FASHION JOURNALIST
RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.88
不動の存在といえるデニムパンツに2022年は新たなムードが加わります。ストリートやカジュアルの印象が強かったデニムパンツですが、この春はフェミニン寄りの着こなしが急浮上。大人の装いにマッチするうれしいトレンドです。ストレートやバギーのシルエットに、少しのフェミニンを乗せて、ジェンダーレスなムードで着こなすのが今の気分。コーディネートの決め手は、上品エレガントなトップス。互いに引き立て合うような上下コンビネーションが上手な着こなしのポイントです。今回は「ガリャルダガランテ」の新作ルックを通して、上出来スタイリングのコツをご紹介します。
デニムの表情を多彩なバリエーションで見せるには、「相棒」になるトップス選びが肝心です。選び方のポイントは「ずらし」。デニムがイージー感を帯びているから、トップスには「きちんと感」の漂うシャツ・ブラウス系がおすすめです。
ふんわりと結んだボウタイ(リボン)がエアリーなたたずまい。ボウタイブラウスは華やかさと愛らしさが融け合う、フェミニン寄りのムードが持ち味です。リボン部分には割と幅があって、適度な量感を備えています。顔に近い位置でボリューミーに主張してくれるから、小顔に見せる効果も期待できます。
パッチワーク風のデニムパンツは手仕事感を帯びた、格上ムードの漂うタイプです。センタープレスが施されたパンツにはスーツライクな正統派テイストが薫ります。上品な雰囲気はボウタイブラウスとも好相性を発揮。足元には白のパンプスを迎えて、レディー気分も寄り添わせました。
ブラウスは程よく張り感を持たせたコットンで仕立ててあるから、立体感がキープできるうえ、フォルムが着崩れる心配もありません。細めの糸を使って、高密度に織り上げてあるので、質感はしなやか。透け加減は控えめ。出番が多くなっても、自宅で手洗いできる安心仕様です。
顔周りがシャープに決まって見えるのは、高めの襟がアイキャッチーだから。高い襟は背中側からの見え具合に凜々しさも加えてくれます。
生地に張りがあるので、結んだタイにも立体感が備わっています。首周りにめりはりが出ているおかげで、フェイスラインが「スッキリ見え」するのも、このブラウスの魅力です。
色はライトブルーとホワイトの2色から選べます。コットンの風合いを引き立てるホワイトは清潔感も印象づけてくれそう。色が落ちたさわやかブルーのデニムパンツとは申し分のないカラーマッチです。
着回しオプションの多さも重宝感を高めています。ライトブルーは淡いトーンだから、デニムパンツと合わせれば、クールな着映えに。上からジャケットを羽織っても、清涼感を醸し出してくれそうです。
こちらは「ガリャルダガランテ」が得意とする、前後でスイッチして着られるブラウスです。ボウタイを背中側に回せば、バックショットがドラマティックに。裾が横一直線ではなく、ラウンドにカットしてあるので、前後どちらで着ても様になる重宝ブラウスです。
やや太めに仕立てたシャツ袖は華奢感を引き出してくれます。袖まくり姿もしっかり決まる袖フォルム。1枚で着ても、着映えがシャープなのは、ゆったりめシルエットのおかげ。着丈が長めだから、裾をウエストアウトすれば、きれいな縦落ち感が生まれます。
デニムパンツにこのようなボウタイブラウスを合わせるだけで、上品さとストリート感の両方のいいとこ取りができるわけです。ヒールのパンプスを合わせて、さらにエレガントに整える着こなしも選べる、着回しレパートリーの多いデニムパンツです。
【RE/DONE】デニム ¥58,300
デニムトレンドが勢いづく2022年は、デニムに新アイデアや大胆ディテールを迎えて、鮮度を高めたいところ。先のボウタイブラウスをご紹介したルックでキーアイテムになっていたデニムパンツは、実はリメイクデニムです。「Levi’s(リーバイス)」のヴィンテージジーンズに手を加えて、新たなデニムアイテムを制作している、ロサンゼルス発のブランド「RE/DONE(リダン)」の品です。
「リダン」は2014年に創業者コンビのSean Barron(ショーン・バロン)とJamie Mazur(ジェイミー・マズール)が立ち上げました。「リーバイス」が公認する、唯一のリメイクブランドとして知られています。
もともとLAのセレブリティーから人気が出たというブランドだけに、一般的なリメイクデニムとはレベル違いの上質感が持ち味。念入りな製法が特別感を引き出しています。ちょっとしたパッチワーク程度ではなく、縫い目をほどいてバラバラに解体したうえで、再構築を試みるという凝りようです。
着古されたデニムならではのしなやかな風合いを生かして、体になじむシルエットに仕上げています。ストレッチ加工を施していないのに、デニム特有のごわつきを感じないのは、年月を経た素材ならでは。世界に1着しかないオンリーワンの価値は、愛着もまとわせてくれます。
いったん世に出たデニムを無駄にしないリメイクはサステナビリティーの点からも支持が広がっています。両脚の内側に、色が濃いめの生地を配してあるので、脚が細く見える造りです。まるで影のような印象だから、レッグラインがキリッと引き締まって見える仕掛け。センタープリーツとの相乗効果で、いっそうスレンダーに映ります。
そんなドラマ性を宿したデニムに合わせたいトップスはやはり見た目に動きのあるタイプ。写真のように、スリーブにスリットを深く入れてあり、腕を出せるようになっているという、ややトリッキーな構造の新感覚トップスは絶好のパートナーです。
一見、マントのような見え具合の、優美なシルエットが目を惹きます。まるでジャケットを肩掛けしたときのような着映えです。でも、ジャケットほどには重たくないうえ、かさばりもしないから、ずっとライトに着られます。
シャツやブラウスを、ジャケットと融け合わせたかのような「ハイブリッド」型の新顔ウエアが支持を広げています。自在の着回しが可能な「いいとこ取り」の使い勝手が人気の理由。こちらのブラウスもそういったユーティリティー(自由自在)系のアイテムです。
エレガントな印象が濃いので、切りっぱなしのデニムパンツに気品を寄り添わせてくれる効果も期待できます。極上のテイストミックスがかないます。ゴールドのチェーンネックレスを添えて、さらに華やかさをプラスするのも好判断のスタイリングです。
身頃はすっきりしたシルエットなのに、両袖が張り出して見えるおかげで、自然な着やせ効果が生まれています。袖下のスリットに腕を通すとマント風の着映え。本来の袖口に腕を通せば、ブラウスに様変わり。1枚で2通りの使い分けができるから、着回しパターンも2倍です。
ポリエステル100%のジャージ素材だから、伸びやかな着心地。1日ずっと着ていても、くたびれないイージーフィットのトップスです。色は使いやすいネイビー1色です。洗い加工を施したデニムパンツに引き合わせると、ブルーの濃淡がきれいなコントラストを描き出します。しっかりと濃いネイビーなので、お仕事ルックにも組み込めそう。出番を選ばないお役立ちトップスとして、洗練された品格が備わるのもいいところです。
【RE/DONE】デニム ¥58,300
【Gabriela Artigas】ネックレス ¥57,200
【Gabriela Artigas】リング ¥50,600
同じデニムパンツでのトップス次第でムードが変わります。今度は袖にボリュームを持たせる「袖コンシャス」のニットでやさしげムードをプラスしたスタイリングの提案です。袖コンシャスのディテールはトップスに華やぎをもたらします。デニムパンツルックにもエレガンスをプラス。きれいめカジュアルに整えられます。
こちらのプルオーバーはふんわりと膨らんだパフスリーブが愛らしく朗らか。両袖のボリュームが生きて、華奢見えがかないました。ポリエステル100%のニットだから、伸縮性に富んでいて、ストレスフリーの着心地です。
目の覚めるように鮮やかなブルーが涼やかでさわやか。デニムパンツと合わせれば、濃淡がきれいなブルーの「トーン・オン・トーン」の装いにまとまります。グリーンと並んで、ナチュラル感の高いマリンブルーがトレンドカラーになる春夏シーズンにぴったりの色合わせです。
腕さばきが楽なのは、肩周りをゆったりさせたラグラン袖だから、ボリュームスリーブがいっそうのどかに映っています。あえてギャザーやタックを省いて、布のドレープ感を引き出しました。適度なたるみがブルーの陰影を濃くしています。1枚で着ても、しっかり表情が出る理由です。シックな印象のブラックも用意されています。
ややコンパクトなフォルムと袖のふくらみとの相乗効果で、ボディラインがほっそり見せてくれます。両袖はひじが隠れるぐらいの半端袖にとどめ、パフスリーブのキュート感を際立たせました。ひじから先の素肌が出るから、上手に両袖をまくり上げたかのような凜々しいムードが漂っています。
ふくらんだ袖の効果で、デニムパンツと合わせたときに、レッグラインがすっきり見えするのもうれしいメリットです。トップスをウエストにインして袖だけを印象付ける小技も。ボディをコンパクトに演出することによって、脚長シルエットを強調できます。
【RE/DONE】デニム ¥58,300
定番的な存在のデニムパンツにも、実はトレンドがあります。今度の春夏にはワイド幅のバギータイプが復活する見込み。足首を見せて、スレンダーなイメージを引き立てる穿き方が上策です。
こちらのバギーパンツは、程々のウォッシュ感があり、明るいブルーが癖のない色味。主張が強すぎないから、着回しが楽なブルーです。
1970年代の国産デニムを復刻した、リメイク感を帯びた生地です。懐かしげな風合いのオールドデニムを思わせる質感がこなれムードを寄り添わせました。
ワイドストレートのシルエットは、とにかく脚さばきが楽。キビキビ歩きたい今の気分にピッタリです。サイドに切り替えを入れてあるから、きれいなフレア加減に仕上がりました。裾に向かって広がりが出ていて、ウエストのくびれが引き立つ仕掛けです。
裾は自然なカットオフ仕上げで、気取らない印象に。ノーブルな表情のレディーライク靴で合わせれば、上々のずれ感を醸し出せます。
裾に向かって広がるシルエットを生かすには、トップスはコンパクトめの形を選んで。こちらのようなフィット感あるタイプはルーズに見えにくいから、デニムルックを大人っぽく整えるのに役立ちます。
ニットトップスは人気の高止まりが続いています。理由は自然なフィット感。この春夏に向けては、「セカンドスキン」と呼ばれる、ボディラインをきれいに描き出す、コンパクトめのタイプが支持を広げそうです。
こちらのカットソーは、デコルテが広めに開いたカッティングがバレリーナライクな着映え。首から胸元にかけてスペースがあるおかげで、顔が小さく見える効果も生まれています。タイトめのシルエットだから、ボトムスはワイドタイプを選ぶと、上半身とのコントラストがくっきり。めりはりが際立ち、ボディの細感を引き出せます。
自然と体になじむのはリブ編みのカットソーだから。でも、肉厚なリブのおかげで、体のラインを拾いにくくなっています。手洗いOKの使い勝手はヘビーユースしたい気持ちに応えてくれます。色はどちらもコーディネートに苦労しないブラックとベージュの2色から選べます。写真で分かる通り、ブラックは見た目の引き締め効果が抜群です。
適度なヘルシー寄りの素肌見せは春夏に盛り上がりが確実な新トレンドです。襟ぐりが深めのUネックだから、首周りにネックレスやスカーフを添えるアレンジもなじみます。カーディガンやジャケットなどを羽織ったときのレイヤードルックも程よく肌がのぞいて様になります。
ネックラインが伸びやかなので、抜け感が漂います。背中側の襟ぐりも深めで、バックシルエットにも大人のヘルシーセクシー感を演出できます。ボディにしなやかフィットするトップスは、バギーデニムとのコーデでめりはりを際立たせてくれます。
【MODERN WEAVING】ネックレス ¥26,400
(c)Rie Miyata
春夏に向けて相次いで提案されているスタイリングに、ブラトップやキャミソールを外側に重ねるレイヤードがあります。「ランジェリーアウト」と呼ばれる手法です。こちらはストライプのキャミソールを、白ハイネックの上からオン。ワイドシルエットのデニムパンツを色めかせました。ボアジャケットは肩落としでプレイフルに演出。デニムパンツは割と見慣れたボトムスだけに、トップスで意外感を押し出すコーデがありきたりの印象を遠ざけてくれるのが賢いコーデです。
デニムパンツは誰もが持っているだけに、リメイクで鮮度を高めたり、バギーシルエットで動きを出したりといったアレンジが欠かせません。トップスの選び方や着こなし次第で、何通りもの着回しパターンを組み立てられるのも、頼りになるデニムパンツがあればこそ。新感覚のトップス×デニムで気分が弾むスタイリングを楽しんでみてくださいね。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。