Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
春の着こなしにはロングアウターが重宝します。春冷えをブロックしてくれるのはもちろん、優美なシルエットは春らしいムードの味方。やわらかい雰囲気の着こなしにも役立ちます。この春におすすめしたいのはワークウエア系やリラックス系など。幅広いスタイリングが楽しめます。「ガリャルダガランテ」の新作を生かした着こなし提案は、アイデアとバリエーションが豊富。頼れる春コートがあれば、新シーズンの幕開けにふさわしく、新しいイメージをまとえます。
今のミリタリーは「薄め」が支持されています。理由は扱いやすさ。癖が強くないので、マルチに着こなせます。こちらのトレンチはオーバーサイズ気味で、ゆったり着られます。今までのカッチリしたトレンチコートとは異なり、落ち感がきれいに出るので、気負わないこなれムードに。
前を開けたり、ベルトで締めたりで、シルエットが様変わり。気温や気分に応じて、春コーデを多彩に楽しめます。たとえば、前を留めてベルトを巻いたときは、袖口を無造作にたくし上げれば、程よいヌケ感とフェミニンが薫ります。
前を開けたときはオーバーサイズを楽しみ、ベルトを締めたときは「フィット&フレア」シルエットを演出と、大人の女性にふさわしい、こなれトレンチコーデを楽しんで。
デニム人気が復活するのは、この春の朗報です。新しい傾向としては、ワークウエアやアウトドアとの接近が目立ちます。ユーティリティーと呼ばれる、実用性や機能性を感じさせる演出は、自然なこなれ感を寄り添わせてくれます。
こちらのデニムカバーオールジャケットはビッグポケットが4個も添えてあり、ワークウエア風の見え具合。ウィメンズ服にはポケットが少ないのが一般的でしたが、これならスマホも手袋も持ち歩けそう。これまでありそうでなかったデニムコートの誕生です。
ロング丈だから、縦長イメージは申し分がありません。細身パンツの上から羽織れば、レッグラインの細感を引き出せます。「デニムonデニム」のワントーン・コーデも試したくなります。
適度なケミカルウォッシュをかけてあり、ユーズド感もしっかり出ています。メンズライクな表情を帯びていて、タフな雰囲気に。共布のベルトが付いているので、キュッと絞って、くびれを印象づける着方も選べます。
デニムカバーオールジャケット ¥38,000(+tax) BUY
アメスリニットタンクトップ ¥11,000(+tax) BUY
春トレンドの一角を占めるのは、つやめきやシャイニー感を宿した装いです。メタリックな光沢感を帯びた生地で仕立てたウエアが上質感を呼び込みます。
パウダーカラーで整えたコーデは、軽やかな着映え。光を受けた加減で、色味が変わって見える、シャンブレー生地の風合いがフェミニン感を際立たせてくれます。斜め掛けのポシェットが落ち感を添えました。サンダルもホワイトでそろえて、きれいめに整えています。
着丈が長めのオーバーコートは冬から春まで着続けられるうえ、秋の立ち上がりからも出番があり、真夏以外はほとんど通年で着やすいシーズンレス・アウター。地色はブルーですが、シャンブレー特有の性質で、玉虫色の光沢を帯びています。ブルー系でもグリーン系でも合わせやすいので、コーデの幅が広がります。
やや大きめの襟と、伸びやかなシルエットが華奢感を引き出す仕掛け。裏地がない分、着心地が軽く、レイヤードを組み立てやすい春コートです。
シャンブレーオーバーコート ¥38,000(+tax) BUY
アメスリニットタンクトップ ¥11,000(+tax) BUY
ワッシャーフレアスカート ¥22,000(+tax) BUY
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シャンブレーは玉虫色がおなじみですが、キャメルで生かすと、穏やかで上品な風情に仕上がります。膝下まで覆う、着丈の長いオーバーコートは、裾が程よく躍って、歩く動きが優美に映ります。
きらめきすぎない程度の光沢がきれいめムードを演出。コートに色気があるから、ボトムスはカジュアル顔でも構いません。たとえば、デニムスカートで合わせても、品のよいたたずまいに。かえってグッドバランスにまとまります。
正面の打ち合わせアクションで印象ががらりと変わります。あえて前を開ければ、軽やかな着映えに。コートよりも着丈の長いウエアで合わせて、丈違いレイヤードを組み立てると、縦長イメージが強まります。逆に、ショートボトムスと合わせれば、リズミカルな長短レイヤードに。写真のように、共布ベルトを無造作に結んで、ガウンライクなリラックス感を醸し出すアレンジも楽しめます。
シャンブレーオーバーコート ¥38,000(+tax) BUY
バックシャンニットタンクトップ ¥13,000(+tax) BUY
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トレンチやチェスターに次いで、紳士服風の印象が強いのは、ステンカラーのコートでしょう。でも、上品な光沢を宿すタフタ生地で仕立てたこちらは、レディーなたたずまい。シルク混ならではのつやめきがベージュにミルキーな風合いをもたらしています。
色味の明るいベージュを生かしやすいコーデプランに、同系色でまとめる「トーン・オン・トーン」があります。コートのミルキーなベージュを軸に、もう少しオフホワイトっぽい色でまとめれば、クリーンでノーブルな見え具合に。
フォルム全体にゆとりがあるから、まだ寒い春先には、内側にニットセーターやインナーダウンを着込めます。縦長シルエットの効果で、細感はキープ。レイヤードの選択肢が多いので、多才な着回しコーデを組み立てやすくなっています。
ステンカラーコートに紳士服テイストが薫る分、ボウタイ・ブラウスやプリーツスカートなどのフェミニンウエアを引き合わせて、ジェンダーミックスにまとめても素敵に仕上がります。スカーフやパンプスといった靴・小物類も女っぽさを添えるツールに使えます。
ステンカラータフタコート ¥46,000(+tax) BUY
オーバータートルカットソー ¥12,000(+tax) BUY
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徐々に暖かくなっていく時期に着るから、春コートはさわやか色を選びたいものです。涼やかなサックスブルーは、オールシーズンで着られる色。自然と出番が多くなります。
従来のスーツほどには、かしこまって見えにくい「セットアップ(上下そろい)」のバリエーションが一段と広がってきました。ボトムスにハーフパンツを迎えるのも、新トレンドの表れ。ロング丈のコートを重ねると、裾丈が段違いになり、「長短レイヤード」にまとまります。脚の見え具合をカバーできるのに加え、裾丈違いの効果で、レッグラインが伸びやかに映ります。
上品な光沢を帯びたタフタは、イタリアのテキスタイルメーカーの逸品。スカーフにも使うシルク素材で有名なメーカー製です。シルクを織り交ぜてあるので、つやめきにも気品が漂います。
全体が落ち着いて見えるのは、肩を少しだけ落とした「ドロップショルダー」のおかげ。ナチュラルに体の輪郭になじんで、自然体のシルエットを描き出します。文字通り、肩ひじ張らない着映えに仕上がる点でもうれしいコートです。
ステンカラータフタコート ¥46,000(+tax) BUY
ベージュリネンジャケット ¥42,000(+tax) BUY
【PELLICO】SQUARE MULE サンダル ¥49,000(+tax) BUY
(c)Rie Miyata
ロングアウターはそれだけで存在感があり、春コーデの主役にふさわしいアイテムです。特にパンツと合わせれば、細長効果が期待できます。マニッシュなシルエットが知的なムードもまとわせてくれそう。きれいめでハンサムな着映えに整えつつ、春らしい色でソフトな人柄を印象づけるのが賢いコーデです。
冬本番よりもきつい日がある、春の冷え込み。ロング丈のコートは風をブロックしてくれる、防寒の頼もしいパートナーです。サテン系の生地は穏やかなつやめきがあるので、格上感を演出できます。妙にかしこまっても気張っても見えない「自然体コート」はオン・オフの両方で愛用したくなりそうな主役級アイテムです。ほとんどオールシーズンで着られるけれど、手に入るのはこの時期だけだから、チャンスを逃さないようにしたいものです。
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