Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
春ルックらしい軽やかなムードを象徴するのは、動きやすい重宝パンツ。この春の新顔は、幅広いシーンに向く「ユーティリティ-」なパンツ。トップスや羽織り物との組み合わせ次第で、思い通りにムードを変えやすいから、おしゃれに欲張りな女性の強い味方。そんなお役立ちパンツをパートナーに迎えて、いつもとは違うパンツコーディネートを手に入れてみませんか?
しっかりセンタープレスの効いたスラックスパンツはオンでもオフでも重宝する万能選手。きちんと感のあるシャツや、エレガントなブラウス、抜け感を漂わせるTシャツなど、それぞれにマッチします。
どんなシーンにもオールマイティーに使えるのが、二面性を帯びたデザインブラウス。正面側フロントはシックでクールな印象。ところが、背中側のバックスタイルは大胆でドラマティック。すっきりしたパンツのムードが前後で様変わりするコンビネーションです。
バックリボンが大ぶりだから、レディーライクな見え具合に。背中の開き加減は首元のボタンで調節できるので、着て行く場面に応じて自在にアレンジ可能。リボンの結び方次第でムードが変わります。長めの袖が伸びやかな雰囲気を演出。シャープなストライプは、縦落ちイメージを強調してくれます。
スラックスパンツはリネン素材を使って、春らしい質感とさわやかな穿き心地に仕上がりました。裾に向かって細くなるテーパードシルエットが凜々しい脚線を描き出します。程よくマニッシュな印象がある分、バックコンシャスなブラウスとの相性に優れています。ヌーディーな靴と組み合わせて、ジェンダーミックスに仕上げて。
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マスキュリンなセンタープレスのパンツを、オフの日に別のムードで穿きこなすなら、透けるシアー素材を引き合わせて。今シーズンは涼やかに透ける生地がトレンド素材に浮上。空気をはらむラミー(麻)混のオーガンジーで仕立てたブラウスは、ふわっとした質感が羽織り使いにぴったり。シャープなパンツルックに、春らしい軽やかフェミニンなムードがプラスされます。
淡いピンクはさめた色味のおかげで、出番を選びません。麻73%、ナイロン27%のエアリーな風合いは夏にも重宝しそう。控えめな光沢が上質感を帯びています。
ゆったりしたシルエットだから、ボタンを留めてブラウスとして着ても、前を開けて羽織り物としてまとっても、様になります。同じ素材で用意されているスカートと合わせたセットアップは大人感の高い装いに仕上がります。
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色味の近い同系色でまとめる「トーン・オン・トーン」のコーデは、着姿を自然に落ち着かせてくれます。なかでも、ベージュ系の組み合わせは、穏やかで大人っぽい着映えに仕上がります。
ベージュ系のスラックスパンツを、上品に着こなしたうえで、ブラウンやキャメルといった近い色でのコーデが効果的。上質でシンプルなニットは、プルオーバーとカーディガンのアンサンブルで着ると、さらにきれいめニュアンスが濃くなります。ニットならではのソフトな風合いのおかげで、ジャケットに比べて、こなれたムードにまとまります。
プルオーバーニットはコンパクトなシルエットで、カーディガンの穏やかなシルエットを引き立てる働きを発揮。アンサンブルに共通する適度な光沢が装い全体を格上げしてくれます。
プルオーバーは七分袖なので、上半身がコンパクトに映ります。カーディガンと共生地だから、全体が調和して見えて、お仕事ルックにも役立ちそう。カラートーンを少しずらしたスラックスパンツがアンサンブルの統一感をさらに引き立ててくれます。
ややピンクがかったベージュのパンツは、同系色以外の春カラーとなじませやすいボトムス。同じ生地で仕立てたダブルブレストのジャケットと組み合わせは、一般的なスーツのようにかしこまって見えにくい新テイストのセットアップ。色味が穏やかな分、トップスを入れ替えて、シーンフリーに着こなせます。
パンツの雰囲気をガラリと変えたいときにおすすめなのは、チュニック系ロングニットとのコーデ。ニットならではのやわらかい風合いがやさしい着映えに導いてくれます。
大胆なスリットが印象的なアクセントに。「ロング×ロング」のシルエットは、細見え効果が抜群です。エレガントとエフォートレスが融け合った着映えは、自然体の落ち感を漂わせました。
このようなロング系ニットには、あえて太めのパンツで合わせると、ゆったりしたたたずまいに。細かい凹凸のあるワッフル生地は、肌に張り付かないから、真夏でもさわやかに過ごせます。ニットの編み地は、1枚で着ても、ニュアンスを醸し出してくれます。
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ワンピース風に着やすいロングカーディガンは、1枚で着ても、パンツに重ねても、縦長フォルムが際立ちます。正面を縦に走るボタンも、縦落ちイメージを印象づけています。
サテンのつややかさが魅力のワイドパンツに、ワンピースのようなロングカーディガンを重ねれば、スーパーロングコーデの出来上がり。細く長いシルエットが着痩せ効果まで弾き出しています。
重ね着の組み合わせ方や、小物の使い方次第で、着こなしのバリエーションが広がります。たとえば、こちらはベルト付きなので、ベルトを巻いてウエストマークすれば、めりはりがプラス。くびれ感も際立ちます。ウエストを高めにマークすると、脚が長く映ります。
全体を同系色のトーン・オン・トーンに整えると、上品さが際立ちます。レーヨン65%のおかげで、しんなりした落ち感が備わっています。
ワイドパンツはウエストが総ゴムだから、イージーな穿き心地。サテンのつややかさは控えめなオレンジ、春らしいベージュと好相性。太すぎないシルエットはトップスとのバランスがよく、自在のコンビネーションを組み立てられます。
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(c)Rie Miyata
ベージュのスティックパンツに、パウダーピンクのニットをふんわり羽織って、気負わない着映えに整えています。ノンシャランとした雰囲気を漂わせながらも、フェミニンさを忘れないバランス感がコーデのポイントに。ベージュ系とピンクの色合わせは、春に使いやすいパターン。黒のインナートップスをのぞかせて、引き締め効果を発揮。腕のアクセサリーでリッチ感を上乗せしつつ、ヌーディーサンダルで抜け感を添えるのも、複雑なテイストミックスに仕上げる小技です。
脚裁きの軽快なパンツに、程よいフェミニンなトップスを引き合わせることによって、こなれたムードが生まれます。シンプルでありながらも、華やかさがほんのりプラスされるのも今の気分にマッチしています。アレンジのレパートリーを増やせば、お仕事ルックにもプライベートコーデにも着回せるから、春の立ち上がりから自分流のスタイリングをマルチに試していきましょう。
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