Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
軽やかな気分で過ごしたくなるこれからの季節に、動きやすいパンツは欠かせません。なかでも、ワークパンツは名前の通り、ワークウエアに由来しているから、ポケットがついていたり、適度な張り感があったりと、機能性の面でも頼れるボトムスです。ワードローブに迎えておくと、この春夏のスタイリングの幅を広げてくれそう。そこで、今回は「ガリャルダガランテ」の「ベルテッド(ベルト付き)ワークパンツ」のたった1本を、6パターンで着回す実例コーディネートを紹介します。武骨なワークウエアではなく、オーガニック素材でやさしげな印象を帯びた、着こなしやすいワークパンツに注目です。様々なトップスをパートナーに迎えたアレンジで、いくつもの表情を引き出せるスタイリングをご覧ください。
最初に今回の「主役」となるワークパンツの持ち味を押さえておきましょう。ワークウエア由来のパンツならではの気取らない雰囲気が春らしい軽やかな着映えに導いてくれます。太めのセットベルトを巻けば、ウエスト周りを引き締める効果を発揮。ポイントはハイウエストのシルエット。さらにスタイルアップが見込めます。
カーキとベージュの中間的なグリーンは春夏ルックにさわやかな印象を呼び込んでくれそう。オーガニックコットンを使用した、コットン100%の素材なので、しっかりした張り感がありながらも、ゴワつかないソフトな肌当たり。自然なしわや穏やかな風合いが気負わない着こなしになじみます。
呼び名はワークパンツですが、ワークウエアっぽさは主にディテール面での演出で、全体としてはフェミニンな雰囲気を帯びているのがこのパンツの新しさ。カジュアルなスタイリングはもちろん、きれいめのコーデも可能という着回しの選択肢が広くなっている点が魅力です。
パンツの工夫ポイントは裾周りにもあります。裾に配したスナップボタンで裾を絞れば、裾先に向かって細くなるテーパードシルエットに変えられます。キビキビと歩きたいときや、階段の上がり下がり、自転車に乗るとき、自動車を運転する際などには、裾が遊ばないテーパードが便利です。
「ベルテッドワークパンツ」はトップスの相性を選ばないので、いろいろなタイプを引き合わせて、着こなしレパートリーを広げられます。たとえば、ボディにピッタリと沿う、ミニマルなニットトップスなら、パンツとのボリュームコントラストが生きて、めりはりの利いたシルエットに仕上がります。
トップスをタイトにまとめたスタイリングも様になります。こちらのコンパクトなクルーニットはコットン100%ならではの自然な肌なじみ。気持ちよく伸びて、ボディにフィット。さらっとした着心地も春先からのシーンにぴったりです。
オフホワイトとブラックの2色が用意されています。オフホワイトはシンプルでクリーンな印象の着映え。ブラックはさらに引き締め感を強めてモード感もアップ。着丈は腰が隠れるぐらいで、ウエストインもしっかり決まります。
ボディにぴったり沿う感じだから、写真のように腰にシャツを巻いたり、上にジャケットやカーディガンを羽織るレイヤードにも向いています。キャミソールを重ねれば、スポーティとフェミニンが交差するテイストに。シアーシャツを重ねて透け感やニュアンスを醸し出す着方も選べます。
アクセサリーや靴で、ムードを変える小技も組み合わせられます。たとえばロングネックレスを垂らして、伸びやかなエフォートレス感を演出。大ぶりのかごバッグは着やせ効果を引き出すツールに。爪先がのぞくサボ風サンダルは軽やかな足元を印象づけてくれそう。シャツやジャケットをウエストに巻けば、さらに量感が強まって、上半身のスレンダーさが際立ちます。
【CATARZI】バッグ ¥31,900
パンツと同じ素材で仕立てたワークシャツジャケットと合わせて、セットアップにまとめれば、ワークウエアのたたずまいを保ちつつ、オールインワン的な統一感が漂います。リラックス感とユニフォームテイストを兼ね備えたこなれコーデに整えられます。上下そろいのセットアップで着ると、こなれたスーツ風に整い、お仕事ルックにも役立ちそう。
ワークシャツジャケットは裾をウエストインしてもアウトしても着こなせる、オールマイティーな羽織り物。ミリタリー由来のCPOジャケットが先行しましたが、ワークウエア由来のこちらは、もっとデイリーに着回しやすいタイプ。両胸のフラップ付きポケットがアクセントになっています。
シャツの裾をアウトして羽織れば、まるでサファリジャケットのライト版のよう。ラフ&タフな雰囲気を軽やかにまとえるメリットがあります。
オーガニックコットンを使用したコットン100%の風合いは上下そろいでまとうと、さらにやわらかいムードを醸し出します。シャツジャケットの名前通り、シャツとしてもジャケットとして着られる2way仕様。ボタンを開けて、サッと羽織るライトアウターは、春夏を通して使えるシーズンフリーのアイテムです。
前後で着丈が異なり、背中側の着丈が長い前後アシンメトリーなので、ウエストアウトもおすすめ。後ろ姿にきれいな落ち感が出ます。長めの後ろ裾がヒップ周りをさりげなくカムフラージュ。正面の裾だけを、ボトムにウエストインすると、こなれた着映えに整います。
逆に、裾をきっちりウエストインして、オールインワンのように着こなすパターンも「あり」です。全体がワントーンでまとまりやすいのは、ベルトまで色味をそろえてあるから。バッグと靴でムードを変えるアレンジも楽しんでみては。
【CAVERLEY】サンダル ¥33,000
同系色でまとめる「トーン・オン・トーン」は、人気の続くスタイリングです。支持が広がる理由は、全体のムードを統一させつつ、トップスの選び方次第で、イメージを自在に操れるから。暑さが気になる春夏には、Tシャツやタンクトップを組み込んだ涼やかなコーデが魅力的です。
シンプルな見え具合のタンクトップだからこそ、こだわりたいポイントは「質感」です。コットン94%にポリウレタン6%を混ぜたおかげで、心地よいストレッチ感が備わった素材は、伸びやかでしなやか。引っかかりを感じにくく、自然なフィット感。ランダムな表情のリブ編みが自然な立体感を生んでいます。
ネックラインが広すぎないラウンドネックは、デコルテをきれいに演出してくれます。ネックレスもうまく収まる空き加減です。肩に掛かる部分は幅がしっかりあるので、アンダーウエアの露出が気になりにくいのも着やすい理由です。
さらさらとした肌触りはサマーシーズンにも快適な着心地を保証してくれます。適度な厚みがあり、透ける心配も無用。ジャケットの下に着てエフォートレスに見せたり、透けるトップスを重ねて、涼しげなレイヤードに整えたりと、多彩なコーデに重宝するタンクトップです。春先は寒暖の状況に応じてアウターを羽織ったり脱いだりするシーンが増えるので、1枚で着映えするタンクトップは何枚もそろえておくと便利です。
先にご紹介したワークシャツジャケットを腰に巻いてボリュームを出せば、上半身がさらに華奢に見える効果を発揮。着こなしのコツは、タンクトップの色を、パンツより濃くするところ。ボディのコンパクト感が引き立ちます。
【CAVERLEY】サンダル ¥33,000
カジュアルなパンツを大人女性が穿く際、こなれコーデに見せたいときに使えるのが、程よくフェミニンなトップスです。こちらのジャージーブラウスは袖にボリュームがあり、やさしげなたたずまい。肩からなだらかに続くドルマンスリーブが朗らかなムードを漂わせています。
ポリエステル100%の生地は伸縮性に富んでいるので、着心地はストレスフリー。お手入れに手間のかかりにくいイージーケアなのも、洗う頻度を上げたい春夏に重宝します。
色は白すぎないオフホワイトと、マットすぎないブラックから選べます。ポリエステルの質感と、柔らかいトーンのホワイトが響き合って、顔周りを明るく映し出す効果も期待できます。ブラックのほうも生地の質感のおかげで、適度なつややかさを帯びていて、マルチに着こなしやすくなっています。
こちらは二重織になっているので、体のラインが響きにくい造りで、1枚で着たくなる春夏に安心感がしっかり。適度な厚みや張り感があり、シルエットをきれいに保ってくれます。
ふわっとした、程よいボリュームがボディラインをうまく隠してくれそう。たっぷりめの量感は着やせ効果の期待大。ボディに付かず離れずのシルエットは、汗で張り付くのも防いでくれます。
実は前後をひっくり返しても着られる2WAY仕様のプルオーバーです。正面側はネックラインが深すぎない、横長のボートネック。もう一方は浅めのVネック。デコルテがほのかにのぞく横開きです。前後で首周りの印象が異なるから、その日の気分や着こなしに合わせて、前後を切り替えて、マルチに着回せます。
今回、ご紹介している「ベルテッドワークパンツ」との組み合わせは、ボリュームコントラストのうえでも絶好の相性。ほかにもセットアップを組めるボトムスとして、ジャージージョッパーパンツやジャージーフレアパンツが用意されているので、チェックしてみてください。締め付けレスの楽ちんな着心地だから、快適なお仕事ルックにも使いたくなります。
脇下にもゆったり生地を割り当ててあるので、体の輪郭を拾いすぎません。後ろ姿にものどかなムードが漂い、どの方向から眺めても大人っぽく映る「360度ルック」に仕上がる魅力を感じてください。
【CATARZI】バッグ ¥31,900
少しだけフェミニン寄りのトップスを選べば、ワークパンツとの間で、互いを引き立て合うようなコラボコーデをつくることができます。上下のテイストが少し異なる「ずらし」のスタイリングは、型にはまらない女性像を引き出してくれます。
こちらのブラウスは、とろみ素材で仕立ててあるから、落ち感が豊かに出ています。両袖にたっぷりめのボリュームを配してあり、リラクシングなシルエットが魅力。それでいて、ルーズに見えないのは、首周りに施されている丁寧なギャザーのおかげです。
シャーリングの効果がデコルテ周りを上品に華やがせます。横長に開いたネックラインは程よい露出加減で、フェミニンを薫らせてくれます。
バックスタイルはさりげない肌見せで、くつろいだ風情を演出。適度なドレープが気張りすぎない後ろ姿を演出してくれます。両サイドにスリットが入っているので、裾アレンジの自由度が高くなっているのも、着こなし面でもメリット。風が吹き抜けるようなエアリー感があり、イージーエレガンスで着こなせます。「ベルテッドワークパンツ」の魅力も大いに引き出せるツールとしても使い勝手に優れたアイテムです。
ギャザーブラウス ¥19,800
【2.718】ソフトフラットシューズ ¥27,500 BUY
【CATARZI】バッグ ¥31,900
【MARYAM NASSIR ZADEH】サングラス ¥90,200
サステナビリティーがおしゃれのキーコンセプトに位置づけられたのを受けて、素材のほかに、染色や加工にもナチュラル志向が意識されるようになってきました。こちらのスウェットトップスは、植物から抽出した色素を用いて染めた「ボタニカルダイ」。天然由来ならではの穏やかなペールトーンの色味がやさしい雰囲気を帯びさせています。
太めの糸で編み上げた、肉厚素材のプルオーバー。たっぷりしたシルエットが体の輪郭をぼかしてくれます。従来のスウェットとは違って、裾がすぼまっていないので、窮屈感知らずの着心地。ストンと落ちるゆるめシルエットが伸びやかでリラクシング。春から試したいヘルシー系コーデの気分を方向づけてくれるウエアです。
クルミの染料で染めたクリーム色がかったイエローと、アカネの染料で染めた淡いピンクの2色が用意されました。バックネックにプリントされているのは、フランス語で「クルミ」を意味する「noyer」と、アカネを意味する「garance」のロゴ。背中側のさりげないアクセントになっています。
タオルのようなパイル状の編み地だから、吸水性が高く、真夏でも蒸れにくくなっています。パイル地がたっぷり空気を含むおかげで、ソフトな着心地。ぬくもりも逃がさないので、まだ肌寒い日が続く春先にも頼りになります。
ナチュラルな色味のおかげで、ボトムスとの相性を選びません。「ベルテッドワークパンツ」と合わせれば、ヴィンテージ感の漂う着こなしに。デニムパンツでデイリーに着こなしたり、スラックスできれいめに見せたり。ボリューミーなフレアスカートで合わせて、量感が弾むような着映えに整えるなど、選択肢はいろいろです。
同じ生地のスウェットスカートでそろえて、ボタニカルダイ風味のセットアップでまとうこともできます。ソフトなカラートーンがさらに引き立って、やさしげでスポーティという、趣の深い装いに仕上がります。
程々のオーバーサイズは、ルーズに見えない絶妙のさじ加減。ヒップに届くかどうかの丈感は、ボトムスの細感を引き出す仕掛け。袖丈は指先が出る程度の長めレングスで、ゆるっと着てもよし、くしゅくしゅとたるませてもよし。オーバーサイズならではスペースを生かして、シャツやカットソーを内側に着て、印象を変えるレイヤードなども今の時期から楽しめます。
(c)Rie Miyata
タイダイ染めのぴったりしたカットソーに、オリーブグリーンのワークパンツで合わせて、ハンサムフェミニンの着映えに。トップス裾をきちんとウエストインして、上半身のタイト感を強調。レッグラインの細長さを印象づけました。白のチャンキーヒールのサンダルで程よくフェミニンを薫らせています。トートバッグやバックパックではなく、クラッチを選んだところも好ポイント。マニッシュなパンツを選ぶ場合は、このようにバッグや靴を生かした「プラスフェミニン」のアレンジが参考になります。
「ベルテッドワークパンツ」は出番を選ばないユーティリティ感や、クールな凜々しさをまとえる点、軽快な着心地など、うれしいメリットがいっぱい。軽やかに早足で歩きたくなる春夏の着こなしに1本迎え入れておくと、今回ご紹介したようなトップスとのコーデが何パターンも楽しめるはずです。
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