FASHION JOURNALIST
RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.84
冬の悩ましい着ぶくれを防いでくれる着こなしが縦長の「I」ラインコーディネートです。アルファベットの「I」を思わせるほっそりシルエットのコツは、ふくらませないレイヤード。落ち感がきれいに出る重ね着には、それにふさわしいアイテムがあります。冬本番を控えた「ガリャルダガランテ」には、そういったコーデに役立つアイテムが集まりました。今回はすっきりしたレイヤード姿に導くスタイリングのコツをお伝えします。
手軽に「I」形の着映えを手に入れたいなら、出っ張りの少ないワンアイテムが選択肢に。ロング丈のニットワンピースを軸に据えれば、縦長シルエットがしなやかに仕上がります。くるぶしにかかる程度の着丈があるので、「ロング&リーン(長くて細い)」の見え具合に。ニットが自然とボディラインになじんで、エフォートレスなスタイリングが叶います。
トップス部は袖のないニットなので、袖を生かした多彩な重ね着を楽しめます。写真はコットンシルク仕立てのボウタイブラウスにオンしたコーデ。ニットとは風合いの異なるブラウスが質感の違いを際立たせています。
縦落ちイメージを印象づけているのは、黒のパンツとの異素材ミックス。きちんと感の高いセンタープレスがシャープな印象を引き立たせました。
ワッフル素材のおかげで、肌当たりはやさしくソフト。コットン60%、ナイロン30%、ウール10%の絶妙ブレンドです。色は穏やかなアイボリーとシックなチャコールグレーの2色から選べます。
ボトムスの選び方次第で、自在に着回せるから、出番が1年を通じて途切れません。袖がない分、上からアウターを重ねても、腕周りがごわつかないのも、レイヤードに重宝なポイントです。
ほっそりフォルムなのに、脚さばきが楽ちんなのは、両サイドに深めのスリットを入れてあるから。裾の動きが装いに表情をプラス。深めスリットはこれからの盛り上がりが確実なトレンドディテールです。裾の高さを前後でずらしてあるので、縦長イメージが一段とくっきり。前からも横からも落ち感が出ています。
着こなしのコツは、ムードの異なるトップスに重ねる使い方です。シャツやブラウスといった、きちんと系、きれいめのアイテムが好パートナー。ニットではない素材とのミックスが全体を味わい深く見せてくれます。
ハイネックとのコンビネーションは縦長イメージの増幅に効果的。同様に、スリムなロングパンツと組み合わせて、「I」形シルエットを強調するスタイリング技も使えます。
今回の相棒トップスに選んだコットンシルク素材のボウタイブラウスは、エレガントな着映えが持ち味。シルクならではの気品が装い全体を格上げし、上品なつやめきがニットとの異素材を際立たせてくれます。目を惹くボウタイは太めで大きめだから、小顔に見せる効果も期待できそう。
ボウタイブラウスは品格が備わっているので、装いが一発で決まるメリットがあります。着慣れたデニムパンツと合わせても、きれいめテイストが加わり、こなれた着映えに整います。こちらのように、スリーブレスのロングニットと相反するエレガントなブラウスを組み合わせれば、トレンドの異素材ミックスを取り入れた「I」ラインシルエットが完成します。
【SOPHIE BUHAI】リング ¥86,900
細感を印象づけるアイテムには、縦長タイプが多いのですが、実はコンパクトなベスト(ジレ)も効果的です。シェイプされたウエストを際立たせてくれます。
スリーピースのスーツでおなじみの、クラシックなたたずまいの定番ベストは、装いのムードを引き締める働きが絶大です。きちんと感も加わるから、格上げツールにもうってつけ。ホワイトデニムパンツで合わせれば、程よい抜け感が生まれます。
ベストが両脇を絞ってくれるから、すっきりした「I」形ラインが引き立つ仕掛け。部屋に入って、アウター類をオフしたときに、見た目上の「瞬間着やせ」が叶います。
表地は上質なウール100%なので、本格テーラードの風情がしっかり出ています。紳士スーツ用の高級服地で有名な、イタリアのファブリックメーカー「VITALE BARBERIS CANONICO(ヴィターレ バルベリス カノニコ)」の素材です。落ち着いた光沢感が品格を宿らせています。
色はチャコールグレーの1色。クラシックな形にふさわしい色合いです。深いダークトーンなので、ブラック感覚で着回せます。写真のように、白系ボトムスと組み合わせて、「白×黒」のツートーンにまとめると、すっきりした印象に仕上がります。
着映えはスレンダーですが、実際の身頃にはやや余裕を持たせてあるから、窮屈さを感じない着心地。かしこまって見えにくい、自然なラフ感も引き出しています。背中に配したアジャスターベルトを使って、好みのフィット加減に調節できます。
端正な着映えに導いてもらえるだけに、ジャケットとのコンビネーションもレパートリーに加えたいところ。今回は同じ生地で仕立てたセットアップ仕様のジャケットとウールスラックスパンツが用意されています。スリーピースで決めたり、パンツだけはずしたりといった、シーンに応じた着回しが選べるセットアップ・トリオです。
主役のベストは一見、フォーマルな印象があるから、あえてラフなトップスに重ねるコーデがおすすめ。ベストはシーズンを通して使いやすいアイテムなので、通年のキープレーヤーになってくれそう。手持ちワードローブのマルチ活用に役立つのも大きなメリットです。
今回のボトムスに迎えたデニムパンツは、ベストのカジュアル使いに絶好の相棒ボトムスです。控えめなダメージ加工がこなれた表情を引き出しています。あえてルーズめのシルエットを選んで、ストレスフリーの着心地を実現しました。
色はホワイトとブルーの2種類から選べます。写真の通り、ホワイトはチャコールグレーのベストと抜群のコントラストを発揮。ヴィンテージデニムの風合いを再現した素材感が大人感を漂わせます。
このようにクラシックなベストを1枚迎え入れることで、カジュアルなトップスやボトムスをあわせたときにも、きちんと感の備わったミックスコーデに整います。シーズンも関係なくマルチに使え、コンパクトに見えるから、「I」ラインシルエットを完成される優秀アイテムと言えます。
V.B.Cベスト ¥31,900
【La nature】シアーロングスリーブTシャツ ¥13,200 BUY
ポーチベルト ¥8,800
マキシ丈のタイトスカートは「I」形シルエットを最もダイレクトに印象づける最強のボトムスでしょう。細身コーデの切り札的なアイテムです。着こなしにあたっては、せっかくの縦落ち感を壊さないスタイリングがポイントになります。
ストレートな形が持ち味のスカートだけに、コーデもすっきりとした見え具合を保ちたいところ。写真のようにプレーンなシャツでミニマルな着映えにまとめるのは、賢いチョイスです。
こちらのタイトスカートは後ろにスリットが深めに入っていて、シャープな印象がさらにアップ。脚さばきが楽だから、タイトスカートとは思えないほど、スイスイと歩けます。
タイトなシルエットなのに、着心地が楽なのは、生地自体にしっかりストレッチを利かせてあるから。ポリエステル86%、ポリウレタン14%の素材は、伸縮性に富み、締め付け感の心配なし。シーズンをまたいで着やすい素材なので、通年で着回せます。
色はどちらも使い勝手のよいブラックとホワイトの2色が用意されています。クリーンな印象のホワイト。引き締め効果が上乗せされるブラック。冬コーデの鉄板カラーがそろいました。
シンプルなシャツをそのままウエストアウトしてもきれいな縦長シルエットを描いてくれるのは、マキシ丈タイトスカートならでは。今シーズンおすすめのロングブーツを迎えて、深いスリットから、ブーツをチラリとのぞかせる着こなしが新鮮です。
新トレンドのキーワードは「ミニマル+α(プラスアルファ)」。余計な飾り気を遠ざけつつ、ディテールに凝ったデザインのことです。すっきりしたタイトシルエットに、今っぽさを添えているのは、ハイウエストのアレンジ。腰のフィット感を高めるのに加え、ウエスト位置を高く見せるから、脚長効果を発揮。ヘルシーな「I」形ラインが引き立ちました。トップスをウエストインすれば、縦に長いイメージがいっそう強まります
逆にトップスでボリュームを出して、腰から下をぐっとスレンダーに見せるという「引き算」もあり。ざっくりニットのセーターがオーバーサイズの羽織り物が好パートナーに。「I」ラインのシルエットを簡単につくってくれるマキシ丈タイトスカートを迎え入れれば、冬のアウターコーデも着ぶくれの心配なしで気持ちよく過ごせるでしょう。
【SIDANHA】ストレッチロングブーツ ¥97,900
【SOPHIE BUHAI】ネックレス ¥73,700
ゆるっとしたシルエットのニットトップスは、ボトムスのほっそり感を引き立てる、最高のバイプレーヤーです。選ぶ際のポイントは、ゆったりめの量感と長めのレングス。ボリュームがあると、ボトムスが細見えし、着丈が長いと、落ち感が出やすいからです。
こちらのニットはたっぷりの量感があるのに、重たく見えないという、不思議なアイテム。その理由はメッシュ。透かし編みのおかげで、エアリーな風情が備わっています。キッドモヘヤの風合いも、軽やかな着映えの理由です。モヘヤ46%にシルク31%、ウール23%を加えて、やさしげな素材感を引き出しています。適度な張りも帯びた糸は、ふっくらしたボリュームをしっかり支えてくれます。
大きすぎないオーバーサイズなので、かさばって見えにくい、上出来のバランス感。でも、着丈はヒップまでしっかりカバー。軽く肩が落ちている、柔和なシルエット。ゆったり着られて、気持ちもなごみそうです。
細長いシルエットに仕上げるには、ロング丈ボトムスを選んで。膝で絞って、さらに裾広がりになったマーメードスカートは、流れ落ちるような縦長シルエットを描き出します。ゆったりニットトップスとの相性は抜群です。
しなやかな落ち感を帯びているのは、つややかなキュプラ生地で仕立ててあるおかげです。表地はキュプラを100%使った、特別感の高い質感です。ウエストは総ゴムなので、締め付け感フリーの着心地。ウエスト位置を自在に変えられるのも、着回しに好都合です。色はベージュ、ダークブラウン、グレー、ブラウンと、ウインタールックになじませやすいカラーパレットが用意されました。
実はキュプラは地球にやさしい再生繊維です。綿花を採った後に残った、本来は捨てられてしまう繊維が原料になっています。もともとは植物だから、いずれは土に還るサスティナブルな素材。表地はそのキュプラ100%の生地で仕立てた、エコ意識に寄り添うスカートなのです。表面に特殊加工を施し、ヴィンテージライクな風合いをまとわせました。これも自然なこなれ感が漂う理由です。
オーバーシルエットのメッシュニットに再生繊維のキュプラスカートでエコフレンドリーなムードをまとった、しなやかな自然体な「I」ラインをまとえます。リバイバルがめざましいロングブーツを足元に迎えれば、トレンド感も上乗せできます。
【PELLICO】アーモンドトゥニーハイブーツ ¥99,000BUY
【SOPHIE BUHAI】ピアス ¥96,800
縦長イメージを印象づけるアイテムの最後を飾るのは、華々しく復活したロングブーツです。写真のニーハイブーツは凜々しさと脚長感をダブルで引き出しています。レイヤード仕立てのニットプルオーバーと組み合わせて、さらにほっそりした着映えに整えました。
このニーハイブーツは、1963年にイタリアで創業した「PELLICO(ペリーコ)」の逸品。小さな工房で熟練の職人が仕上げた、上質な牛革製の特別なブーツです。洗練と本物感がコーデに格上テイストをもたらしてくれます。
爪先の形は、パンプスでおなじみの「アーモンドトゥ」。名前の通り、アーモンド状に丸みを帯びながら細くなった形です。とがったポインテッドトゥほどにはシャープではないので、爪先をやさしくカバー。優美なカーブを描きます。色は深みのあるダークブラウンの1色です。黒に近い色味だから、レッグラインの引き締め役にうってつけです。
レザーのなめしが念入りなおかげで、自然と脚線に沿うような履き心地。膝上まで丈があって、もたつきやごわつきを感じないのは、イタリアならではの皮革加工の巧みさゆえです。
ニーハイブーツを生かすコーデ案は、「短×長レイヤード」がおすすめ。写真のようにミニ丈ボトムスとミックスしてフレッシュに。適度に素足をのぞかせると、細感が引き立ちます。
冬は本格的なレイヤードが楽しめるシーズンです。ただ、実は上手な組み合わせはなかなか難しいもの。こちらのニットプルオーバーはハイネックベストとショート丈プルオーバーがあらかじめコンビになっています。つまり、セットで着るだけで、こなれ感の高いレイヤードルックに仕上がるわけです。もちろん、それぞれ単品で着られます。
この秋冬は着丈の短いクロップド丈のトップスがキーアイテムに位置づけられています。こちらのショート丈プルオーバーはボレロ風にも着られる造り。袖の遠い方次第で、マルチに着回せます。
一方、タートルネックはノースリーブだから、内側に着込むトップスとの組み合わせ次第で、多彩に表情を変えられます。シャツに重ねて、異素材ミックスに整えるのもよし、ニットトップスにオンして「ニットonニット」のやわらかい着映えにまとめるのもよし。シーズンを超えてマルチに着回しやすい重宝アイテムです。
色はベージュのワンカラーです。肌なじみのよいトーンだから、セット以外の着こなしバリエーションを選びません。ウールにカシミヤをミックスした素材がベージュの穏やかなムードを濃くしてくれます。
こちらを手がけたのは、実力派ブランドの「INSCRIRE(アンスクリア)」。セレクトショップのデザイナーやバイヤーを経験した岡ゆみか氏が2017年に立ち上げたブランドのものです。ミリタリー、ヴィンテージ、モード、ワークなどのメンズスタイルを解釈し直すのが持ち味で、フェミニンとの交わらせ加減も巧み。こちらのニットコンビには控えめのミリタリー感とくつろいだ雰囲気が同居しています。
ニットのレイヤードにロングブーツを取り入れれば、このように冬ならではのコージーなくつろぎ気分とシャープなレッグラインと欲張りなコーディネートが実現します。冬の「I」ラインシルエットをつくる賢い選択肢がここにあります。
【INSCRIRE】レイヤードニットプルオーバー ¥53,900 BUY
【PELLICO】アーモンドトゥニーハイブーツ ¥99,000BUY
【AESTHER EKME】ショルダーバッグ ¥62,700
(c)Rie Miyata
マキシ丈の黒ドレスに、ざっくり編みのコーディガンを重ねて、ノンシャランとした印象に整えました。着丈の長いアイテムを重ねた「ロング×ロング」のコーデです。ドレスでエレガンスを薫らせつつ、ニットでリラクシングなムードをオン。ずるりとした縦落ち感も上乗せしました。長く垂らしたネックレスも自然体の雰囲気を強めています。床をこするほどに着丈の長いドレスを主役に組み上げた、見事な「I」ラインのレイヤードコーデです。
ニットトップスやジレ、ロングスカート、ロングブーツを使って、縦落ち感の強いスタイリングに仕上げれば、冬の大敵「着ぶくれ」と縁を切ることができます。うれしい着やせメリットも得られる縦長コーデを取り入れて、この冬を気持ちも着映えもすっきりムードで迎えてみませんか。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。