FASHION JOURNALIST RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.119
FASHION JOURNALIST RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.119
カーゴパンツがこの春夏、世界的に大人気です。海外の有力ブランドでもランウェイに相次いで登場。今までと異なるのは、きれいめエレガントに着こなすところ。しなやかな素材感や穏やかなシルエットも新しい提案です。今回はこういった新トレンドを注ぎ込んだ、「ガリャルダガランテ」ならではの新発想カーゴパンツをご紹介します。
そもそも英語の「カーゴ(cargo)」とは「貨物」という意味です。荷物の積み下ろし作業に従事する人たちが穿いたところから、この名前があります。やはり荷物運搬が多い兵士にも好まれ、ミリタリーウエアとしても広がりました。あちこちに備えた大きめのポケットに作業着の面影がうかがえます。
でも、今のトレンドはワークウエアやミリタリーとして着るのではなく、もっとフェミニンでやさしげなコーディネート。今回のアイテムはジョガーシルエットなので、見え具合は自然体でヘルシー。足首もすっきり映ります。ほのかにつやめきを帯びた、落ち感を引き出す素材も新タイプのカーゴらしいところです。
カーゴパンツはこの春夏シーズンでトップ級の注目ボトムスです。マニッシュなたたずまいや、歩きやすい機能性なども申し分ありません。カーゴのシンボル的な両サイドの張り出しポケットは収納にも便利です。
ただ、本来のカーゴは労働者の作業着だけに、やや武骨な雰囲気。ストリート感が高めな点も、大人女性がまとうには、ややハードルの高いところがあります。今回の「ガリャルダガランテ」版はそういった難点を打ち消す狙いでデザインされました。つまり、自分らしくコーディネートしやすい、しなやかで上品なカーゴなのです。
自然体に映る最大の理由は、落ち感を備えたキュプラ100%の生地にあります。実は世界で唯一、旭化成だけが製造している、特別な繊維です。コットン由来のサステナビリティ性にも再評価が進んでいます。控えめなつやめきを帯びているのは、キュプラのよさ。滑らかな風合いがカーゴのタフ感をやわらげてくれます。
ひんやりした肌触りもキュプラの長所。蒸し暑い夏には助かります。湿気を逃がす働きもあるから、1日ずっと穿いていても、快適な着心地。素肌の表面から熱を奪ってくれるので、真夏の暑い日でもスイスイ歩けます。
カラーはどれも扱いやすいモカ、カーキ、ネイビーの3色から選べます。生地にいくらか伸縮性を持たせてあり、足さばきは楽々。洗濯はドライクリーニングです。ウエストはオールゴムだから、締め付け感フリーのイージーな着用感です。
マスキュリンな持ち味は保ちながらも、ジョグパンツとのミックスで、スポーティ感をアップ。いっそうコーディネートしやすいシルエットに整えました。
ミリタリー風味を盛り込んだのも、一般的なカーゴとの違いです。普通のカーゴはワークウエア色が濃いのですが、こちらはほんのりとミリタリー仕様なので、クールな雰囲気で着こなしやすくなっています。
実は同じ素材で仕立てたシャツが用意されています。そろえてまとえば、セットアップの装いに。ジャケットで合わせる、一般的なセットアップよりも、ぐっとこなれた印象の普段使いが楽しめます。
ミリタリー感を宿したジョグパンツを、こなれた雰囲気で穿きこなすには、ソフトな印象のトップスを選ぶのが近道です。汗ばむ時期に重宝するのは、涼やかに着られる、透け(シアー)感のあるニット。上下の程よい「ずれ加減」が気負わないムードを醸し出してくれます。
今年のトレンドで見逃せないのは、ほのかにセンシュアル(官能的)なムードです。過剰な露出は避けながらも、素肌感やボディラインを控えめに印象づける演出。ハンサム顔のボトムスと組み合わせれば、ヘルシーな雰囲気を打ち出せます。
パンツにアクティブな表情があるので、トレンドのシアー服と絶妙にマッチします。編み目のバランスが程よいので、肌の透け感が目立ちにくくなるのも、このアイテムの魅力です。フェミニンなサンダルを迎えて、伸びやかな足景色に。スポーツサンダルを選べば、元気感を高める着こなしにシフトできます。
サマーシーズンに出番が増えるのは、両袖のないトップスです。涼やかに過ごしやすいノースリーブのトップスはしなやかカーゴパンツにもぴったり。健やかで軽快な気分を醸し出せます。
爽やかなホワイト系のノースリーブを選べば、清潔感の際立つ着こなしに。健康的な素肌感も引き出せます。涼しげでクリーンなスタイリングは幅広いシーンに対応できそう。裾のすぼまったジョガーシルエットだから、足首が引き締まって見えるのもうれしいポイント。ノーブルなバッグを携えれば、きれいめの風情が漂います。
同じキュプラ生地で仕立てたシャツと組み合わせれば、カーゴっぽい印象が様変わり。ぐっとドレッシーにまとまります。シャツとパンツのセットアップは、ジャケットパターンよりも気張って見えません。半袖シャツのおかげで、さらに涼しく軽快です。
上下のつながったジャンプスーツがトレンドアイテムに浮上しつつあります。でも、この新感覚セットアップをまとえばドレスライクに着こなせます。シンプルなとろみシャツは出番を選ばない、使い勝手のよいアイテム。ジョガーパンツ以外のボトムスとも好相性を発揮してくれそうです。
落ち着いて映るのは、フロントのボタンが見えない「比翼仕立て」のおかげ。パンツと同じモカ、カーキ、ネイビーの3色がそろっています。色を合わせて、セットアップで使うほかに、わざとモカ×ネイビーのように色をずらした「同素材・別色」のコンビネーションも楽しめます。パンツとセットで持っていると、ジャンプスーツ風に着たり、単品コーデに使ったりと、アレンジ面でもメリットがいっぱいです。
【GABRIELA ARTIGAS】FLATビームカフ ¥75,900BUY
【TONY BIANCO】パデットスクエアトゥミュール ¥31,900BUY
この春夏はカーゴパンツを街中で見かける機会が一気に増えそうな気配。トレンドに乗りつつ、ありきたりに見えない新発想のミリタリージョグパンツは「ガリャルダガランテ」ならではの提案。強さとエレガンスを兼ね備えた今年仕様の装いが楽しめる上出来ボトムスを迎え入れてみてくださいね。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。