Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
着こなしのレパートリーからはずせない存在になってきたワイドパンツはこの春夏も頼れるボトムス。ただ、せっかく選ぶのなら、ほっそり感や脚長イメージを期待したいもの。「ガリャルダガランテ」の進化系ワイドパンツには、そんな願いをかなえるタイプがそろいました。脚がきれいに見えるワイドパンツの着こなしポイントをつかんで、さらに賢くアレンジしていきましょう。
そもそも「ベイカーパンツ」とは、言葉が示す通り、パン職人(=baker)が仕事用に着たパンツのことです。形はいわゆるワイドパンツなのですが、貨物の運搬作業員が穿いたカーゴパンツに比べ、ゴツさが薄い点が特長です。
見た目上の違いは、カーゴパンツの目印ともいえる張り出しポケットがないところ。縫製もカーゴほどワークウエア風ではないので、やさしげテイストやきちんと感が備わっています。
カーゴは武骨さやミリタリー風味がある分、穿いていける場面が限られます。その点、ベイカーは「きれいめ」な雰囲気でコーディネートできます。
たとえば、コンパクトな白Tシャツで、シルエットのめりはりを際立たせるのも、春夏向きの着こなし方。ヒールのサンダルでフェミニン感を添えて、全体のバランスをカジュアルに寄せすぎないのが上手なアレンジのコツです。
ヒップポケットは残してあるので、ワークウエアの風情は後ろ姿に漂っています。ポケットや裾のステッチも程よく作業着テイストを薫らせています。
ウォッシュコットンパンツ ¥11,000(+tax) BUY
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グリーン系は春らしい若々しさやナチュラル感を印象づけてくれる色です。癖のない色だから、着回しにも重宝します。
今回のベイカーはスラブ生地を使っています。スラブとは、綿糸の太さをそろえすぎず、あえて凸凹にした糸のことです。ややざらついた風合いになるので、自然なヴィンテージ感が生まれます。ナチュラルな質感があり、表面がのっぺりして見えにくいから、薄着になる春夏でも、退屈に見えにくいというメリットもあります。
凹凸のおかげで、肌離れが程よく、汗ばむ季節でも、さわやかに過ごせます。肌当たりがソフトなのも、うれしいポイント。今回はワンウォッシュ加工を施してあるので、表情に深みが加わっています。
温度が不安定な春から、真夏に向かう時季のトップスでは、カーディガンやニットトップス、ブラウスなどがキーピースになります。ベイカーパンツとの合わせでは、トップス裾のアレンジで雰囲気を変えられます。
まずは裾をきっちりウエストインして、すっきりと整える基本形をマスター。カーデの裾をウエストアウトすると、ゆる感が出やすくなりますが、しっかりパンツにしまえば、お仕事ルックにも着回しやすくなります。
ウォッシュコットンパンツ ¥19,000(+tax) BUY
次にゆるニットです。カーデと同じく、きちんとウエストインしても構わないのですが、正面だけインして、残りを遊ばせると、のどかなたたずまいに。ニットのやわらかい質感を生かせます。力みを遠ざける「エフォートレス」の着姿に仕上がります。
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最後はふんわりブラウスと合わせて。甘くなりすぎないのは、パンツが帯びるワークウエア感のおかげ。フェミニンなトップスで合わせて、それぞれのテイストを中和させると、全体にこなれ感が出ます。
ウォッシュコットンパンツ ¥19,000(+tax) BUY
コットンギャザーブラウス ¥19,000(+tax) BUY
今春夏の新顔ボトムスとして期待を集めるのが、裾広がりのマリンパンツです。別名「セーラーパンツ」とも呼ばれるように、もともとは水兵が穿いていた制服です。海のミリタリーパンツともいえるでしょう。
マリンパンツの目印は、ボタンで留めた前当てでしたが、今では飾りボタンだけが残っています。ウエストからももにかけて3個ほど連ねるのが一般的な配置。大ぶりボタンの効果で、ウエスト周りがシャープに映るという、うれしいおまけ付きです。メタリックなボタンは、クールな雰囲気もまとわせてくれます。
生地にハリ感があるので、きれいなシルエットをキープしやすくなっています。光沢を抑えてあり、シーンを選ばずに着回せます。もともと制服だっただけに、全体にキビキビ感があり、お仕事ルックに生かしやすいのも、マリンパンツの魅力です。
本来のマリンテイストを生かすには、白のトップスがベストの選択。マリン配色のボーダー柄も涼やかムードを呼び込んでくれます。
裾幅がゆったりしたパンツなのに、腰回周りがほっそりして映るところがマリンパンツのよさ。トップスをウエストインすれば、大事なボタンが隠れません。メタリックチェーンのバッグを持てば、ボタンと金属的なつやめきが響き合います。
ホールボーダープルオーバーニット ¥14,000(+tax) BUY
帽子やスカーフは視線を引き上げてくれるので、全体が縦長シルエットに映ります。編み地や柄でストライプ(縦縞)を取り入れるのも、縦落ち感を引き出す効果があります。トップスとパンツを白系で統一すれば、クリーンな着映えに仕上がります。
ワイドパンツの勢いが続いていますが、見慣れたアイテムになりつつあるだけに、ありきたりに見えにくい「変化球」を試したくなります。表面にハリのあるタイプが多い中、脚さばきに連れて、エレガントに揺らめくワイドパンツは、風情に新鮮さが感じられます。
やわらかい生地で仕立てた、ボリュームたっぷりのパンツはドレープがきれいに出るから、優美なムードを印象づけます。ゆったりした見え具合がボディや脚を細く見せる着痩せ効果も期待大。
メランジニットキャミソール ¥13,000(+tax) BUY
少しスモーキーなパステルが大人ゴコロをくすぐります。アイシーブルーとスモーキーラベンダーは、どちらも甘さがくどすぎない、絶妙なトーン。
たっぷりしたワイドパンツの内側で脚が動くと、かえって華奢感を印象づけられます。ドレープの効果で、細感はさらに際立ちます。
アイシーブルーワイドパンツコーデのように、コンパクトなトップスで合わせて、腰のくびれを強調する「フィット&フレア」のフォルムを打ち出してもいいでしょう。逆に、スモーキーラベンダーワイドパンツコーデのように、淡い別色のざっくりニットを重ねて、「トーン・オン・トーン」のコーデで大人かわいい雰囲気に演出する選択肢もあります。
<BARENA>ストライプワイドパンツ ¥32,000(+tax)
ワイドパンツは無地が主流ですが、柄で彩ると、単調に見えにくくなります。かさばって見せないためには、ストライプ柄を選ぶのが賢い判断。視線を縦に誘う分、細見え効果が強まります。ストライプ柄は今シーズンの注目モチーフだけに、速いうちから取り入れたいものです。
こちらのように太めの「チョークストライプ」は鮮度の高い新顔モチーフ。チョークで引いたかのように、線の輪郭がぼやけているチョークストライプ柄はラインがきりっとしすぎない分、きつく見えにくいというメリットがあります。
無地のトップスと合わせれば、ストライプが引き立って、レッグラインのシャープ感が強まります。ワイドパンツとストライプ柄の相乗効果で、マニッシュな雰囲気が濃くなる分、トップスでフェミニンさを薫らせると、ジェンダーミックスの装いに整えられます。たとえば、袖先が広がったベルスリーブのニットはやわらかいムードを添えてくれます。ストライプ柄の色に近い色をトップスに迎えると、全体が落ち着きます。
短め丈のボレロ風カーディガンはワイドパンツの量感を際立たせるので、スラリとしたレッグラインを演出。深めのVネックや、少し着余る感じの袖丈も縦落ちイメージを引き出してくれます。
<BARENA>ストライプワイドパンツ ¥32,000(+tax)
コットンショートカーディガン ¥18,000(+tax) BUY
(c)Rie Miyata
トレンドアイテムになりつつあるベイカーワイドパンツはトップスとの組み合わせ次第で、自在に表情を変えやすいボトムスです。こちらは前後で裾丈が大胆に異なるイレギュラー(不ぞろい)ヘムの白いシャツとのマッチングで、縦長感を強調しています。シャツの印象が生きて、ドレッシーな着映えに仕上がりました。
ロングトレンドになっているワイドパンツですが、新顔タイプを取り入れたり、着こなしのアレンジを加えたりするだけで、新鮮なムードで着回しのバリエーションが広がります。春らしいニットも、新フォルムが増えているので、ワイドパンツのパートナーアイテムに迎えたくなります。アクティブ感と大人っぽさを兼ね備えたワイドパンツはこの春夏も出番が多くなりそうなだけに、新タイプと新コーデの掛け合わせで、マルチな着こなしを楽しんでみてくださいね。
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