FASHION JOURNALIST
RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.78
70年代ルックの復活が目立ちます。主役は当時の若者たち「ヒッピー」。LOVE & PEACE(ラブ&ピース)を求めた彼らの開放的な態度は、自由な空気が求められている現在に通じるところがあるようです。代名詞的なアイテムは裾広がりのフレアデニムパンツ(ベルボトム)。大人が着こなすには、別テイストとのミックスがおすすめ。「ガリャルダガランテ」はボウタイブラウス、ニットパーカ、ポンチョ、チェック柄コートなどのアイテムとの組み合わせを提案しています。やりすぎ感を遠ざけつつ、ムードを醸し出す現代版ヒッピースタイルへの近道を、新作アイテムを通してキャッチしていきましょう。
裾が広がったフレアのデニムパンツは目を引くシルエットだから、トップスにもいくらか印象が強めのアイテムを迎えると、全体のバランスが整いやすくなります。その場合、ロマンティックやフェミニンのムードを漂わせるのが上手なスタイリング。デニムパンツのストリート感をやわらげてもらえます。
透けるシアー素材のボウタイブラウスは、やさしげでレトロなムードを添えるうえで、絶好のパートナーアイテム。ざっくり感のあるプルオーバー・ニットを重ねて、ソフトイメージのレイヤードにまとめました。昔のおばあちゃん(グランマ)が着ていたかのような、どこかノスタルジックなたたずまいに仕上がっています。
こちらのデニムパンツは、広がり過ぎないゆるやかな裾広がりのタイプなので、ヒッピー感も控えめ。シルエットに癖が強くない分、自在に穿きこなせます。色はブルーとブラックの2色から選べます。
ブルーは膝から上には弱めのウォッシュをかけて、ヴィンテージ感を引き出しました。自然なグラデーションに、裾は無造作にカットオフされ、気取らないこなれた雰囲気を寄り添わせています。
シルエット全体はやや太めで、伸びやかなたたずまい。穿き心地のほうもリラックス感があります。デニムパンツには珍しく、両脚の正面にセンタープレスをつけてあるから、きちんと感が漂うデザイン。脚がすっきり見える効果も期待できます。
昔のデニムパンツには「ごわつく」「暑い」といったマイナスイメージがありましたが、こちらはそんな心配はご無用。ドライタッチの糸で織り上げたデニム生地だから、サラッした肌触り。蒸し暑い日でも、さわやかに過ごせそう。古着ライクなほのかな色落ち加減はこなれた着映えに導いてくれます。
足首が隠れるぐらいの、しっかりした着丈があるので、脚長効果も期待できそう。靴とのコンビネーション次第で、ムードを操れるのも、このレングスのよさ。厚底のローファーで合わせれば、このように今年らしい「ネオ・ヒッピー」のミックス仕様に。ボリュームたっぷりのソールのダッドスニーカーやヒールが太めのチャンキーヒールなどの高さのある靴を選べば、いっそう脚の細長さを印象づけやすくなります。
コーディネートに華やぎとインパクトを添えるのは、太めのボリュームボウ。襟や袖に量感を加えるという、今の流れにマッチしています。顔に近い位置で主張してくれるから、顔を小さく見せる小顔効果も発揮。袖にもフリルがあしらわれています。
こちらは「ガリャルダガランテ」が得意とする前後2way仕様のタイプ。前後をひっくり返して着られます。それぞれに印象が異なるので、着回しレパートリーがぐっと増やせる重宝ブラウスです。
かさばらない薄手のブラウスだから、秋からのレイヤードにぴったり。おすすめはニットを重ねるスタイリングです。コットンシルクとニットは風合いが異なるので、味わいの深い重ね着に。ブラウスをウエストインして、きちんと感を出すもよし。ヒップが隠れる程度の着丈を生かしたウエストアウトもよし。ムードを自分好みにアレンジできます。
使いこなしたい小技は、ボウタイの結び方。結び目を大きめにこしらえて、ボリュームを強調するほか、結び目を小ぶりに抑え、余った端を長く垂らしたり、結ばないでのどかに遊ばせたりと、バリエーションはいろいろ。手軽にイメージを様変わりさせられます。
ボウタイブラウスに上品な風情をもたらしているのは、シルクならではのほのかな光沢です。コットン70%、シルク30%のコットンシルクは着心地と品格を兼ね備えています。
色はホワイトとイエローが用意されました。ホワイトは透け感を帯びたやわらかいトーン。パール風のつやめきが印象的です。イエローのほうは淡いレモンイエロー。色味がきつくないので、いろいろなコーデになじんでくれます。
ニットウエアを重ねるレイヤードは、秋冬スタイリングの要。プルオーバーをブラウスに重ねると、ぐっと穏やかな見え具合に。これがニットレイヤードの魅力です。ニットならではのやさしげな風合いは、気持ちの落ち着きを保ちたい今のマインドに寄り添ってくれます。
あえてシンプルなシルエットを選んだのは、素材のよさを引き立てたいから。チベットのような山岳地帯の草原に生きる、ウシの仲間、ヤクの毛だけで編み上げられています。ヤクは長い毛を持つので、上質なニット糸を紡ぐことができます。高地で暮らす動物だけに、その毛は保温性に優れていて、ナチュラルなぬくもりをもたらしてくれます。色はホワイトとグリーンの2色が用意されました。
袖は程よくふくらみを持たせたボリュームスリーブで、着痩せ効果に導いてくれます。裾や袖口のリブ編み部分は幅が太めで、シルエットにめりはりを生んでいます。
ヒップに半分かかるぐらいの着丈があるので、ボディラインをうまくぼかしてくれます。一方、袖丈は手の甲が隠れる程度の長さがあり、朗らかな印象を引き出しました。オーバーサイズには至らない、少しだけゆったりしたサイズ感は、ソフトなキャラクター感も醸し出してくれそうです。
【LEGRES】ローファー ¥81,400
デニムパンツのカジュアル感を引き立てるには、パーカが絶好の相棒ピースになります。ただし、コットン素材やスウェット生地のパーカは、普段着感が強く出がち。大人っぽく着こなすなら、質感をアップグレードしたいところ。こちらはウール主体のパーカだから、格上の装いに仕上がります。
ニットパーカは毛57%、ポリエステル43%の混紡なので、穏やかな風合い。保温性に優れ、ちくちくしないウール素材を使っていて、1枚で着ても十分にぬくもります。色はどちらもコーデに悩まない「便利色」のキャメルとチャコールグレーが用意されました。
目がしっかり詰まった編み地のおかげで、型崩れを起こしにくくなっています。くつろいだ風情を帯びたオーバーシルエットをきちんと支えてもらえるから、だらしなく映る心配はありません。
全体にゆとりがあり、丸みを帯びた形なので、チュニック感覚で着られます。ヒップがすっぽり隠れるオーバーシルエットを生かして、セミフレアのデニムパンツでレッグラインを際立たせる合わせ方が効果的です。
ムードメーカーに起用したいのは、表情を持った靴。たとえば、つま先に丸みのあるムートンブーツで合わせれば、パーカと響き合って、ほっこり感が備わります。パフィなバッグも程よい抜け感を演出。パーカ自体にふんわりとしたフォルムが宿っている分、小物や靴で、さらに穏やかさを印象づければ、デニムパンツを際立たせる効果を発揮します。
ボヘミアン気分を象徴するポンチョは、ヒッピーたちに愛されたアウターの代表格です。もともとヒッピーはアフリカやアジア、ラテンアメリカなど、世界各地との連帯を訴えていて、装いの面でもグローバル。とりわけ、民俗衣装を好む傾向がありました。中南米に由来するというポンチョは、サッと羽織れる点でも、彼らのお気に入り。トレンドの70年代ルックにも取り入れやすいアイテムです。
まったりとくつろいで過ごすライフスタイルの「チルアウト(CHILL OUT)」は、日本でも浸透しつつあります。大きな布にくるまれるように着るポンチョは、安心感に誘う羽織り物。防寒面でも頼もしいウエアです。
ヒッピーが愛したデニムパンツとのコンビネーションは、70年代ムードがたっぷり。ソフトフレアパンツの適度な裾広がりと、ゆるやかに広がるポンチョのシルエットが調和して、のどかな景色を生み出してくれます。
こちらのニットポンチョには、「ガリャルダガランテ」のオリジナルのエスニック風モチーフをあしらいました。色はベージュがベースですが、アイボリー系やグレー系など、トーンの異なる何種類ものベージュを組み合わせて、深みを加えています。幅や色味の異なるストライプがリズムをもたらしました。
布の分量はたっぷりありますが、アクリル56.2%、ナイロン28.8%、ウール15%の軽い混紡だから、サラッと軽快に羽織れます。風が通るシルエットなので、シーズンフリーでさわやかに着られる通年アイテムです。
広めに開いたネックラインは、首周りをすっきり見せてくれます。くるまれ感が出すぎないから、自然な抜け感が備わる仕掛けです。
のどかにボディを包むフォルムがとにかくアイキャッチー。適度に裾が遊ぶビッグシルエットのおかげで、デニムパンツを穿いた脚がシャープに映ります。上半身に量感を出して、ボトムスの細感を際立たせる「引き算」効果が期待できるポンチョです。
毛足の長いモヘア糸を用いているから、肌触りはふんわりソフトタッチ。ごわっとした風合いが珍しくないポンチョでは、意外なほどやさしくボディになじみ、自然体の雰囲気も寄り添わせてくれます。
袖を通さないで着るタイプなので、トレンドの袖コンシャストップスやボリュームニットの上からも難なく羽織れます。首の開き加減や、前後のポジションをずらしたりと、着こなしのディテールを自由に決められるのも魅力です。
前面にモチーフがきれいに施されているから、抜き襟気味にアレンジして、背中側の印象を強めたり、袖を通さず、ストールのようにノンシャランと巻いたりといった、多彩なバリエーションが楽しめる1着です。
バランスのよい混紡の効果で、重たくないのに暖かい。1日ずっと着続けても、肩が凝りません。寒い日が続く春の終わりにも重宝しそうです。
【LAURA LOMBARDI】ボリュームチェーンネックレス ¥30,800BUY
【MODERN WEAVING】バッグ ¥40,700
ヒッピーテイストを丸ごと復活させず、程よい「ずらし」を加えるのは、現代にアップデートするうえでの賢いアレンジです。フレアのデニムパンツには、気負わないムードが漂うから、品格やクラシック感を備えた羽織り物をかぶせると、うまい具合にずれ感が生まれます。
英国紳士風のチェック柄コートは、正統派イメージが強い分、デニムパンツの格上げに役立ちます。デニムパンツに合わせると、ハンサム感が上乗せされ、性別にとらわれない「ジェンダーレス」の着映えに。こちらのルックでは、デニムシャツを組み込んだ「デニム×デニム」のコーデを、チェック柄コートがノーブルに束ねるような働きを見せています。
落ち着いた印象のチェック柄コートは実はリバーシブル仕立てです。表と裏をひっくり返して、別ムードで着回せるダブルフェイスなのです。表側のコート色はベージュとブラウンが用意されていて、素材はウール100%。出番を選ばないオーソドックスな色と柄です。
ブラウスやジャケットで大襟トレンドが盛り上がっていますが、こちらはコートにビッグカラーをあしらいました。素材を切り替えた大襟が顔周りのアクセントに。小顔に見せる相乗効果を生むマフラーも付いています。
ふくらはぎに届くロング丈なので、縦落ち感がしっかり出ています。すとんとしたシルエットがリラックスしたムード。英国紳士風でありながら優しい雰囲気を演出できるので、デニムパンツで合わせたときも穏やかなヒッピー感をキープ。大きな襟部分の肩が少し落ちたディテールや折り返した袖などにもリラックス感が漂います。
おそろいのマフラーを無造作に巻けば、首周りに程よい立体感が生まれ、小顔効果はもちろん、視線が上がって、全体が縦長に見える仕掛け。コートとのおそろいチェック柄がワンランクアップのおしゃれに導きます。
(c)Rie Miyata
ゆるっとしたハイネックのニットは胸がときめくような鮮やかピンクが印象的。ひじまで袖をまくり上げて、ラフな表情に。フレアデニムはよく見ると、左右の足の太さを変えたトリッキーなデザイン。ハートフルなトップスと、ギミック仕掛けのボトムスを組み合わせて、ちょっぴりウイットを宿した着こなしに。プラットフォームのブーツで足元にボリュームを出すのもデニムパンツを引き立てるチョイスです。
ヒッピースタイルはこの秋冬以降、さらに広がりを見せそうだから、早めに迎え入れて、自分好みのコーデになじませるのが得策。まずは、それだけでヒッピー感を十分に楽しめるフレアデニムパンツを軸に据えて、今の気分を写し込んだラブ&ピースなスタイリングを試してみませんか。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。