FASHION JOURNALIST
RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.82
例年はアウターが冬の主役ですが、この冬はニットが取って代わりそうです。話題のチャンキーニットをはじめ、デザイン性の高い大人顔のアイテムが相次いで登場。穏やかにまったり過ごすチルアウトの流れもあって、着心地の楽なニットは人気が急上昇。特に1枚で絵になるオーバーサイズのニットは、コーディネートのキーピースに選びたくなります。「ガリャルダガランテ」の秋冬新作にも大人女性好みの格上ニットがラインアップ。今回はおすすめのニットアイテムを、着こなしレクチャー付きでご案内します。
そもそも「チャンキーニット」とは、どんなものかというと、太い毛糸で編んだ厚手のニットです。英語の「chunky」には「厚手の」という意味があります。太い糸で編むから、割と編み目のゆったりしたローゲージになることが多く、厚手の場合、ほっこりした風合いに。糸の質感がしっかり出て、愛らしい印象も備わります。
ニットウエアを選ぶポイントになるのは、編み地のデザイン性です。様々な編み方があり、生まれる模様や起伏もそれぞれだから、編み地のイメージ次第で装いのムードも変わってきます。
こちらのプルオーバーは、全体に配した、ポコポコと丸く盛り上がった編み目が最大の魅力。これは「ポップコーン編み」といいます。名前で分かる通り、ポップコーンに似た見た目からのネーミング。見るからに手の込んだ、ハンドニットならではのディテールです。前後の身頃に加えて、両袖にもポップコーン編みを採用した、手間のかかる編み方で、愛らしい印象を全身にまとわせました。
立体的なポップコーンモチーフは、表面がフラットなニットとの違いが際立つ、ワンランク上のディテール。プルオーバーニットならではの伸びやかな着心地はそのままに、アート風味を帯びたムードへ格上げ。特別感が漂います。
素材は毛羽立ちの少ないドライタッチな風合いのウール糸100%。チクチク感がないのもいいところ。ポップコーンの凹凸感がうまく出せる編み糸が選ばれています。色は肌なじみのよいオフホワイトだから、自然体の着こなしに。ぬくもりを印象づけるカラートーンは、秋冬ルックに穏やかな雰囲気を寄り添わせてくれます。
ウエストの上あたりで編み地を切り替えてあり、気の利いた表情に。さらに、裾周りの編み地も変えているので、1枚で存在感を発揮します。
編み地にしっかりインパクトがあるから、コーデの主役を任せられます。冬の重ね着でお供に選びたいのは、きちんと感やクラシックテイストを帯びたシャツやブラウス。トレンドの大襟やボウタイをネックラインからあふれさせればコントラストのあるレイヤードスタイルが仕上がります。
極端なオーバーサイズではありませんが、窮屈さを遠ざけたゆったりシルエットなので、着心地は楽ちん。黒のパンツで合わせれば、すっきりした「白×黒」のモノトーン・コーデに。ミニマルなパンツで合わせることでニットの存在感が一層際立ちます。シンプルめのボトムスを引き合わせれば、スタイリングが決着するという意味で、コーデに悩まずに済むチャンキーニットは大人女性の頼もしい切り札ニットになります。
冬のニットコーデに格上イメージをもたらすのは、何と言っても毛糸そのものの質感です。繊細な毛質が全体に醸し出すたたずまいは、装いのクラス感を左右します。
上級毛糸ではカシミヤが有名で、ビキューナやアルパカなどもありますが、こちらのVネックに用いたのは、上質なスーツを仕立てる素材として知られる「モヘア」。モヘアはアンゴラヤギの毛。シルクにも似た光沢を帯びているのに加え、しなやかなハリとコシも備えています。
シャープなVネックがすっきりした印象を際立たせています。さりげないダイヤ柄も、装いのニュアンスアクセントに。さわやかなカラートーンともマッチして、広がって見えない効果を発揮しています。色やムードの異なるカットソーを重ねて胸元からちらりと覗かせるトップスレイヤードが味わい深い表情を引き出します。
モヘアの上質感が漂うから、ざっくりまとってもリッチ見えします。あえて、デニムパンツのようなカジュアル寄りのボトムスで合わせると、抜け感も加わります。極上のふんわりとしたモヘアは贅沢な着心地で、1日を心地よく過ごせること間違いなし。大人の休日スタイルを楽しめる1着です。
【B-SIDES】デニム ¥46,200
【SIDANHA】ブーツ ¥93,500
ボトムスのほうも、別ムードを迎えて、こなれたミックスコーデに。シェフパンツやチノのようなパンツを選べば、デコルテのフェミニン感が引き立ち、こなれたジェンダーレスの着こなしに仕上がります。
色はブルー(表示はグリーン)とオフホワイトの2色から選べます。上質な毛糸が集まる、イタリアのトスカーナ州で50年の歴史を紡いできた糸メーカー、COFIL社のスーパーキッドモヘアだから、長い毛足がソフトで、肌触りも穏やか。色がきれいに乗っています。
ヒップが隠れる程度のオーバーシルエットだから、自然な落ち感が生まれています。上質なモヘアならではのふんわりとした立体感も、ボディラインを拾わない華奢見えがかなう理由。あえてアウターで隠さないで、風合いを印象づける着方を試したくなります。
【Dickies】ダブルニーワークパンツ/別注 ¥16,500BUY
【FABIO RUSCONI】チェーンモチーフローファー ¥33,000
着ぶくれが心配になる冬に、意外な着やせがかなうアイテムがオフタートルのニットプルオーバーです。マジックの理由は、首から離れてたっぷりのボリュームがあるから。ネックゾーンに細感が生まれて、顔まで小さく映る仕掛けです。
オフタートルニットの魅力は襟周りやデコルテの印象を、自在に変化させられるところにもあります。タートル部分を無造作っぽく垂らしたり、ケープ風に広げたりすることによって、リラクシングにもエレガントにも早変わり。その日の装いに合わせて、自在に操れます。
写真のように無造作に垂らしてドレープをつくると、表情の豊かなシルエットが生まれます。レギンスで合わせても、視線が引き上がるアレンジです。ゴールドのネックレスを首元からチラリとのぞかせてワンポイントアクセントできらめかせました。
ニットの素材はウール32%で、アルパカが32%、ナイロンが30%、ポリウレタンが6%という、複雑なミックス。天然素材と人工繊維をうまく混ぜてあるので、軽い着心地と伸びやかなストレッチが両立しました。
色はライトグレーとオレンジの2色が用意されています。ぬくもり感を帯びた杢(もく)グレーは着回しやすいベーシックカラー。一方、オレンジは冬の装いに華やぎを添えてくれます。
着こなしバリエーションを広げるうえで、押さえておきたいポイントは、タートルネック部分を折り返す技です。大きく折り返した襟を、ぐっと下へ引き下ろすと、ケープやボレロのような着映えに。ケープを着けているような見た目の印象に様変わりします。ボルドー系のパンツと合わせれば、陰影の深い上下コーデに整えられます。
【Dickies】ダブルニーワークパンツ/別注 ¥16,500BUY
【SIDANHA】ストレッチロングブーツ ¥97,900BUY
さらに下へ引き下げれば、両肩がチラリとのぞくオフショルダー風の見え具合にスイッチ。タートルネック部分をボリューミーに印象づけることによって、首の細さが際立ち、小顔効果を引き出せます。袖をレッグウォーマーのようにくしゅっとたくし上げて手首の細さも印象付けました。このように柔らかいスカートと合わせることによって、今年らしい異素材コーデが成り立つのもボリュームニットの魅力です。
【LEGRES】ローファー ¥81,400
ニットは編み地がワンパターンだと、平凡に見えがちですが、こちらのプルオーバーはグラデーションを編み込んであるから、奥深い表情が備わっています。1枚で着ても様になるうえ、くつろぎ感に浸る「コージー(Cozy)」な気分が叶うニットです。パネル状の大きなボーダー柄も編み込んで、さらに立体感を強めました。
ざっくり編んだローゲージニットなので、気負わないエフォートレスな雰囲気が漂います。手編みの風合いがやさしげなムードも呼び込みました。
素材はアクリル60%、ウール19%、モヘア14%。ナイロン7%で、モヘアならではのつや感や、柔和な風合いが魅力です。色はライトグレーとベージュという、どちらも癖のない、着回しの楽な色が用意されました。
ライトグレーは濃淡の異なる2色のグレーを組み合わせて、色の立体感を際立たせました。白や黒ともなじむ、使い勝手に優れた色です。
着心地が楽なのは、少しだけ肩を落としたドロップショルダーのシルエットだから。身頃をゆったりめに仕立ててあるので、内側にトップスを着込む形でのレイヤードも楽しめます。
多彩なアレンジのレイヤードを受け入れてくれます。たとえば、タートルネックに重ねれば、縦に長い印象を強める効果を発揮。背中側にボウタイを垂らしたレイヤードで、優美なイメージをまとって。パンツとクラシカルなヒール靴で異なる質感を全身で表現しました。
【Dickies】ダブルニーワークパンツ/別注 ¥16,500BUY
【SIDANHA】スクエアトゥパンプス ¥49,500BUY
軽く丸みを帯びたシルエットがリラクシングな着映えに導いています。オーバーサイズ気味ではありますが、だらしなくは見えない、控えめの量感。素肌との間にスペースがあって、空気をはらむような軽やかさを演出してくれます。ベージュは同系色でグラデーションを構成。あたたかみを感じさせる穏やかな色味です。
ボディラインがほっそり映る理由は、ローゲージならでなの緩やかな編み目に加え、両袖に程よいボリュームがあるおかげ。自然な着やせ効果を期待できます。色味を合わせたニットパンツであわせれば、トレンドの「ニットonニット」コーデときれいなワントーンにまとまります。
(c)Rie Miyata
目を引くモチーフを編み込んだニットトップスは、冬ルックにインパクトをもたらしてくれます。地味にまとまりがちなウインターコーデを、ビジュアルに弾ませる切り札にも使えます。特大のペイズリー柄がファニーな、オーバーサイズのニット。これ1枚で存在感を発揮。ワンピース風にまとって、チャーミングに着こなしました。格上のニットウエアをまとえば、1枚で着映えするというメリットが一目で分かります。仕上げにエンジニアブーツ系で足音にボリュームを出したのも、賢いスタイリングです。
この冬はニットがトレンドアイテムとなっているだけに、素材もデザインも豊作です。1枚で絵になるざっくりニットを、大人女性が選ぶなら、やはり上質素材や手仕事ディテールを優先したいところ。「ガリャルダガランテ」から登場した新作ニットはそんな欲張りなチョイスにかなうアイテムがそろっています。この冬は例年以上にニットを着る人が増えるだけに、「差が付くニット」でおしゃれをグレードアップしていきましょう。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。