイドパンツ ¥25,000(+tax) BUY
秋冬に着たいニットウエアの筆頭格に、チュニックがあります。ボディラインをソフトに包む、ニット特有のシルエットが腰まわりをぼかしてくれる体型カバーの効果大だからです。腰までしっかりくるむから、ぬくもりも逃がしません。オーバーサイズなシルエットがリラクシングな雰囲気を醸し出しました。ラクーンのやわらかい風合いもフォルムの表情になじんでいます。
横長に開いたボートネックのおかげで、程よいオフショルダーが印象的。さりげない肌見せがフェミニン感を添えました。つまり、体型をカバーしつつ、ほのかな色香も薫らせる欲張りニット。色味が引き立つよう、ボトムスは白パンツできれいめにコーデ。シルエットはルーズ風なのに、袖先のほっそりしたリブが全体にめりはりをもたらしています。
ラクーンルーズチュニック ¥24,000(+tax) BUY
サキソニーウールワイドパンツ ¥25,000(+tax) BUY
重宝なニットチュニックの中でも、ロング丈は出番が多くなるアイテムです。膝上まで届く着丈は着姿に落ち感を演出してくれます。身頃からつながったタートルネックは、さらに縦長イメージを増幅。両サイドに切れ込ませた大胆なスリットが装いをすっきり見せています。
写真のように、色味がはっきり異なるボトムスを合わせ、スリットを目に飛び込ませるアレンジが効果的です。アウターが重たくみえがちになる秋冬だけに、このようなシャープな印象を引き出せるディテールは頼りになります。
(c)Rie Miyata
寒くなると恋しくなるのがざっくりニット。袖を少したくし上げて、ひじから先をのぞかせることで、ニットとのボリューム格差が際立って、華奢に見えています。タートルネックの内側に少し髪の毛を差し込んでいるのも、上手な小技。
さらに、ジーンズのウエストに、セーター裾の正面だけをゆるくイン。細ベルトをチラ見せ。ウエストに少しだけインすることで、もっさりして見えないという、巧みなアレンジです。
足元は、ショートブーツのファスナーを少し開いて、デニムの裾先だけを軽くブーツイン。首元、手首、ウエスト、足首という4カ所での技ありディテールは冬ルックのお手本になります。
秋冬にうれしいぬくもりを保証してくれるニットですが、今シーズンはセットアップやオーバーサイズで格上のおしゃれアイテムに抜擢するのが新しい迎え入れ方です。新鮮な着こなしプランも参考に、ニットとの新たな付き合い方を見付けるシーズンにしていきましょう。