FASHION JOURNALIST
RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.93
春らしいおしゃれを楽しめるのが、ほのかに透ける「シアー素材」で仕立てた服です。チュールやオーガンジーに代表されるシアー素材はファンタジー感を醸し出しつつ、伸びやかなムードを呼び込むのに加え、自然な細見えも叶えてくれます。上品な雰囲気を帯びているから、カジュアルな装いに取り入れるだけで、格上げ効果を発揮。春から先の季節になじむ、控えめの肌見せにも役立ちそう。今回は「ガリャルダガランテ」から登場したシアー素材のシャツ、スカート、パンツを使った、大人向きのコーディネート術をご案内します。
前後でスイッチできる2WAY服は「ガリャルダガランテ」の得意技ですが、こちらはスカートとワンピースに切り換えられるという、新発想の2WAYウエアです。まずはスカートとして着るパターンのご紹介から始めましょう。
シアーなチュールスカートを、白のショート丈ボトムスに重ねました。脚の露出加減が気になりやすいショート丈ボトムスも、チュールスカートを重ねるだけで、ぐっと落ち着いた見え具合に。
ミニスカートにもショートパンツにも合わせやすい「プラスワン」のアイテムです。Tシャツなどのさっぱりしたアイテムに合わせるだけでムードが変わるから、ワードローブに1着迎えると、重宝すること請け合いです。
ナイロン100%の軽やかな質感がルックにも春らしい印象を添えてくれます。夏服はサッパリしした見え加減になりすぎるところがありますが、チュールスカートを重ねれば、ふんわりボリュームが華やぎを上乗せ。手抜きに見せないスタイリングです。
色はどちらもコーデに組み入れやすいカーキとネイビーの2色から選べます。カーキはイエローっぽさを帯びたブラウン寄りの色味。ネイビーはシアー素材となじんで、さわやかさが引き立ちます。柔らかいチュールなので、自宅で手洗い可能です。
ふくらはぎを隠すマキシ丈で着られるので、ショート丈ボトムスとの「丈違いレイヤード」が決まります。甘く見えにくい1枚仕立てだから、重ねるボトムスを選びません。トレンドのミニスカートやショートパンツをまとう際にも、サッと重ねるだけで、大人っぽさと節度が加わるから、安心とおしゃれ感がダブルで叶うアイテムです。
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次はワンピースとして着るパターンを見てみましょう。このネイビーは先ほどのカーキと同じチュールスカートです。まとう位置をぐっと引き上げるだけで、ワンピースに様変わりすることがこのルック写真でわかります。
好みの高さでホールドできるから、膝丈やミニ丈にアレンジして着られます。その日の気分や場面に応じて、自在に見え具合を調節できる使い勝手が魅力です。
別のワンピースに重ねて、ムードを変えるスタイリングにも生かせます。インディゴブルーのデニムパンツに重ねると、陰影を感じさせるブルー系のワントーンにまとめられます。
チュールに適度な張り感が備わっているので、素肌にまとわりつかず、エアリーな量感を生んでくれます。写真のように、タンクトップに重ねて、ボリュームのコントラストを際立たせると、細感が強まります。
普段着感の強いデニムパンツにも、ドラマティックな立体感が備わるのは、このチュール服のよさ。しかも、上からかぶるだけのワンタッチだから、「工夫要らず、手間要らず」です。
ワンピースとしてまとう際の着こなしのコツは、靴をムードメーカーに使うところ。ふくらはぎから下がのぞくので、靴を装いの方向づけに役立てて。デニムパンツにフェミニン靴で合わせて、ミックステイストに整えると、こなれ感が高まります。
細身のパンツに重ねると、ふんわりチュールとの「落差」が際立って、自然なスレンダー感を引き出せます。マニッシュなパンツと合わせれば、性別を感じさせないジェンダーレスの装いに。ロングのタイトスカートで合わせて、エレガントなムードに整える選択肢もあります。後ろ姿も透けるから、ヒップラインをその日の気分で好みで演出できるわけです。手持ちウエアの着回しバリエーションを一気に広げてもらえる「お助けアイテム」です。
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【GABRIELA ARTIGAS】チェーンネックレス ¥57,200 BUY
【GABRIELA ARTIGAS】リング ¥50,600
シアー生地で仕立てられたシャツは、ほのかにボディラインを透かして「華奢見せ」するのが上手なまとい方です。ブラトップ、タンクトップ、Tシャツなど、様々なトップスに重ねるコーデを組み立てられます。
このようなビッグシルエットのシャツなら、ボディラインを上品にぼかしてもらえます。マニッシュなフォルムなので、パンツとも好相性。シャツ裾をウエストアウトして、ラフに着こなせます。Tシャツを単独で着るのとは異なるおしゃれ感を醸し出せるのもうれしいところです。
ポリエステル50%にナイロン50%という、さわやかな肌触りの生地で仕立てました。適度な張りを持つオーガンジー素材だから、素肌に張り付かず、適度なスペースを保つ「付かず離れず」の着心地。洗いっぱなしのような風合いを引き出す特殊な加工を施してあるおかげで、ナチュラルな表情を帯びています。自宅での手洗いOKなのは、汗ばむ時期のヘビーローテーションに役立ちます。
たとえば、写真のようなアンクル丈のクロップドパンツと合わせると、軽快でスポーティな装いに。ヒップが隠れる着丈の長さが安心感の理由。「前後アシンメトリー」だから、きれいな落ち感が出ています。
背中側はチュニック丈なので、ヒップをカバーしてもらえます。それでいて、風がふいたときに揺らめいて、さらに装いをエアリーに演出してくれます。
全身を黒系でまとめたのに、軽やかに見えるのは。シアー素材ならではの魅力。暑苦しく見せたくないこれからのシーズンにうまく使いたいアイテムです。
【A.EMERY】レザーフラットサンダル ¥27,280BUY
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色はどちらも着こなしに苦労しないブラックとカーキを用意しました。控えめのつやめきを宿しているので、薄着の装いでもさびしく見えません。
深めのVネックが上品な抜け感を漂わせる、ボタンレスのスキッパーフロント。袖口に施されたボタンの締め加減で、袖のフィット感を調節できます。いっぱいに袖先を開けば、エアリーでエフォートレスな着映えに整います。
着こなしの選択肢に加えたいのは、ショートパンツに重ねるコンビネーション。子どもっぽく見えがちなショートパンツ姿に、チュールのはかなげトーンがニュアンスの豊かな表情を加えてくれます。ショートパンツの新しい着こなしアイデアです。
シアー素材を有効に使って、レイヤードのレパートリーを広げてみましょう。たとえば、タンクトップの色柄を変えてみたり、ロング丈のキャミソールワンピースの上から羽織ってみたり。レイヤード相手次第で幅広いシーンで出番があります。くるくると丸めてバッグに入れてもコンパクトにまとまるから、場面に応じて取り出し、サッと羽織って使えます。
【STUDIO AMELIA】サンダル ¥74,800
【SOPHIE BUHAI】リング ¥94,600
最後にご紹介するのは、シアー素材のパンツです。透ける演出はスカートのイメージが強いところがあるだけに、パンツで取り入れると、意外感を示せます。
ショートパンツにはためらいを覚えるけれど、初夏らしいボトムス景色を演出したいなら、ほんのり透けるパンツがおすすめ。適度な透け具合で、レッグラインをきれいに見せてくれます。
こちらのパンツはゆったりめシルエットで、伸びやかな着心地のイージーパンツ。伸縮性に富むうえ、ウエストがゴム仕様なので、着心地は楽ちん。でも、フェミニン感はしっかり備わっているという「いいとこ取り」のパンツです。
上品な透け感を帯びているから、普段着トップスに引き合わせるだけで、カジュアルルックを格上げ。夏に向けて出番が多くなるTシャツやカットソーの着回しに効果大です。
ワイドシルエットのおかげで、風が吹き通り、肌離れも上々。さわやかで伸びやかな時間を約束してくれそうです。シアー生地のパンツですが、しっかり裏地が当ててあるから、透けすぎる心配はご無用。裏地は膝上まであるので、膝から下だけがほのかに透け見える造りです。
色は清涼感の際立つホワイトと大人感の高いブラックの2色があります。どちらも控えめのつやめきを帯びていて、節度を保った質感。自宅での手洗いOKなのは、これからの季節に大助かりです。
気負わない雰囲気のボトムスには、同じようにくつろいだ風情のトップスを引き合わせて。こちらのカットソーはヴィンテージ加工を施して、自然なしわ感を漂わせています。深いサイドスリットと前後の丈違いシルエットが落ち感を引き出しました。
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【SOPHIE BUHAI】リング ¥94,600
(c)Rie Miyata
シアー素材を長くたなびかせれば、レッグラインが細く映ります。膝上丈のタイトスカートに、シアー素材のロングスカートを重ね着。膝から下に脚線がほんのり透けて、フェミニン感もアップ。足元をエンジニアブーツで合わせて、さらに華奢見せ。風に遊ぶシフォン素材が膝から下にかけて陰影を生んで、シャープな着映えを印象づけました。
シアー素材は、実は大人が上手に着こなしやすいマテリアルです。ほのかに透けて見える感じは、素肌をさらしてしまうよりも、かえって上品でエレガントなムード。透け感を生かしたサマーレイヤードコーデも多彩に楽しめるから、ボディラインが響く服にも1枚プラスしてみてください。「ガリャルダガランテ」の新作を生かして、初夏からの装いに、さっそく取り入れてみませんか。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。