FASHION JOURNALIST
RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.83
すっかり寒くなり、装いも一気に冬モードへ。やはり、主役はコート。今欲しいのは、長く愛せる上質でタイムレスなコートです。カシミヤ、ウールといったクラス感のある素材で装いに格上げするのが賢いチョイス。「ガリャルダガランテ」の新作コートには、チェスターやステンカラー、ポンチョなど時代に流されないシルエットが勢ぞろい。お仕事ルックにもカジュアル使いにもなじむから、春まで着続けたくなるアイテムがいっぱい。大人感を印象づける装いを、新作のスタイリングからおさらいしていきましょう。
スラリと縦長の「チェスターコート」が日本でヒットしてもう数年が経ちます。人気が衰えない理由は、スレンダーな着映えと使い勝手のよさ。でも、そういった基本の強みを生かしながら、さらに着やすさやオールシーズン性も盛り込んだ、新タイプの「ネクストチェスター」も登場しています。
こちらは、裏地をあえて抜いてある一重仕立てなので、拍子抜けするほどの軽い着心地。裏地がないのに、しっかりあたたかいのは、上質なウールを使っているから。ウール82%、ナイロン18%の絶妙ミックスで、自然な着用感を生んでいます。
一重仕立てのおかげで、動いたときに自然な揺らめきが起きて、ノンシャランとした雰囲気を演出。フロントの開け閉め次第で、適度なドレープが生まれ、軽やかな印象が強まります。
色は癖のないモカ、シックにまとえるブラック、違いの際立つペールトーンのパープルという3色から選べます。写真のモカはデニムパンツにも重ねやすい万能カラーです。
ウール素材の上質さが装いに品格をもたらしています。見える面積が広いだけに、コートの生地感は一目で分かるもの。無地のタイプはいっそう風合いが際立つから、素材選びの妥協はNGです。
実はこちらのチェスターは過去にも「ガリャルダガランテ」で取り扱ってきたヒット作。お客様からの再販売要望が強かったこともあって、細部をリニューアルしてのリバイバルとなりました。
裏地ありのコートを着慣れた人には、驚きに近い意外感があるでしょう。肩にのしかかってこない、一重仕立てならではのライト感は、春冷えが気になる春先にも出番を約束してくれそうですね。
しなやかに着映えるのは、肩が少しだけ落ちたリラックスなシルエットだから。肩周りがゆったりした仕立ても、楽ちんな着心地につながっています。アームホールにゆとりがあるので、内側に着込むトップスも選びません。
そして、以前のデザインからの主な変更ポイントは裾のコンパクト化。裾景色がスッキリした分、ミニマルで軽快なたたずまいに仕上がりました。一度もカットされたことのないウール原料は、毛先が細くソフト。ほのかなつやめきも帯びています。
チェスターの持ち味である、ふくらはぎにかかる程度の着丈がきれいな縦落ち感を印象づけます。アルファベットの「I」のようなほっそりシルエットは、着ぶくれが心配なウインターシーズンの助け船的存在。気負わないエフォートレス気分も醸し出してくれます。
お仕事ルックになじむのはもちろんですが、このように、ニットトップスやデニムパンツなどに重ねて、デイリーに着回す場合も、クラス感が演出できるのは上質なウールコートならでは。トップス&ボトムスの組み合わせを入れ替えて、日々の相棒になってくれます。
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冬にコートを着るメリットは、防寒だけではありません。「きちんと感」が備わるのに加え、素材感を生かした格上げ効果も。さらに、内側にイージーな服を着ても、上出来コートでごまかせる「油断OK」の秘かなありがたさもあります。
このようなメリットを手に入れるためには、コート自体の上質感が絶対条件になります。素材の切り札は、やはりカシミヤ。こちらのコートはカシミヤ100%だから、冬ルックの主役をしっかり任せられます。
凛とした大人感が際立っているのは、伝統的なステンカラーコートだから。襟の手前が低めなので、マフラー類もきれいに収まります。ゆとりのある肩周りも、このシルエットの強み。ボタンを隠す比翼仕立ての前立てが端正な印象を引き出しています。英国紳士ライクなキリッとした表情は、ステンカラーコートならではのたたずまいです。
カシミヤ100%の質感を際立たせるピンクベージュとネイビーの2色が用意されました。ピンクベージュは素肌の色味を明るくやさしく見せてくれるマジックカラー。ネイビーは落ち着きや気品が際立つ色調です。
本物志向が強まって、トラッドな装いがあらためて支持されるようになってきました。ステンカラーコートは王道トラッドの風情があり、トレンドに流されないタイムレスに着られる魅力を発揮してくれます。
メンズ感覚の少しオーバーシルエット気味で着こなすのが、こなれ感をまとわせるさじ加減。上品さを保ちつつ、自然な抜け感とフェミニンなムードも宿っているから、工夫いらずで、大人っぽい着映えに。前を開けてさらりと羽織れば、着やせ感も印象づけやすくなります。
カシミヤ特有の滑らかな肌触りは、ずっと触れていたくなるほど。目の細かい、希少なホワイトカシミヤだから、軽さとぬくもりが両立。控えめな光沢が気品を漂わせます。
ふくらはぎに届くロング丈なのに、意外なほど軽く感じるのは、カシミヤならではの魔法。デニムルックの格上げが叶うのも大人女性にとって安心で頼もしいところ。もちろん、お仕事コーデのキーピースにも当確。自然と自信がわいてくるような「プラウドコート」です。
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トレンチや正統派ロングコートには、カッチリきちんと着るイメージがあります。また、ダッフルコートやピーコートは、カジュアルにも着やすいタイプですが、さらにリラクシングな雰囲気を帯びているのは、ポンチョ風のコート。きちんと系コートとポンチョの「いいとこ取り」タイプは、シーンを選ばず、自在に着回せます。
ポンチョコートの形なのに、格上感が宿っているのは、カシミヤ100%の素材感だからこそ。希少性の高いホワイトカシミヤだけを使って織り上げました。「あれっ」と思うほど軽い着心地ながら、細い毛がしっかりぬくもりをキープしてくれます。
カシミヤ100%の素材を贅沢に使って、ダブルフェイス仕様に仕立てています。裏側もカシミヤなので、包み込まれるような着心地。肌当たりがソフトで、着崩れもしにくいのは、このダブルフェイス仕様の賜物。素材を2枚重ねで使っているから、体温が逃げにくい造り。外から見えない部分にまで手が込んでいます。
襟とフードが一体化したフードカラーのポンチョだから、程よくカジュアルな表情を帯びました。背中側からの見え具合も朗らかでリラクシング。両サイドには深めにスリットを入れて、軽やかな足さばきを導いています。
カシミヤの風合いにマッチするキャメルとサックスブルーの2色から選べます。キャメルは肌なじみが抜群。ベージュ系ウエアとの相性も申し分ありません。一方、サックスブルーはトレンドカラーのブルーを、使い勝手のよい色調にアレンジ。コーデに悩まない、グレイッシュな色味を漂わせました。
膝が隠れる程度のミドル丈なので、ロングコートほどには重たく見えません。ウエストベルトを使って、シルエットを自在にアレンジできるのも、着こなしパターンが増える理由。ゆるめに巻いて、のどかな雰囲気を出す着方も選べます。
ポンチョらしいゆったりした仕立てを生かしたレイヤードが様々なバリエーションで組み立てられます。写真のように、ニット×パンツというミニマルなジェンダーレスコーデにもコート姿が一層際立ちます。
両サイドのスリットが深めなので、レイヤードがきれいに決まります。色の異なるボトムスとのコンビネーションなら、コントラストがくっきり。ポンチョならではのシルエットを生かして、肩を抜いた着こなしも選べます。後ろ姿の表情を豊かにしてくれるのは、フードの存在。まるで大判ストールを羽織るかのような感覚でイージーに着こなすと、カシミア100%の上質感が引き立ちます。
こちらは2017年にデビューしたブランド「HERITANOVUM(ヘリテノーム)」のコートです。着心地とエレガンスを兼ね備えていて、シーズンに関係なく着続けやすいテイストを提案しています。
サステナビリティー(持続可能性)は今やおしゃれのキーコンセプトに浮上してきました。このコートを仕立てるために用いたのは、製造の途中で抜け落ちた「遊び毛」を再利用した「エコカシミヤ」。これまでは廃棄されていた素材に手を加えて、上質のサステナ仕様コートに生まれ変わらせました。
着心地が軽やかなのに、しっかりとぬくもりをキープするのは、リバー仕立てのコートならではの魅力。「リバー仕立て」とは、2枚の生地を1枚につなぎ合わせる形で縫い立てる」という意味。リバー仕立てのコートには、軽さや保温力、着心地など、魅力がいっぱいです。
イタリアの名門ファブリックメーカー、Menchi(メンキ)社のエコカシミヤを使用しています。ソフトな肌触りなのに、フリースのような風合いもあり、エフォートレスな雰囲気が漂います。カシミヤ95%、ウール5%と、圧倒的にカシミヤの比率が高い混紡で、気高い質感を際立たせています。
ゆったりした襟が穏やかな印象。写真のように、前を開けると、さらに量感が出て、のどかな景色に。実は、ボタンを留めると、ステンカラーに様変わり。シーンや気分に応じてスイッチできるコートは出番を選びません。
色はカシミヤの上質感を最も引き立たせるライトベージュ。着こなしの相性を選ばないので、自分好みのスタイリングに生かせます。ダークトーンにまとまりがちな冬ルックのムードチェンジャーになってくれる、色味の明るいベージュです。
贅沢に生地分量を使って余裕を持たせたシルエットだから、ニットの上に重ねても美シルエットをキープ。アームホールが広めなので、肩周りも楽。レイヤードが自在に楽しめるシルエットです。冬から春にかけてのメインコートとして、オンとオフをまたいだ着回しが楽しめます。
ほんのりとまゆ状のコクーンシルエットが朗らかで上品なムード。一方、ダブルブレストがクールな表情を宿していて、異なるムードが同居。味わいの深い1着に仕上がりました。
(c)Rie Miyata
上品なキャメル色のロングコートに身を包んだ、コート主体の着こなし。コートが目立つのに、しなやかな見え具合に仕上がっているのは、裾に向かって広がる、優美なシルエットのおかげ。サテン系の黒パンツでつやめきを添えて、白スニーカーで軽やかなムードをプラス。さらに、ボリュームのあるファーストールを垂らして、華やかさと立体感をプラス。落ち感も強調しています。ロングコートを主役にした、異素材ミックスの縦長コーデのお手本的スタイリングです。
アウターが主役になる冬は、上質素材や技ありシルエットが大人の装いの決め手に。サッと羽織れば決まるから、毎日のコーデに悩まなくて済むのも、うれしいメリット。チェスター、ステンカラー、ポンチョ、リバーと、それぞれに持ち味があり、タイムレスなコートに仕上げられます。カシミヤやウールが醸し出す特別感を味方につけて、頼れるパートナーになってもらえる1着を見つけてみてください。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。