FASHION JOURNALIST
RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.80
頭からスッポリかぶるだけで様になるから、プルオーバーはストレスフリーな時短おしゃれのアイコン的な存在です。シャツやブラウスとは異なる穏やかさやリラックス感が持ち味で、くつろいで過ごす「チルアウト(chill out)」にピッタリ。でも、ルーズに見えない大人のスタイリングが今の気分。秋の「ガリャルダガランテ」には、そんな格上タイプが勢ぞろい。今回は秋の新作をご紹介しつつ、こなれたプルオーバーのコーディネート術をご案内します。
スウェット生地のプルオーバーは割と見慣れたアイテムだからこそ、細部のこしらえで格上げしたいもの。逆に、遠ざけたいのは、ルーズな印象。決め手は「着丈」です。
こちらのスウェットプルオーバーはだらしない印象とは無縁のすっきり見えが魅力です。理由はクロップド丈。トレンドとしても浮上してきています。短め丈とはいえ、ウエストは隠れるから、安心感も高いシルエットです。
裾をウエストアウトしても、裾の一部だけをウエストインしても、様になる裾景色を描いてくれます。脇に近いほうをインすれば、裾ラインに変化が出てこなれた印象に仕上がります。
コットン100%のしっかりした質感の糸を使っているおかげで、へたり感が出にくいスウェット素材です。適度なシャリ感も備わっていて、スウェットにありがちな重たさとは無縁。自宅で手洗いOKだから、タフに着回せます。色はベージュとオフホワイトから選べます。
短めの着丈はいいことずくめ。上半身がコンパクトに映るので、ワイドパンツと合わせると、いっそう華奢感が際立ちます。おなか周りをさりげなくカムフラージュしながらも、腰回りはすっきり見え。どんなボトムスと組み合わせても、脚が長く見える魔法のトップスと言えます。
生地が厚すぎないから、ほとんどオールシーズンで着回せます。今の時期は1枚で着て、秋冬はレイヤードのキーピースに。パサッと頭からかぶるだけで、着映えをまとめてもらえる「時短コーデ」の切り札になってくれます。
ガゼットショートスウェットプルオーバー ¥17,600 BUY
【KASSL EDITIONS】ピロートートバッグ ¥53,900
【SOPHIE BUHAI】ネックレス ¥73,700
ベージュもオフホワイトも癖がないから、コーデの組み立てはほぼオールマイティー。デニムパンツともプリーツスカートともなじんでくれます。その日の気分やお出掛け先次第で、自在にムードをスイッチできます。
シルエット面では身幅が広めで、少しだけ肩の落ちたバランスが絶妙。この「少しだけ」がポイントで、やりすぎるとくたびれた感じになってしまいがち。くつろいだ雰囲気だけを引き出すさじ加減が伸びやかな印象をまとわせました。
アームウォーマーの上からゴールドのボリュームブレスレットを重ねて。こんな自由なスタイリングをしても上品に見えるのは、すっきり着丈のグッドバランスのおかげ。レイヤードに組み込んでも全体が落ち着いて見えるのです。スタイリングが何だか決まらないときの助け船的ピースにもなってくれそうです。
ガゼットショートスウェットプルオーバー ¥17,600 BUY
アメリカの大学寮生活を描いたテレビドラマや映画でおなじみのアイテムに、ゆったりシルエットのロング丈Tシャツがあります。とりわけ、ビッグシルエットのフットボールTシャツには、カレッジスポーツ気分が備わっていて、若々しさもたっぷり。アメリカンテイストをまとえるのも、このカットソーならではの魅力です。
フットボールTシャツらしいディテールと言えるのが、両袖の二の腕部分をぐるっと巻いたライン(ストライプ)。スポーツ由来のモチーフらしい、軽快でアクティブなムードを呼び込んでいます。
袖がたっぷりしているので、かえって細感が引き出されているのは、このシルエットのよさ。色はアイボリーとチャコールグレーという、コーデに悩まないで済む重宝カラーが用意されました。
丁寧なものづくりに定評のあるブランド「R JUBILEE(アール ジュビリー)」への別注が実現しました。経年変化を楽しめる、オール日本製の取り組みで知られるブランドです。
「R JUBILEE」は素材や加工にこだわりを持つブランドとしても有名です。今回は伸縮性のあるコットン100%をチョイス。少しだけラフな風合いを帯びているので、気取らない風情に仕上がっています。
古着ライクな経年変化を思わせるダメージ加工を施しました。染色もヴィンテージが色あせていくのと同じ原理を再現。ゆっくりと退色させているので、自然体ムードが漂うかのよう。自宅で手洗いできるイージーケアの商品です。
程々のビッグシルエットが着やせ効果を発揮。袖は指先まで隠れる丈があり、のどかな印象。しっかりチル感が出ています。たっぷりした着丈が落ち感を引き出しました。
肩の落ち加減がさらにくつろいだ気分を寄り添わせます。ストレスフリーの着心地はプライベートタイムにうってつけ。むしろ、袖を通すことによって、リラックス時間を意識できる、おうち時間のスイッチみたいな服です。
スポーツウエアに由来するのに、どこか愛らしさを感じさせるたたずまい。大人が着たくなるレトロ風味がコーデにこなれ感を添えてくれます。
ボーイズライクな顔つきのロンTを、あえてカジュアルに寄せないで、スタイリッシュに着こなすと、さらに趣が深くなります。正面にきちんと折り目のついたセンターープレスのパンツに、紳士靴風のローファーで合わせて、格上の週末コーデに。こなれ加減も上々です。
「プルオーバー=カットソーやセーター」と思われがちですが、シャツもあります。ボタン留めが不要で、頭からかぶるだけだから、サッと着られる時短ウエア。シャツ形ならではの「きちんと感」も備わった、マルチな魅力の持ち主です。
こちらのシャツは深めに切れ込ませてあるVネックがシャープな印象を強めています。鋭角イメージが目に飛び込んでくるおかげで、スレンダー見えの効果も期待できます。
斜めに打ち合わせるカシュクール風の正面デザインが落ち感を添えています。両胸にあしらった大きめポケットも静かなアクセントに。広めに開いたVゾーンには、ネックレスがうまく収まります。
穏やかな質感が印象的なのは、素材が「ダンボールニット」だから。生地の断面が段ボール状になっているところから名前があり、伸縮性と速乾性に優れています。着心地が楽なうえ、温度調節もしやすいから、自然と出番が多くなるニットウエア。自宅での手洗いOKで色はベーシックなベージュとブラックから選べます。
ラフ感とスタイリッシュさをバランスよく交わらせているから、着ていく場面を選びません。裾が横一直線ではないラウンドヘムなので、どの角度から眺めても、きれい見えがしっかり。前後の丈違いが縦長イメージを際立たせました。
こちらは同じ素材で仕立てたイージーパンツが用意されていて、セットアップで着ることができます。ベージュはやさしげテイスト、ブラックはクール感と、それぞれの持ち味が一段とはっきり出たセットアップ姿に整います。
カジュアル服が「きちんと見え」に一変するのは、セットアップならではの強み。リラクシングな雰囲気はそのままに、全体に統一感が備わるから、着ていくシーンを選びません。
Vネックが深めな分、レイヤードを組み立てやすくなっています。色物のカットソーを差し色に使ったり、タートルネックにオンしてチルルックに生かしたり。コーデのまとめ役を買って出てもらえる万能ウエアです。
【SOPHIE BUHAI】ネックレス ¥152,900
オーバーサイズ仕様のニットは、伸びやかな気分をまとえる、秋冬のキーピースです。ルーズに見せないポイントは、シルエットと上質素材。こちらはワッフルニットの風合いが格上感を印象づけてくれます。
ふんわりした質感が持ち味のワッフルニットは、表面に程よい凹凸があるから、肌触りがソフト。ストレッチも効いているので、ストレスフリーで着られます。ごちらも自然体イメージを醸し出すエクリュとライトグレーの2色が用意されました。
くつろぎルックにふさわしいリラックス感が備わっているのは、控えめなドロップショルダーが効いているおかげ。鎖骨ゾーンがきれい見えする仕掛けです。
何だかスレンダーに映る理由は、両袖がたっぷりしているから。指先だけがのぞく丈感もワイド袖の印象を強めています。自分では何も工夫しなくても、袖を通すだけで着やせメリットが手に入るボーナス付きトップスです。
ネック周りにも「技あり」です。正面側は横に広がりすぎないボートネック。背中側とのバランス次第で、デコルテを見せることも隠すこともできる、好都合なネックラインです。
見どころは背中側にも用意されています。4個のバックボタンが配してあり、まるで背中側が正面かのような見え具合。後方からの視線をしっかり受け止めてもらえます。
裾は丸みを帯びたラウンドヘムなので、ほがらかな雰囲気を漂わせてくれそう。両サイドは切れ上がっているうえ、レイヤード風の切り替えも施してあるので、ウエストインで隠してしまうのが、もったいなく思えるほどの小技っぷりです。
表情を帯びたトップスだから、秋冬のレイヤードでムードメーカーになってくれます。プレーンな白シャツに重ねて、「きちんと×リラックス」の風情に。一方、背中側のボタンを少しはずして、抜き襟風に着こなすと、ほのかに女っぽさを演出できます。足元はあえてヒールシューズで合わせて、トップスとのコントラストを際立たせて。
【SIDANHA】ストレッチロングブーツ ¥97,900BUY
【AESTHER EKME】バッグ ¥62,700
一方、ニットのショートパンツと組み合わせれば、注目の「キュート×アクティブ」な新感覚ルックに。ゴールドネックレスと白ブーツでさらにオントレンド感が高まります。レパートリーが一気に広がる、懐の深いワッフルニットです。
【LEGRES】レースアップブーツ ¥105,600
【SOPHIE BUHAI】ネックレス ¥152,900
気負わないチルコーデの代名詞的なアイテムは、やはりパーカーでしょう。ストリートルックのお約束的なウエアでもありますが、こちらは「ガリャルダガランテ」らしく大人顔にリモデルされているのが魅力です。
見慣れたフーディーとは別物に仕上がっているのは、素材がコーデュロイだから。さらに洗い加工を施して、抜け感を引き出しました。色はスタイリングに悩まないエクリュ(生成り)とネイビーの2色から選べます。
ヴィンテージや古着がブームを呼んでいます。こちらの質感はどこか懐かしげなコーデュロイの風合いに整えてあり、コーデ全体をこなれた印象に導いてくれます。
特別感を宿らせたディテールとして、正面のレースアップが挙げられます。スニーカーの甲にも似た、紐が交差するアレンジがスポーティー感を呼び込みました。レースアップ部分には布が当ててあるので、透け見えの心配無用で着られます。
細部にいろいろな工夫を凝らした芸達者のパーカーです。たとえば、伸びやかに映るのは、少しだけ肩を落としてあるから。袖先と両サイドにはスリットが入っているので、ボトムスと合わせたときも軽やか。裾丈は正面側を短く、背中側を長くと、前後アシンメトリーにずらして、落ち感を添えています。
余ったレース(締めひも)の端を長く垂らすと、縦落ち感がさらに強まります。無造作っぽい始末がかえって大人の余裕を漂わせます。
ヒップにかぶさる着丈があるので、ボディラインをぼかす効果が期待できます。細感を印象づけるなら、細身パンツやタイトスカートとのマッチングを試して。トレンドアイテムのニットパンツを選べば、今年顔に仕上がります。
【B-SIDES】デニムパンツ ¥46,200
【LEGRES】レースアップブーツ ¥105,600
ゆったりしたビッグシルエットを生かして、多彩な着こなしが選べます。たとえば、内側にシャツやカットソーを着用して、パーカーを「アウター使い」に。タートルネックと組み合わせれば、のどかな景色に。セットアップのバギーパンツが共生地で用意されているから、意外感の高いパーカーセットアップにまとめ上げるコーデも楽しめます。
大人カジュアルの装いは、性格が異なる「大人」と「カジュアル」のなじませ加減が難しいもの。でも、このパーカーなら頭からスポッとかぶるだけで、絶好のグッドバランスに導いてもらえます。考えがまとまらないノープランの日でも、ちゃんと決まる「お助けパーカー」は頼りがいありです。
【LEGRES】レースアップブーツ ¥105,600
(c)Rie Miyata
ニットトップスを1枚で着ているのに、しっかり様になっているのは、丸みを帯びたほっこりシルエットのおかげ。両袖にもほのかにラウンド感をプラス。シャープなVネックがコントラストを際立たせているので、全体におしゃれ感が備わっています。黒パンツとの色の好対照も、クールさが引き立つ理由。印象の強いプルオーバーを着たときは、すっきりした黒パンツでまとめるという王道的なコーデです。
それぞれに強みを持ったプルオーバーを選べば、秋冬ルックは知恵いらず。手持ちのシンプルなボトムスを引き合わせるだけで、バランスが整います。決め手はプルオーバー自体のデザイン性と質感だから、ほとんどオールシーズンで着回せる重宝タイプを「ガリャルダガランテ」で見付けてみては。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。