FASHION JOURNALIST
RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.90
ほのかな光沢感を宿していて、ドレープがきれいに映る「とろみシャツ」は多彩なシーンで着回しやすい万能系アイテムです。上品な表情を醸し出すから、お仕事ルックもOK。休日コーディネートの格上げにも役立ちます。布地そのものにムードがあるので、春夏に1枚トップスで過ごせるのは、とろみシャツならではのよさ。デニムパンツにもエレガントスカートにもマッチするという、相性の幅広さは着こなしバリエーションを拡張してくれます。今回は「ガリャルダガランテ」の厳選とろみシャツと、様々なボトムスを組み合わせた着こなしシミュレーションをご紹介します。
そもそも、とろみシャツの魅力は、格上感を帯びた、表情の深さにあります。自然なつやめきを宿しているから、ドレープが優美に映り、こなれた見え加減に。だから、着こなすにあたっては、きちんと整えすぎず、少し崩した感じのスタイリングが効果的です。
こちらのシャツはシルク調の光沢が印象的なサテン生地で仕立てました。きれいな落ち感が備わっているのは、とろみシャツならではの魅力。素材はポリエステル100%なので、自宅で手洗いできます。汗ばむ日にも着やすくなるイージーケアのシャツです。
サラサラとしたナチュラルな肌触りも、とろみシャツが広く支持される理由。軽やかな風合いだから、ボディに沿うような着心地です。生地にムードがあるので、シルエットはあえてミニマルな仕上がり。癖がないおかげで、シーンを選ばず、自在に着回せます。
シンプルな仕立てですが、ディテールには工夫がいろいろ。たとえば、袖丈はやや長めで、袖先のカフス部分も大きめ。だから、指先が華奢に映ります。裾はカッティングが横一直線ではないので、ウエストアウトした場合にも様になります。ボタンを上から1、2個開けたときに、デコルテがきれい見えするのも、リラックス気分で過ごしたい日に重宝するディテールです。
おすすめの裾アレンジは、正面だけをボトムスに収めて、残りはあふれさせるという、ゆるい雰囲気のウエストイン。正面はボトムスがフルレングスで見えるから、脚が長見え。残りの無造作に遊ばせた裾は、気負わないエフォートレス気分を醸し出してくれます。
かさばらないコンパクトなシルエットなので、ジャケットやカーディガンなどを重ねても、もたつきません。温度が定まりにくい春先のレイヤードに役立ちます。
ほどよくノーブルな艶感があり、カジュアルなボトムスと合わせても、品格を保ってもらえるから、デニムパンツの格上げにもうってつけです。
色は穏やかなベージュと上品なキャメルの2色から選べます。ベージュはやわらかいトーンのライトベージュ。キャメルは黄色みが控えめで、グレイッシュな色合いです。どちらもシャイニー度が抑え気味だから、お仕事ルックにもなじみます。
今回のパートナーに選んだストレートデニムは、股上が深く、ゆったりめのボーイズシルエット。美脚効果が期待できる伸びやかモデルです。後ろ側の太ももあたりには適度なたるみがあり、着やせイメージを引き出す効果を発揮しています。
しゃがんでも生地が突っ張らない理由は、伸縮性に富むコットン74%、ポリエステル24%、ポリウレタン2%の好バランスだから。「デニム離れ」したソフトな風合いです。洗いをかけて、古着トーンに整えたブルーが適度なユーズド感を醸し出しています。色味はさわやかなライトブルー。もちろん、自宅での手洗いOKです。
ボーイズシルエットでありながら、バギーほどにはワイドすぎない幅感は、着る人を選びません。着丈がしっかりあるので、ストンとした落ち感が出ています。
2003年にロサンゼルスでデビューした、プレミアムデニムの代名詞的なブランドがこの「YANUK(ヤヌーク)」です。ブランド名は創立者2人の名前を合わせてネーミング。以前から「ガリャルダガランテ」のごひいきブランドです。
LAらしいリラックス感を備えている点が「ヤヌーク」の持ち味。ナチュラルなフィット感も、シルエットを磨き抜いて、LAセレブに愛されてきたブランドならでは。
【YANUK】ボーイズストレートデニム/LEA/22SS ¥28,600BUY
【TONY BIANCO】ナローストラップサンダル ¥30,800
肌なじみのよいキャメルカラーのシャツは、上品なムードを演出してくれます。上半身がヌーディーな色合いでまとまるので、春夏のボトムスにはクールな表情のブルー系がお似合いです。
こちらのデニムパンツは裾を切りっぱなし風に仕上げたモデルです。なだらかに裾が広がるブーツカットのシルエットがレッグラインをすっきり見せてくれます。
ヴィンテージライクな色あせ加工が施してあり、穿き込んだ感じの着映えに。色は涼やかな、明るめのインディゴブルーです。ポケットにもさりげないダメージ処理を加え、ほどほどのユーズド感を帯びています。
「AGOLDE(エーゴールドイー)」はLA育ちのデニムブランドです。1989年にスタートし、「セブンフォーオールマンカインド」や「シチズンズ・オブ・ヒューマニティ」を立ち上げたことで有名な、プレミアムジーンズの先駆者、ジェローム・ダーハンがディレクションしています。
LAのユースカルチャーにインスパイアされたテイストが持ち味。ダメージ加工に強みを持っています。上質なデニム生地ならではのフィット感も「AGOLDE」の特別な価値。今回のモデルでも自然なこなれ感を引き出しています。
この極上デニムパンツを隠してしまうのはもったいないから、シャツの片側半分だけをウエストインして、左右アシンメトリーな着映えに。型にはまらない、くつろぎとヒッピー気分が同居するコーデに仕上がりました。
【AGOLDE】ブーツカットオフデニム ¥30,800BUY
【MODERN WEAVING】ネックレス ¥26,400
【MODERN WEAVING】バッグ ¥42,900
とろみシャツは落ち感がきれいだから、縦長シルエットを引き立てる効果が大。スレンダーなたたずまいのベイカーパンツで合わせれば、さらに細見えがかないます。
ライトグレーのパンツを選んで、色味の近い上下でそろえる「トーン・オン・トーン」のコーデにまとめました。カラートーンをそろえたので、全体がアルファベットの「I」の字ライクなほっそりシルエットに映っています。
ソフトな質感の100%ポリエステル素材で仕立ててあるから、さわやかな穿き心地。紫外線防止をはじめ、接触冷感や吸水速乾の機能も備えていて、蒸し暑い夏本番でも、不快感フリーで過ごせそう。手洗い可のイージーケアも夏の出番を増やしてくれます。
ワークパンツはダボついたタイプが少なくないのですが、こちらは幅が広すぎない、上品風味の「ほんのりワイド」。控えめの張り感が生地に備わっていて、上品シルエットをキープしてくれます。
色はライトグレーのほかに、黄みがかったカーキも用意されています。もともとワークウエアのベイカーパンツらしい色加減がシャツとのジェンダーレスな合わせになじみます。
ディテールでの工夫ポイントが裾のドローストリングスです。コードで絞って、裾シルエットを変えられる仕様。スラックス風にもジョガーパンツ風にもスイッチできます。大きめのサイドポケットはウエストからヒップのカバーに一役買ってくれそうです。
縦に細長いイメージを印象づけるには、シャツをフルにウエストアウトして。シャツの背中側の着丈が長めだから、横や斜めから見ても、きれいな落ち感が出ます。ヒール靴で合わせると、さらにシャープなレッグラインに。裾を絞ると、足首ゾーンが華奢見えします。
【TONY BIANCO】ナローストラップサンダル ¥30,800
同じとろみシャツでも、今度はミモレ丈スカートで合わせると、ぐっと大人っぽい着映えにシフト。着こなしのポイントはボタンはずしと裾アクションです。
2022年春夏は程よい素肌見せがトレンドに浮上しているから、シャツでも試してみたいところ。胸元を広めに開けて、デコルテをのぞかせる着方は、エフォートレスな雰囲気を演出。ネックレスやスカーフ使いも決まります。
裾のボタンを開けると、さらにリラクシングな表情が加わります。風が通って、汗抜けもよくなるから、夏に重宝するアレンジです。
シャツ裾のウエストアウトでも、いろいろなバリエーションが選べます。例えば、裾の片側だけをウエストインすると、裾アクションに変化を出せます。オールイン、オールアウトの場合でも、先に挙げたボタンはずしと組み合わせれば、アレンジの幅が広がります。
ミモレ(ふくらはぎ)丈スカートは、お仕事ルックにもなじみやすいミディ丈。オンとオフをまたいだ着こなしに役立ちます。ふくらはぎを程よく隠すレングスだから、脚が細見え。優美なシルエットを描き出します。
タイトやストレートのミモレ丈スカートはコンサバティブに映りがちですが、ぴったりし過ぎない程よくナローなラインなので、かしこまって見えにくいのが取り柄。とろみシャツとの合わせで、さらに優美なシルエットを描き出しました。
一見、シンプルに見えながら、実はディテールに凝ったスカートです。たとえば、裾はきれいに糸で始末しない「断ち切り」の仕上げ。気取らないノンシャラン気分を寄り添わせています。裾の糸には止めミシンをかけてあるから、スカート全体がほどける心配はありません。後ろ裾にはスリットが入っているので足裁きも楽々です。
色は着回しやすいブラックと、落ち着いた風情のグレイッシュなベージュ2色での展開です。どちらもストレッチを効かせたツイル素材で仕立ててあるので、ストレスフリーの着用感。自宅での手洗いOKのうれしい仕様です。表地は程よいストレッチが効いていて静かなつやめきを帯びています。とろみシャツの上下での異素材コントラストコーデがさらなる魅力を引き出しています。
【TONY BIANCO】ナローストラップサンダル ¥30,800
【MODERN WEAVING】ネックレス ¥38,500
同じとろみシャツのパートナーボトムスを、今度はタイトロングスカートにチェンジしてみました。一目で分かるほど、縦落ち感が強まっています。ほのかに透け感を帯びたメッシュ素材だから、ヘルシーでエアリーな雰囲気が備わりました。風が通るので、蒸し暑い夏場も足周りが涼やかです。
メッシュ素材は綿50%、レーヨン50%で、肌に張り付かないさらさらタイプです。伸縮性があるおかげで、タイトめシルエットでも締め付けられずに着られます。コーデに悩まないダークトーンのブラウンと、春夏トレンドカラーのグリーンという2色から選べます。スカートのウエストにはゴムを通してあるので、ストレスフリーな穿き心地です。
控えめな透け感がありますが、膝丈ペチスカートが付属していて、膝下から足が透ける仕掛けに。サイドにスリットが入っているので、足さばきも軽やか。とろみシャツとの組み合わせでエレガンスをキープしつつ、大人の肌見せが実現。エアリーな抜け感が漂います。
ほどほどのスポーティ感を帯びているのも、健やかさがテーマになる22年春夏の気分にマッチ。ロングタイトのよさは、何と言っても、スレンダーな着映えでしょう。シャツの裾をウエストアウトすれば、さらに縦に長い印象をアピールできます。
シャツ胸元のボタンを開けて、デコルテを演出しつつ、メッシュ越しのスカートからほんのり足を透けさせるという、節度ある肌見せは大人女性らしいアレンジになります。
【Proenza Schouler】フラットパデッドサンダル ¥71,500BUY
【GABRIELA ARTIGAS】リング ¥50,600
【MODERN WEAVING】ネックレス ¥38,500
(c)Rie Miyata
シャツを生かしたスタイリングでは、「スイート×クール」のコントラストを際立たせるのが上策です。こちらはピンクのシャツを片側だけウエストイン。ボトムスはレザースカートでクールさをミックス。クラッチ風に持ったパウダーピンクのバッグがシャツと同調。ダッドスニーカーでヘルシー感と若々しさを盛り込みました。
ベーシックさと華やぎをグッドバランスで同居させた、サテン系のとろみシャツがあれば、こんなにコーデの幅が広がります。シャツと好相性のボトムスも迎え入れて、春夏に重宝する出番オールマイティーのおしゃれに役立ててみませんか。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。