FASHION JOURNALIST
RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.86
季節や場面を選ばない黒パンツはコーディネートの頼れる味方です。もっさりしがちな冬ルックをすっきりほっそり見せてくれるから、上手に生かしたいボトムス。「ガリャルダガランテ」のコレクションからオールインワンやジョガー、セミフレアなど、多彩な新顔パンツをピックアップ。シーズンを越えて穿き回しやすい黒パンツの進化形スタイリングをご案内します。
人気の復活でファンが増えているアイテムに、オールインワンがあります。上下がつながっているから、コーディネートが一発で決まる「時短」ウエア。トップスを選ぶだけと、ほぼノープランで着こなせる重宝アイテムです。
オールインワンにはカジュアルなイメージもありましたが、こちらは大人仕様。適度にマニッシュな雰囲気がありつつも、胸元のVがフェミニンなムードを印象付けています。性別にとらわれないジェンダーレスルックの新しい選択肢といえそうです。
ボディに寄り添いながら、シルエットをしっかり保ってくれるのは、割と肉厚のダブルクロス(二重織り)生地だから。カットソーのようにソフトな着心地なのに、「きちんと見え」をキープ。レーヨン63%、ナイロン32%、ポリウレタン5%の絶妙レシピが伸縮性と上質感を両立させています。自宅での手洗いもOKです。
ありきたりのオールインワンに見えないのは、ハイウエストの効果。ウエストゾーンがタイトに映る仕掛けです。太めのサスペンダーはまるでベスト(ジレ)のよう。でも、引き締まって見えるのは見た目だけで、実際の着心地は楽ちん。パンツは程よくゆとりがあり、着映えも伸びやかです。
かつては「ツナギ」とも呼ばれたオールインワンには、ダボッとして見えるところがありましたが、こちらは全くの別物。むしろ、細感が備わっています。秘密はウエストシェイプ。ハイウエストを生かして、見た目上の絞りを利かせ、ワイドシルエットなのにスタイルアップをかなえてくれます。
ディテールにも工夫がいっぱい。背中側は大きなV字形になっていて、トップスがきれいにのぞきます。逆に、胸元にはギャザーを寄せ、フェミニン感を醸し出しました。全体がつながっているのに、着心地が楽なのは、縦にも横にもストレッチが効いているから。どこにも引っかかりや突っ張りを感じない、イージーでのどかな着用感です。
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オールインワンで最大の心配どころは脱ぎ着の手間でした。こちらは背中側に隠しファスナーが用意されているので、着脱は一発。写真のようにオーバーサイズのアウターとも好バランスを発揮。化粧室ではさっとアウターを脱いでフックに掛けてオールインワンを着脱。ももたつく心配もありません。
インナーにタートルネックやハイネックを合わせれば、縦長イメージがアップ。ハイウエストの効果で、脚も長見え。さらに帽子を取り入れると、全体のスタイルが一段とシャープに映るので、冬の着こなしが多彩に。
着こなしのポイントは靴にもあります。全体にジェンダーレスなたたずまいなので、靴選び次第でムードを決められるわけです。紳士風の黒革靴を選べば、凜々しさが漂います。ハイヒールを迎えて、レディーライクに寄せるほか、ブーツでクールに仕上げたり、スニーカーでアクティブに見せたりと、くるぶし丈を生かして、シューズでのアレンジが楽しめます。
足首に向かって少しすぼまったジョガーパンツは、軽やかな足運びに誘うボトムスです。ようやく外出しやすくなってきつつある中、サクサクした歩きをサポートしてくれます。
ご近所ウエア的なイメージのあったジョガーパンツですが、こちらはレザー仕立てだから、かなりの格上感が備わっています。すっきりシルエットはそのままに、グレードだけを高めた感じ。すぼまったフォルムのおかげで、足首がきれいに見えるデザインです。
レザーとは言っても、フェイクレザー(合成皮革)なので、軽くてしなやか。昔のリアルレザーにありがちだった硬さやごわつきとは無縁です。でも、レザーならではのつやめきやクールさはしっかり帯びているから、「タフ×シック」のムードをまとえます。
SDGsやサステナビリティーの面からもフェイクレザーは時代の流れになじむ素材です。自宅で手洗い可のイージーケアも、デイリー使いに向いています。
ジョガー型のよさは、レッグラインを拾わないところ。付かず離れずのゆったりフォルムは、突っ張らない脚なじみにつながっています。裾の正面にタックを入れてあるから、いっそう余裕が生まれました。
フェイクレザーはストレッチが効いているから、レザーパンツの見た目を裏切る、伸びやかな穿き心地です。製造工程で水・温水中をくぐらせて、しなやかな風合いを引き出しました。技術の確かなイタリアメーカーが仕上げた「技あり」の素材です。
色がブラックの1色なのは、レザーの静かな表情を際立たせる色だから。腰から下がキュッと引き締まって見えるベストカラーです。
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レザーパンツがクールな雰囲気を漂わせてくれる分、トップスは穏やかな風合いのニットがおすすめ。上下でのコントラストが際立ちます。ニットトップスで合わせるなら、ウエストへ裾インすれば、すらりとした「I」ラインのシルエットに仕上がります。パンツ裾のタックで足首が引き締まって見えるから、見た目の錯覚が生まれて、ウエスト周りが一段とタイトに映ります。
ふんわりとしたオーバーサイズのアウターをかぶせても、レザーの質感との異素材ミックスが映えるので、もたついて見えません。トップス、アウターの色をそれぞれずらすトリコロール(3色使い)使いで、装いにリズム感をもたらして。重たく見えがちな冬コーデに迎え入れたいテクニックです。
フェイクレザージョガーパンツ ¥26,400
冬はレイヤードを本格的に楽しめるシーズンです。トップスにアウターを重ねる形がおなじみですが、この冬はボトムスでの重ね着が提案されています。ミニスカートとパンツを組み合わせるのも、新感覚のレイヤードです。
こちらはセミフレアパンツの上から、ミニスカートをオン。単調になりがちなボトムス景色にドラマを仕掛けました。レイヤードの効果で、細感が際立っています。もちろん、バラバラの単品でも使えるコンビネーションです。
マニッシュに見えがちなパンツ姿も、キュートなミニスカートを重ねれば、ぐっとフェミニン寄りに。ボトムスだけでもジェンダーミックスの装いに仕上がります。
単体では少し気後れしがちなミニスカートも、脚線を隠すパンツとのミックスなら、安心して取り入れられそう。スカートらしいエレガントな表情をまといながら、気になるヒップ周りをカバーしてもらえます。
ミニスカートの生地はフラノウール100%だから、滑らかな光沢を帯びています。原料の羊毛は、子羊(ラム)と大人羊の中間にあたるウィナーズという貴重なウール。ラムほどは柔らかすぎず、大人羊よりは繊細という、絶妙の質感が魅力です。
つやめき、柔軟さ、弾力性の三拍子がそろった理想的な素材だから、ミニ丈でも品格がしっかり。裏地はキュプラ100%なので、引っかかりのないスムーズな着用感です。スカートのシルエットはシンプルな台形で、大人流にアレンジしやすいシルエット。身体のラインを拾いにくいのもうれしいメリット。ミニマルなミニスカートは癖がなく、コーディネートに苦労しません。
そんな万能ミニスカートに合わせたのは、セミフレアのブラックパンツ。人気が復活した裾広がりのフレアシルエットがコンパクトなミニタイトスカートと絶妙なバランス感を生みました。横から見ると、まるで膝から広がるマーメイドスカートのようで優美な印象。広がりすぎないセミフレアのグッドプロポーションです。
楽ちんな穿き心地なのは、ポリエステル100%のジャージー生地だから。伸縮性に富んだジャージーならではの、ソフトな着用感。シワになりにくいのに加え、自宅で洗える仕様。頼もしいイージーケアです。
実はジャージー生地を使ったアイテムは「ガリャルダガランテ」の人気定番シリーズ。今回はセミフレアパンツをバージョンアップ。以前よりもヒップから太もも回り、裾幅をすっきりさせ、脚線をいっそうきれいに見せるシルエットへ磨き上げました。以前から人気の高いパンツの進化版が誕生。ブラックは抜群の引き締め力を発揮してくれます。
1日ずっと穿いていても窮屈に感じないのは、ウエストの後ろ側にゴムを配してあるおかげ。ウエストに適度なフィット感が備わっているので、トップスのウエストインもしっかり決まります。写真のようにミニスカートとのレイヤードで、スレンダーな「きれい見え」コーデを叶えます。もちろん、パンツだけでも使えるから、ワードローブに迎え入れておくと、重宝すること請け合いです。
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(c)Rie Miyata
膝から下が脚長に見える効果が高いのは、フレアパンツの強みです。70年代ヒッピー風のシルエットは、レトロ感もまとわせてくれます。黒デニムなら大人っぽいきれいめカジュアルの着映えに。レッグラインがスレンダーに映っているのは、膝での絞りが効いているから。ブラックを選んだおかげで、シックな大人感がアップしています。黒革のライダースジャケットとマリン系のボーダー柄トップスで冬に差がつくさわやかクールに。大人きれいなカジュアルコーデの完成です。
見慣れた黒パンツでも、シルエットや素材を磨き直した進化形タイプなら、ぐんとおしゃれなムードに。もっさりしがちな冬コーデをすっきり整え、レッグラインをキリッと引き締める効果を発揮してくれるから、味方に迎えない手はありません。今回は「ガリャルダガランテ」が提案するラインアップから黒パンツを深掘りしてみました。オールインワンや新感覚ジョガー、スカートとのレイヤードなど、魅力的な提案が目白押し。真冬の黒パンツコーデが楽しく頼もしくなりそうです!
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。