Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
夏に向かう時期には、帽子がおしゃれのキーピースに仲間入りします。特に今年はブーム再燃のバケットハットをはじめ、帽子が豊作。紫外線除けはもちろん、コーディネートに非日常感を添える効果もあるから、着こなしの鮮度を高めてくれそう。今回は「バケットハット」「ラフィアハット」「ドローコードハット」という3タイプの帽子に合わせた、気分が上がりそうな休日スタイリングを大公開。「ガリャルダガランテ」が提案する、帽子に似合う夏向きコーデをご紹介します。
華々しく復活したバケットハットは、名前の通り、バケツをひっくり返したような形の帽子です。人気が続いていますが、ストリートっぽくなりすぎないよう、選び方を気をつけたいところ。そこで、こちらは基本のシルエットをエレガント寄りにアレンジ。フラットな天井や円柱型のクラウン(帽子の山部分)はそのままに、少しだけクラウンを高くして、ブリム(つば)を広げました。
夏の帽子に求められるのは、蒸れを防ぐ吸湿性と速乾性。今回はその両方に優れた素材を選んでいるので、蒸し暑い日でも髪がべたつきません。帽子の内側に配したベルトを使って、サイズの微調整ができます。折りたたんでもしわになりにくい風合いだから、バッグに忍ばせておけます。熱がこもりにくい素材のおかげで、日射しがきつい日でもさわやかにかぶっていられるサマーハットです。
バケットハットを生かす、おすすめのコーデは、「ブラウス系トップス×ホワイト系ボトムス」のコンビネーション。うっすらとサファリルックの雰囲気を漂わせるコーデ。ベージュの帽子となじみやすいブラウン系のトップスは絶好のチョイスです。
リネン素材のシャツは、素肌に張り付かないから、夏にうれしいさわやかトップス。癖のないブラウンベースの色合いは、ボトムスとの相性を選びません。静かな主張を帯びたゼブラ柄が大人のサファリルックを演出します。
ハットに付いた長めのドローコードを垂らせば、縦長イメージが備わります。真っ白なコードの印象を際立たせるには、濃いめトーンのトップスが好相性。白のV字ラインが清らかな雰囲気も漂わせます。
折り目正しい印象を与えるセンタープレスのパンツですが、実は、ジャージー素材で仕立てられているので、着心地はストレスフリー。楽なのにきちんと感をキープしてくれる頼もしいアイテムです。オフホワイトは夏に欲しい清潔感を印象づけてくれます。
センタープレス部分がピンタックになっているから、いつまでも折り目がくっきり。洗濯しても落ちません。ゆったりシルエットとの相乗効果で、自然な落ち感が備わっていて、脚が長く映る効果も発揮。脚にまとわりつかないのに、シャープに見えるというマジックシルエットです。
クラウンが高めのバケットハットをパンツに合わせたおかげで、全体に縦長のイメージが強まりました。ハットは視線を引き込む効果も高く、装いのムードメーカーになってくれます。
この春夏から鮮やかな復活を果たすアイテムがゆったりしたシルエットのポンチョです。オールシーズンでまとえるうえ、のどかで楽観的なムードを醸し出すところが世界的な再評価の理由。秋冬のイメージがありますが、軽い生地を選べば、春夏から重宝します。
こちらは夏の定番素材であるリネンで仕立てたポンチョ。上品なブラウンは秋冬にも着続けやすい色です。ストール感覚でサラリと羽織れて、アシンメトリーの裾が動きを演出しています。
裾に短めのフリンジを施して、気負わない雰囲気を醸し出しました。裾のレングスが複雑に入り組んでいるから、落ち感がしっかり。自然体の無造作ムードを寄り添っています。
ポンチョの裾に余裕がある分、ボトムスで細感を引き出しやすいシルエットです。スラックスやデニムと合わせるのは、相性のよいコンビネーション。優美なワンピースやタイトなスカートにレイヤードしても、めりはりが出る、コーデ選択肢が多いポンチョです。
背中側の肩部分にあしらったゴールドチェーンが飾らないアクセントに。ネックラインは横長のボートネック形なので、首周りを涼しげに演出。バケツハットのドローコードもアクセントになってくれます。程よく広がったつばのおかげで、小顔に映る効果も期待大。顔周りに適度な影が落ちて、ニュアンスを帯びた見え具合に。
ボトムスのコットンパンツは、全体にリブが配してあり、すっきりしたレッグラインが引き立つ仕掛け。カットソーやTシャツを得意とするアメリカ発の人気カジュアルブランド「CALUX(キャラクス)」に別注した上出来パンツです。
チャコールグレーがかったブラックは出番を選ばない落ち着きカラー。トップスの選択肢が広いから、頼もしい着回し力を発揮してくれます。ほんのりとヴィンテージ感を帯びて見えるのは、かすかな色あせ加減のおかげ。穏やかな風合いの中肉厚生地と相まって、こなれ感が生まれています。
大地を思わせるアースカラーで全体をまとめつつ、トーンを少しずつずらしたコーデは、バケットハットを大人っぽく迎え入れています。汗ばむシーズンにも、おしゃれ感と快適さを両立させてくれる着こなし技です。
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帽子とトップス、ボトムスの色を微妙にずらすと、ニュアンスの深い装いに整えられます。落ち着いた雰囲気にまとめるには、グレーやキャメルなどの組み合わせが効果的です。
夏の必需品と言えるTシャツは、シンプルなアイテムだからこそ、上質なものを選びたくなります。形はほぼ共通だけに、ポイントは素材と色。「Tシャツ=コットン」がお約束ですが、こちらは夏にうれしい、サラッとした肌触りのリネンで仕立てられています。麻系素材ならではのナチュラルな風合いが「並」のTシャツとの違いを際立たせてくれます。
チャコールグレーのTシャツでバケットハットの白いドローコードを引き立てるカラーコンビネーションに。さらに帽子の色に近いキャメル系ボトムスを迎えて、Tシャツをサンドイッチすれば、穏やかなトーンにまとまります。
最大の工夫ポイントは裾のカッティングです。一般的なTシャツは大抵、裾のラインが横一直線で、素っ気ない見え具合ですが、こちらは曲線を描くラウンドヘム。裾景色に味わいが加わります。
朗らかなカーブをつくるラウンドヘムは、裾をウエストアウトして着るコーデの魅力を高めてくれます。正面だけをウエストインして、背中側をアウトする「ゆるイン」は、リラクシングな気分を漂わせてくれます。
イージーに見えがちなTシャツ姿を格上げするボトムスが細身のスカートです。こちらのキャメル色スカートは、ストレッチの入ったジョーゼット素材で仕立ててあります。伸縮性に富む生地のおかげで、しゃがんだり座ったりしても、引っかかりを感じにくい、使い勝手のいいスカートです。
実は「ガリャルダガランテ」で以前から様々なヒットアイテムを生み出しているジャージーシリーズと同じ素材を使っています。定評のあるストレッチ素材は締め付け感がなく、ストレスフリーに過ごせます。後ろの裾にはバックスリットが入っているので、足さばきが楽です。
「Tシャツ×タイトスカート」のシンプルな「I」ラインシルエットにバケットハットを迎え入れるだけで、ニュアンスを感じさせるコーデに。伸びやかフェミニンな休日スタイルを楽しめそうです。
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ポサマーハットの象徴的な存在と言えそうなのが、ヤシ科の植物繊維を使った「ラフィア」で編んだ帽子です。カゴバッグでもおなじみの天然素材。子どもがかぶる麦わら帽子とは違って、ラフィア特有のしなやかで強い質感が装いのムードづくりにも一役買ってくれます。
「ガリャルダガランテ」がセレクトしたのは、帽子の人気ブランド「La Maison de Lyllis(メゾンドリリス)」のラフィアハット。「内面の美しい、誇り高き女性」という花言葉を持つ花「アマリリス」から連想されるような女性のための帽子ブランドです。
こちらのラフィアハットが際立っているのは、編み目の美しさ。きれいな透け感が涼やかなムードを顔周りに呼び込んでくれます。均一ではない編み模様がかえって丁寧な手仕事感を醸し出しています。
つばの大きさや自然な台形シルエットにもアレンジを加えました。ラフィアハットはリゾート気分を印象づけやすい帽子ですが、こちらは街中使いにもなじむタイプです。
つばの端にはワイヤーが通してあるので、つば先を曲げて、好みの見え方に調整できる構造。「もう少しつばを高く」「もっと顔にかぶせたい」といった、細かいニュアンスを演出できます。帽子の内側にはゴムが配してあり、フィット感も微調整できる仕掛けです。
長く使い込むうちに、しなやかさとつやが増していくのも、愛着を持ってかぶり続けたくなる理由。シーズンを重ねるごとの経年変化が表情を深くします。
ラフィアハットの風合いを引き立てる装いは、やはりホワイト系が第一候補になります。人気の続く上下ホワイトのコーデは、夏に求められる清潔感の面からもおすすめです。
こちらのシャツチュニックは名前が示す通り、シャツの素材感とチュニックの着丈を「いいとこ取り」したハイブリッド服です。生地をふんだんに使った、ふんわりシルエットがボディラインをやさしく包み込みます。
ホワイトのデニムパンツで合わせて、上下で風合いの異なるホワイトコーデにまとめました。リサイクルコットンを使用したサスティナブル仕様で、デニム特有のゴワつきとは異なるソフトな肌触りです。
ほのかな透け感を帯びていて、夏にふさわしいエアリーなたたずまい。パサッと羽織るだけで、トレンドのシアールックに仕上がります。張り感があるのに加え、サラリとした肌触りもあるのは、夏向きの生地「コットンボイル」ならでは。適度なシャリ感も備えていて、軽快に着こなせます。ボディに付かず離れずのゆったりフォルムだから、蒸し暑い日でも素肌に張り付きません。
ショルダーラインや背中に施されたギャザーは、気負わない印象を生むディテールです。裾がふくらはぎまで届くスーパーロングの着丈がロマンティックなムードを醸し出します。両脇にヒップあたりまでサイドスリットを入れてあるから、ロング丈でも足さばきは軽やか。スリットからボトムスをのぞかせるレイヤードが動きを乗せます。
ホワイトコーデに合わせたラフィアハットのメッシュ状の編み目は程よく風を通し、帽子の中はさわやかさをキープ。全体にドット柄が細かく入ったような編み目や、大小の菱形があしらわれた編み目が装いにリズムを添えてくれ、日常をリゾート気分に導いてくれそうです。
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サマールックらしい爽快感を印象づけるなら、ブルーを取り入れたいところです。こちらのラップパンツは鮮やかなブルーがクールな着映えを呼び込んでくれます。
布を前でしばるパレオ風のラップパンツは、どこかエスニックな風情。リゾート気分も漂います。実際の旅に出掛けにくい中、せめて雰囲気だけでも旅心をまといたい今のおしゃれマインドにもなじむボトムスです。
正面できゅっと大きめの結び目がお腹周りをさりげなくカムフラージュ。結び目のまわりにドレープが生まれ、ナチュラル感を印象づけてくれます。
着心地が楽なのは、ウエストがオールゴムのイージーパンツだから。リゾート風の装いに似つかわしい、軽くて伸びやかな着用感。着ることによって、気持ちがほどけていくようなリラックウエアは、くつろいで過ごしたい休日にぴったりです。
パンツでありながら、巻き布のおかげで、スカート風にも映る、ウィットに富んだ造り。前後の見え具合が大胆に異なるので、360度からの視線を受け止めてくれます。
同じくリゾート気分を宿しているラフィアハットとの相性はこれ以上ないほど。ヌーディーなサンダルも組み込めば、いっそう涼やかな着映えに整います。ラフィアのナチュラル感を引き出したハットが、穏やかなチルアウトタイムに誘ってくれます。
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ストローハットは軽くて涼しいけれど、いかにも「麦わら帽子」の感じは、コーデになじませにくいものです。こちらはストローハットの長所はそのままに、シックなブラックで大人っぽく仕上げた、「ガリャルダガランテ」だけの別注モデルです。
このドローコードハットを別注した先は、イタリア発の帽子ブランド「FERRUCCIO VECCHI(フェリシオベッキ)」です。職人技を注ぎ込んだ、手仕事感の高いハットで知られています。
ドローコードもブラックです。エレガントに映るだけではなく、顔周りを引き締まって見せる効果も発揮。アンニュイな雰囲気も漂わせてくれます。
黒のドローコードは縦落ち感を引き出す存在。ゴールドのコードストッパーが控えめな華やぎをプラス。ネックレスのような役割も担ってくれています。ドローコードで首に引っ掛けて、背中側にハットをフードのように垂らすアレンジも楽しめます。
シンプルなシルエットが装い全体をシャープに演出。もちろん、小顔効果も見逃せません。夏の大敵、紫外線除けの面でも頼れるハットです。
ブラックハットを引き立てるには、白系やベージュ系トップスが絶好のパートナー。こちらのチュニックシャツは白に近いベージュで、ヴィンテージ調の色味です。
生地に用いたのは、麻の一種である「ラミー」。リネンよりもシャリ感がある、夏向きの素材。しわになりにくいのも、ラミーのよさ。透け感も帯びていて、軽やかにまとえます。ナチュラルなムードも醸し出す上質素材です。
バックスタイルの裾に向かって、たっぷりとフレアが入っているので、風をはらんで揺れる美シルエットに。チュニック風のゆったりフォルムがのどかな雰囲気を漂わせました。
ヒップが隠れるレングスがボディラインをぼかしてくれます。ジェンダーレスな着映えに仕上がるのも、量感にゆとりがあるから。気になりがちな腰回りもしっかりカバーしてもらえます。
先にご紹介した「CALUX」のリブパンツとのコーデは、腰から下がスレンダーに映るコンビネーション。パンツに濃い色を迎えてレッグラインを引き締め、ブラックハットでエッジィ感をプラスしました。
【FERRUCCIO VECCHI】ドローコードハット ¥19,800 BUY
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黒のドローコードハットはエレガントな印象だから、ワンピース姿にマッチします。こちらのカーキのように、渋め色やダークカラーのワンピなら、ノーブルなサマールックにまとまります。
「ガリャルダガランテ」で定評のあるボトム「ジャージージョッパー」と同じ、ストレッチ性の高い素材で仕立てた新作です。ジャージー生地ならではのやさしい肌触りのおかげで、蒸し暑い日も心地よく過ごせます。
「ガリャルダガランテ」が得意な2WAY仕様。前後のどちらを前にしても着られます。背中側はビッグリボンが目を引く、前後でムードが大きく異なるデザイン。リボンを配した側を正面に回すと、あでやかなカシュクールの装いに。デコルテをきれいに見せてくれるVネックで着てもよし。カットソーに重ねて、肌見せを抑えてもよしという、着こなし自在のワンピースです。
ドラマティックなワンピースにブラックハットを添えれば、フェミニンなワンピースルックに程よいスパイスが加わります。夏場のワンピーススタイルを格上げしたいとき、黒のドローコードハットはいい仕事をしてくれます。
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(c)Rie Miyata
すっきりした「I」ラインシルエットのコーデのまとめ役にハットはもってこいのピースです。クロップドトップスにタイトスカートを引き合わせたスッキリコーデ。ミニポシェットを細ストラップで斜め掛けして、縦落ちイメージを強調。ハットを合わせることによって、視線が引き上がり、いっそう縦長のスタイリングが完成しました。
夏に向けて「バケットハット」「ラフィアハット」「ドローコードハット」は使い勝手に優れた帽子トリオ。紫外線をカバーする役割だけでなく、マスク姿を彩る役目もお任せできそう。それぞれ異なる魅力を持つ帽子で、サマーコーデの多彩なアレンジを楽しんでみませんか。
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