FASHION JOURNALIST RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.104
FASHION JOURNALIST RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.104
秋冬の装いはニットの出番です。体を締め付けないリラックス感や、保温性の高い編み物ならではの温もり感がたまりません。気取らないカジュアル使いのイメージがあったニットですが、近ごろは華やかさや大人感もプラスした欲張り系ニットが人気です。色やシルエット、編み方などが多彩な着こなしを可能にするポイント。今回は海外のおしゃれスナップと「ガリャルダガランテ」の新作を通して、「大人ニット」の選び方をお伝えします。
織物の生地に比べて、ニットが優れているのは、オーバーサイズ気味にゆるっと着こなしやすい点です。編み地ならではのソフトな風合いが朗らかなシルエットを描き出してくれます。
パキッと鮮やかな赤がアイキャッチーなゆるニットが装いの主役です。ひじがたるみ、背中にも丸みを帯びた「着余り感」が愛らしい雰囲気を醸し出している理由。バッグもボトムスも赤系で合わせて、フェミニン濃度をアップ。小顔に見えているのは、髪までくるむ「真知子巻き」風スカーフ使いのおかげ。トレンドの「レトロかわいい」ムードに整えるお手軽技です。スカーフの選び方次第で、顔周りをあでやかにもエレガントにも整えられます。
秋冬ニットのキープレーヤーはやはりセーター。防寒パワーが頼もしいから、1枚で着たくなります。色や柄にインパクトのあるタイプなら、アウターをオフして、春先まで着続けられるので、コストパフォーマンスも上々です。
ざっくりした編み目を生かしたセーターは、気負わない雰囲気を帯びて、穏やかなキャラクターも感じさせてくれます。胸と袖先に配した、オレンジのカラーブロックがポジティブなアクセント。ネックラインの丸みを帯びたディテールが顔周りにソフトな印象を添えました。派手めの総柄パンツが目立ち過ぎていないのは、手編みニットがトーンダウンしてくれているからです。
無地のセーターを1枚で着る場合、ボトムスで華やぎを加えるスタイリングがおすすめです。上下のバランスが整って、こなれた見え具合にまとまります。逆に、柄入りセーターと無地ボトムスのコンビネーションも選択肢になります。
きれいなブルー系のニットセーターは、ゆったりめのシルエットが落ち着いたムードを漂わせています。花柄のスカートで合わせた、好バランスのお手本的なコーデ。ニットの色とスカートの色に共通色をもうけているところが全体がなじんで映る理由です。ハイブリッド系スカートのモード感と、セーターの大人かわいいムードが調和した、「モード×ムード」のミックススタイリングです。
ふわっとした風合い、自然な落ち感のニットウエアは気持ちまで落ち着かせてくれます。カシミヤ混紡ならではのやさしい肌あたりのVネックニットです。グレーのマニッシュなパンツで合わせて、上下で別ムードに。こなれ感が備わる着こなしです。
1枚で着ても、様になるのは、両袖に適度なボリュームを持たせているから。細見え効果も引き出す仕掛けです。毛78%、ポリエステル14%に、カシミヤを8%加えたウールカシミヤ素材だから、肌へのタッチがソフト。毛が抜けにくいイージーケアも重宝です。
色はフェミニンなピンクと、コーディネートが楽なモカの2色から選べます。ピンクは華やかさを示しつつも、大人顔の愛らしさを備えた色合い。顔周りも明るく見せてくれるから、アウターを羽織っても前を開けて着こなしたくなります。
セーターはかさばって見えがちですが、こちらはVネックがシャープな印象を生んでいて、ふんわり×シャープの好バランスが生まれました。やや広めのVカットがほのかな色香や抜け感も演出してくれます。
きれいな落ち感を宿しているので、そのままで十分に着映えがしますが、Vゾーンの素肌を生かしてネックレスの存在感をアピールしてもOK。レイヤードでインナーにシャツやボーダーTなどで表情を変えられます。
ボトムスを選ばないオールマイティーな使い勝手が魅力です。たとえば、ゆったりしたメンズ風パンツや普段使いのデニムボトムスで合わせてもおしゃれ見えします。質感の異なるつやめき生地やレザーとも好相性。ウールカシミヤならではの上質感が着こなしの幅を広げてくれます。
ニットウエアの出番が広がってきました。以前はカジュアルな印象がありましたが、今は様々なシーンで居場所を確保しつつあります。出番フリーで着こなすには、静かな主張を帯びたタイプがおすすめ。
編み地の畝(うね)が盛り上がったケーブル編みのニットは、適度な立体感が魅力。大きめのダイヤ柄がゆったりした雰囲気を生みつつ、自然な細感を引き出す頼もしいデザインです。
ニットの風合いが奥深いのは、編み糸にスラブ糸を用いているから。「スラブ(slab)」とは、「不ぞろい」という意味。あえて太さや質感を均一にしていないので、わずかな凸凹があり、のっぺらぼうに見えにくいわけです。
スラブ糸には着古したような風味が備わっているので、ちょっとしたヴィンテージ感も宿ります。新品で着ても、こなれた雰囲気や自然体のムードを醸し出しやすいのは、スラブ糸ならではの魅力です。
スラブ糸の表情を生かしやすいチャコールグレーとアイボリーの2色が用意されています。明るいアイボリーは着回しに便利。シックなチャコールグレーはオフィスでも浮きません。どちらも毛100%です。糸の節がランダムに出るスラブニットは、ざっくりした編み地となじみます。
肩周りが楽なラグランスリーブで編んであるので、引っかかりを感じにくい伸びやかな着心地。リラックスしたシルエットで仕上げられていて、レイヤードの際にもたつかないのも、このアイテムのよさです。
Vネックが深めだから、レイヤードも存分に楽しめます。重ね着した際にトップスの表情を最大限に生かせるのは、Vゾーンが広めだから。カットソー以外にも、シャツやブラウス、タートルネックに重ねても、Vネックのおかげですっきり見えが叶います。
ロングのタイトスカートで合わせて、「ロング×ロング」のコーデに仕上げれば、冬の着ぶくれとも無縁な縦長ルックに仕上がります。落ち感を生かしたスタイリングがおすすめです。
一般的なニットウエアは身頃や袖などのパーツを別々に編んでから、最後に縫い合わせて形を整えます。こうした「合体型」には肩周りをはじめ、縫い合わせ部分に違和感が生じがち。でも、全体を一度に編み上げる「ホールガーメント」なら、縫い目がないので、ナチュラルな立体感が生まれます。ごわつきや突っ張り感が少ないのも、ホールガーメントのよさ。ボディに寄り添ってもらえる感じの着心地です。
全体に「無理のない」シルエットが優美な印象をまとわせています。穏やかな曲線がボディを包んでいて、のどかな気分でまとえそうです。飽きのこない、シンプルなフォルムでありながら、ニット特有のふわっとしたソフトさも出ていて、リラックスした雰囲気を演出できます。
気負わないエフォートレス感が宿っているのは、袖にたっぷりのボリュームを持たせてあるから。立体的な曲線を自由に編み上げられるホールガーメントの強みを生かした造型です。
それぞれに異なるニュアンスを帯びた着こなしが叶うよう、レッド、ホワイト、モカの3色をそろえました。華やかさを備えつつ、ソフトな色調のレッド、癖がなく着回しやすいホワイト、シックで上品なモカと、いずれもニットの風合いを引き立てるカラーです。
しなやかな質感のラム(子羊)ウールを選びました。程よい厚みがあるので、1枚で着ても、存在感を発揮。ソフトな着心地としっかりした暖かみを備えているから、寒さが続く春先まで頼れます。素材はウール99%、ポリエステル1%です。
ネック周りにもきちんと高さがあるので、寒い日でもマフラーいらずで過ごせそう。編み地の視覚効果で、首周りがすっきり見えるのもうれしいディテールです。
両袖にボリュームがあるので、袖先を少したくし上げれば、ひじのあたりにたっぷりと「ニットだまり」ができるので、いっそう腕が細く見えます。裾も少したるませる「ブラウジング」を試せば、リラクシングな雰囲気が濃くなります。
ニットの魅力を実感するのは、寒さが本格化するこれからの季節。防寒はもちろんですが、鮮やかな色やゆったりしたシルエットを生かせば、装いに自分好みの表情を加えられます。シルエットはもちろん、糸や編み方次第で、見え具合もかなり異なります。「ウールカシミヤ」「ケーブル編み」「ホールガーメント」と多彩なバリエーションから、お気に入りの1着を見つけて、秋冬コーデの相棒に迎え入れてみませんか。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
Special Thanks!
大野ウィリアム桂充
フォトグラファーとしてアパレルや芸能を中心とした撮影を行なっており、現在6ブランドを担当。パリコレやNYコレクションのストリートスナップ撮影も行なっている。
Instagram : @wko_.16
HP : https://wkono16.wixsite.com/mysite-1