FASHION JOURNALIST
RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.79
大襟(ビッグカラー)のトレンドは勢いが止まりません。レトロやノスタルジックの流れを象徴するディテールとして、引っ張りだこの状態です。人気が広がったのを受けて、貴族風やピエロ風、セーラー(水兵)形、ボーイスカウト式、ビブカラー(胸当て風)など、様々なタイプが登場。ロマンティックにもクールにも着こなしやすくなってきました。特にありがたいのは、大人が取り入れやすいタイプが続々と提案されているところ。今回は「ガリャルダガランテ」の秋新作から、大襟タイプのシャツやワンピース、ニットプルオーバーなどをよりすぐってスタイリングと共にご紹介します。
エレガントなボウタイブラウスを進化させた大襟シャツは、自在の着こなしを楽しみやすいトップスです。ネクタイよりフェミニンな表情で、大襟よりシャープな印象。そのまま結ばずに垂らせば、伸びやかな風情に。軽く結べば、スカーフを巻いたよう。顔周りのイメージを多彩に操れる「技あり襟」です。
正面の着映えがスッキリ見えているのは、ボタンを見せないフライフロント仕立てのおかげ。ボタンを隠すことで、襟が際立ち、クールな雰囲気で着こなせます。大襟・ボウタイ部分がアイキャッチーだから、前を開けても、印象的な着映えに。ありきたりのシンプルシャツとは、品格見えの度合いが段違いです。
ドレスシャツ向けの生地を使って仕立ててあるので、アイロンをかけたときの気品を帯びたつや感が素敵です。一方、アイロンをかけない洗いざらしで着ても、程よいシワ感が気張らない雰囲気を寄り添わせてくれます。シャツの素材はコットン100%で、さわやかな着心地。色はサックスブルーとホワイトの2色から選べます。自宅での手洗いができる、使い勝手に優れたシャツです。
【SIDANHA】ストレッチロングブーツ ¥97,900BUY
【FERRUCCIO VECCHI】ポークパイハット ¥22,000BUY
1枚で着て様になるうえ、秋から先にはジャケットやコートを重ねてレイヤードに重宝します。シャツ裾をあふれさせるウエストアウトも、しっかりボトムスに収めるウエストインもきれいに決まります。どんなボトムスとも合わせやすい着丈バランスも頼もしさの理由。アウターとのバランスで都合よく裾処理を決められるのは、着回しバリエーションを増やすうえで便利です。
ボウタイをスカーフのようにサッと一巻きすれば、首元にきちんと感が加わり、エレガントなムードで着こなせます。あえてニットやスウェットを重ねて、「エレガンス×リラックス」のミックステイストに仕上げるコーデも選択肢に。ティアードロングスカートで合わせて、レトロフェミニンな風情を漂わせれば今年らしいスタイルに仕上がります。逆に、デニムパンツやワイドパンツを迎えて、性別にとらわれないジェンダーレス仕様にまとめる着こなしも楽しんでみてはいかがでしょう。
サックスブルーのタイシャツは、クールで凜々しい印象を際立たせてくれます。トラッドな雰囲気を帯びたライトブルーは、ダークカラーでまとまりがちな秋冬ファッションに軽やかさをプラスしてくれます。
癖が強くないブルーはどのような色にもなじむので、レイヤードに向いています。たとえば、スリップドレスやジャンパースカートなどを重ねて、フェミニン感を融合するコーデにも重宝します。コットン素材のシャツに、地球にやさしいエコスエードを使用したキャミソールワンピースで合わせれば、トレンドの異素材ミックスコーデが簡単に仕上がります。襟部分をキュッと真結びにすると、程よい立体感が生まれ、視線が上がるから、スタイルアップ効果も期待できそうです。
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ノースリーブのワンピースにもレイヤードとして活用できます。フレンチスリーブを思わせる肩部分が印象的なニットワンピースを、まるでベストのように着こなす感覚でシャツとレイヤード。首元から襟をたらりとひと結びで垂らして落ち感をアピール。スカーフを使うよりすっきりとした統一感が備わります。おまけに、縦長効果を引き出すうれしいスレンダーシルエットにまとまります。
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ブルーの持ち味を生かして、ダークカラーで合わせるジェンダーレスなコーデも今の気分になじみます。ぬくもりを感じさせる厚手のニットジャケットの前を開けて、シャツをウエストアウトで気負いなくまとう提案です。マニッシュなパンツとシューズとも好バランスを発揮。
着こなしのポイントは、目を引くボウ部分をアクセントにしているところ。アクセサリーなしでも首回りに立体感が生まれ、視線が上がって見える仕掛け。ボーイスカウトのようなキュートな結び方が新鮮です。
ニットジャケットの前ボタンを閉めた場合も、このように結び目を見せることで差し色コーデに仕上がります。キュッと結んでシャープに見せたり、ゆるく結び垂らしてエフォートレス感を出したりと、ノット(結び目)のこしらえ方次第でムードを操れます。襟の結び方でイメージを変えられる、進化形の襟ブラウスは魅力がいっぱいです。
トレンドのビッグカラー(大襟)はこの秋冬、さらに進化を遂げます。次に来るのは、優美な見え具合の曲線タイプ。こちらのワンピースは、流れ落ちるようなラッフルがエレガントです。
全体を彩っているのは、オリジナルのペイズリー柄。「ガリャルダガランテ」が今季シーズンテーマに掲げた「イギリス」をイメージして、新たに描き起こしました。ペイズリー柄特有のレトロな雰囲気に加え、ノスタルジックなベージュ色が落ち着きをまとわせています。深みを帯びたダークトーンのベージュだから、大人感が漂います。
ウエストから下で2度も切り換えのティアードを施したうえ、あちこちに布をつまみ縫いしているので、動くたびに味わいの深い表情を描いてくれます。複雑なドレープが細感を引き出してくれるのも心強いワンピースと言えます。
着映えの決め手は、やはり正面に位置するビッグラッフル。布が自然に波打って、ロマンティックな風情を醸し出しています。背中側の襟も肩周りをぐるっと覆って、貴婦人ライクな印象に。どこから眺めても様になる逸品ワンピースです。
素材はポリエステル100%の梨地ジョーゼットだから、体に沿うソフトな着心地です。自宅で手洗いOK。同じ素材のペチキャミソール付きです。ウエストはゴムを通してあるから、窮屈感のないストレスフリーな着心地。フロントのホックを外せば、肩を抜いてのどかに着こなせます。
軽やかな素材にブーツで合わせることで、コントラストが冴えるコーディネートに整えられます。カーディガンやアウターを羽織れば、胸元からラッフルがのぞくので、優美なスタイルに。淑女のようなレトロ感が漂う魅力的なワンピースは1枚あると重宝します。
大襟をあしらったブラウスは、秋から本番を迎えるレイヤードルックのキーピースにうってつけです。秋からのおすすめの着方は、襟だけをニットトップスの上にあふれさせる「ネックアウト」です。
特大サイズの襟は顔を小さく見せてもらえる効果が期待できます。角張り感が印象的な襟だから、幼く見えず、キリッとした雰囲気を引き出してくれそう。ブラウスの素材はコットン100%で、ソフトな風合いなので、肌当たりも穏やか。生地にはヴィンテージ風味を添える加工を施しました。ナチュラルなシワ感が気負わないムードを醸し出します。
大きいのにシャープな襟フォルムは、ジャケットで合わせて、お仕事ルックにも出番がありそう。ありきたりに見えがちな白シャツルックに少しだけサプライズを盛り込めます。
ブラウスに適度な主張が備わっている分、やさしげな風合いのバルキーニットカーディガンは、絶好のレイヤード相手に。質感の異なるウエアを重ねる「異素材ミックス」がコーデに深みを与えます。
印象的な「襟出し」コーデに仕上げるには、大襟のインパクトが肝心です。ブラウスはニットトップスに覆われて、ほとんど襟しか見えないので、ブラウスを着ていることを示す意味からも襟の見え加減が大事になってきます。
その点、背中にもたっぷり露出できるセーラーカラーなら、申し分のないアクセントになってくれます。こちらはフロント側の襟が際立って広いので、シャープな印象を顔周りにもたらしてくれそうです。
ボトムスにも異素材を取り入れて、レザーパンツと引き合わせるようなスパイスのあるコンビネーションがおすすめ。ロングブーツは足元の引き締め役も買って出てくれます。
ブラウスにはレディーライクな「きちんと感」が備わっているので、ムードをずらす意味で、カジュアルなサロペットや、一方でドレッシーなキャミソールドレスなどを重ねて、多彩なレイヤードスタイルが楽しめます。定番のデニムパンツやワイドパンツに合わせたときも、アイキャッチーな役割は大襟に任せられるので、ワンランクアップのおしゃれを楽しめます。
先にブラウスでご案内したセーラーカラーからさらに一歩踏み込んだ新提案も登場。ソフトなニットと組み合わせれば、ぐんと穏やかな見え具合に。自然なこなれ感も漂うから、新顔の「ニットセーラー」は取り入れたくなるディテールです。
前から見るときれいなVネックにつながって、首元がすっきり。自然に後ろに流れていくようなイメージです。横長に開いているおかげで、ネックレスがうまく収まるのも、このシルエットのよさです。
少しだけ肩が落ちていて、くつろいだ雰囲気を寄り添わせています。ニットの質感と相まって、気負わないエフォートレス気分を印象づけるシルエットです。袖口は一折りしたカフス周りのたたずまいが手元を上品に演出してくれます。
こちらのニットプルオーバーは背中側に見どころがあります。一般的なセーラーカラーよりもずっと広く、肩甲骨を隠すぐらいの丈があるのです。後ろ姿にも手を抜かない全方位見えのプルオーバーです。
これまで後ろ姿のディテールと言えば、フードが主役でしたが、セーラーカラーはぐんと優しげ。しかもフードのようには出っ張らないので、しなやかな着映えが大人女性にぴったりです。
素材は毛47%のほか、レーヨン38%、ナイロン10%に、カシミヤを5%混ぜたマルチ混紡です。特別なブレンドのおかげで、適度な張り感とリッチななめらかさが両立しました。しかも、うれしい手洗い洗濯OKの重宝ニットです。色はベージュとネイビーが用意されました。
上下がそろった「セットアップ」の人気が広がり、今はニット素材の「ニットアップ」に関心が移りつつあります。今回は同じ素材で仕立てたフレアパンツが用意されているので、ニットアップでも着こなせます。裾に向かって程よく広がるフレアパンツは、ニットならではの伸びやかなムードをいっそう際立たせてくれそうです。
【LEGRES】ブーツ ¥105,600
【SOPHIE BUHAI】ネックレス ¥152,900
【AESTHER EKME】バッグ ¥62,700
(c)Rie Miyata
大襟の形バリエーションはさらに進み、様々なシルエットが登場しています。こちらは、正面の首から胸を広く覆う「ビブカラー(bib collar)」。まるでケープを羽織ったかのようなクラシカルなムードです。エレガントなシルエットが品格をまとわせてくれます。ケープより丈が短いので、視線を引き上げる効果があり、スタイルアップも見込めそう。二の腕をさりげなくカバーしながら、小顔に見せる働きも発揮。スリット入りのロング丈タイトスカートでレッグラインをすっきりと演出しました。横広の大襟と細身のボトムスは幅のコントラストが際立つから、見た目のスリミング効果が期待できます。
大襟を生かせば、顔周りに華やぎや動きが加わって、装いの鮮度がアップします。ビッグカラーのアイテムを1点、取り入れるだけで、手軽に着回しバリエーションを増やせるから、手持ちワードローブ全体の稼働率を高める効果も期待できます。ロマンティックやクールなど、様々なムードを帯びた襟が登場しているので、自分好みを選びやすくなったのもうれしいところ。秋に向けてお気に入りの1着を見つけて、ブームの大襟ファッションを楽しんでみませんか。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。