FASHION JOURNALIST RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.105
FASHION JOURNALIST RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.105
コートは冬ルックの主役級だけに、着る人のキャラクターを印象づけるアイテムでもあります。クラシックトレンドが勢いづく中、今年の冬は「上品リラックス」なコートが支持を集めそう。シンプルなシルエットでありながら、自然な落ち感でスレンダー見えが叶う、ひとひねりアリが決め手に。お仕事パンツやデニム、フェミニンスカートにもなじむ、自分流に着こなせるコートは長く着続けやすいサステナビリティー度も魅力です。海外のおしゃれスナップと「ガリャルダガランテ」の新作を参考に、品格とリラックス感が同居するスタイリングをキャッチしていきましょう。
コートの着方は1種類ではありません。本来のカッチリした着方を離れると、ローブ風にもドレスライクにもまとえます。お決まりの「コート」という役割をいったん忘れて、広い意味での「羽織り物」ととらえれば、着回しバリエーションが格段に広がります。
パンツスーツの上から、ベージュのトレンチコートをざっくり羽織りました。フロントを全開にしたのに加えて、ベルトも巻かず、ルーズに着こなしています。ゆるい感じで着ているのに、品格が崩れていないのは、色をニアトーンでまとめているから。オータムカラーならではの落ち着きが備わりました。どちらも白のTシャツとスニーカーで抜け感を添えているのも、パンツスーツを着崩す巧みなアレンジです。
上からバサッと羽織るだけで、しっかり格好が整うところも主役コートのよさです。普段着風の装いでも、上質なコートを羽織れば、すぐに出掛けられるので、時短メリットも。むしろ、気負わないウエアに重ねるほうが全体としての「こなれ感」がアップ。決め手はコートのクオリティーです。
オフタートルのセーターに、穿き込んだ風合いのデニムパンツという、デイリー仕様の上下。ラフなコンビネーションですが、上からヴィンテージ調のチェック柄コートをさらりと羽織って、ムードを格上げしました。さらに、チェーンバッグを肩に掛けて、エレガントな風情に。イージーな雰囲気の上下に、クラシカルなたたずまいのコートがかぶさって、エフォートレスな装いに仕上がりました。
全身を包み込むコートは、見た目が単調になりがちですが、ちょっとしたアレンジを加えるだけで、かさばり感を遠ざけられます。おすすめはレイヤード。着丈の違いを生かして、落ち感のきれいな着映えに仕上げるコーディネートが効果的です。
ふくらはぎに掛かるロング丈のコートなのに、重たく見えていないのは、着こなし技が利いているから。ミニ丈ボトムスの上から重ねて、着丈のずれ感を際立たせる「長短レイヤード」が軽やか見えの決め手。黒タイツを使って、丈違いを印象づけつつ、レッグラインを引き締めました。靴の爪先に、ウエアと同じ色を配して、脚を長く見せているのも上手な小技です。
スレンダーに映るチェスターコートはトレンチを超えるほどの勢いで支持を広げています。人気の理由は、冬ルックの大敵「着ぶくれ」を避けやすいから。シャープなスタイリングが叶うチェスターは、冬おしゃれの頼れる相棒アウターです。
縦落ちイメージが持ち味のチェスターには、すっきりした見栄具合のパンツがお似合い。コート姿が凛々しく仕上がります。もともと紳士服のチェスターだけに、パンツで合わせると、いっそうマニッシュな雰囲気に。だから、足元にはヒールのストラップサンダルを迎えて、フェミニン感を投入。伸びやかなエレガンスを薫らせました。
チェスターコートは面積が広いだけに、素材の上質感が欠かせません。こちらはカシミヤに匹敵するほどの風合いを持つ羊毛をメインに仕立てました。ナイロンを10%混ぜてあるので、しなやかで扱いやすくなっています。色はミントとブラックの2色から選べます。どちらも縦長のシルエットをきれいに映し出してくれる色です。
シンプルなフォルムを引き立てているのは、丁寧にフェルト化して仕上げたメルトン生地。保温性や重厚感を備えているのに加え、すっきりした質感。表面を起毛することによって、穏やかでソフトな風合いが生まれました。滑らかな生地感が上品なムードを演出してくれます。
オーソドックスなフォルムだから、着飽きることがなく、タイムレスで使えます。チェスターには「細身」のイメージがありますが、こちらは程よくゆとりをもたせてあるから、窮屈さを感じる心配はありません。
ワンボタンで自然に打ち合わせる仕立ては、リラクシングな雰囲気を醸し出します。袖口にダーツを入れて、袖にやや丸みを帯びさせてあるから、ほのかに朗らかなムード。気張った印象がないので、場面を選ばずにマルチシチュエーションで着やすいコートと言えるでしょう。
コートを着こなす際に意識したいのは「自然体」の見え加減です。失敗ルックにありがちなのは、コートが主張しすぎて、服に「着られた」ような見え方になってしまうケース。上手にまとうには、型にはまらないアレンジが肝心です。少し着崩すぐらいの気持ちで、気楽に羽織ると、こなれて映ります。
ストライプ柄のボウタイ・ブラウスに、インディゴブルーのデニムパンツという、きれいめ×カジュアルのコンビネーションです。その上からカシミヤ100%のロングコートを重ねて、テイストミックス整えました。
ボトムスがデニムなのに、きちんと上品見えしているのは、コート生地がカシミヤ100%だから。極上素材ならではの別格感が寄り添い、一生物の愛着コートになってくれそう。ロングコートでありながら、着心地が見た目よりずっと軽いのも、カシミヤのおかげ。もちろん、暖かさは極めつきです。
愛着アイテムを長く丁寧に着るのは、サステナビリティーに沿ったおしゃれとして広く支持を集めるようになってきました。時を超えてつきあうには、飽きの来ない色や形が大事です。カシミヤ100%の風合いを引き立てるネイビーとダークブラウンの2色は、癖が強くないので、ロングライフのパートナーにうってつけです。
正面のボタンを開けて着れば、レイヤードが印象的に決まります。背中側は裾にかけて、ボックスプリーツ状のタックを施してあるから、シャープな立体感が出ています。
着回しに役立てたいのは、共布のウエストベルトです。写真のようにはずして、ガウン風にまとえば、レイヤードが決まります。一方、きっちり巻いて、くびれを作り、シルエットにめりはりを出すのもおすすめのスタイリングです。
ベルトをゆるめに巻くとか、結ばずに垂らすといった、何種類ものレパートリーがあるから、真冬に続けて着る時期でも見た目の印象を変化させられます。結び目のこしらえ方も、きつく・ゆるく、大きく・小さくなど、いろいろなバリエーションが楽しめます。
ストライプボウタイシャツ ¥27,500
重たくてかさばるという、コートのネガティブなイメージを帳消しにするようなコートが「リバーショートコート」です。「リバー仕立て」というのは、2枚の生地を縫いつなげて、境目のない1枚の布に仕立てる技法のことです。
もともとの生地が2枚分なので、抜群のぬくもり。でも、しっかり縫い合わせてあるから、厚みは抑えられています。裏地なしでもフォルムが崩れず、熱がこもりにくいのも、リバーコートの魅力です。
今回のリバーショートコートは、ヒップが隠れるぐらいの着丈なので、体にまとわりつかず、着心地が軽やか。サッと動きやすいコートは、気分まで弾ませてくれます。
絶妙の着丈は、スタイリングのバランスが取りやすい点でもメリット大です。裾を遊ばせて、細めのボトムスで合わせれば、スレンダーな印象が引き立ちます。写真で分かる通り、タイトスカートとも好相性。ハイウエストのボトムスなら、一段と脚が長く見えます。
着こなしのコツは色を少しずらす合わせ方。ライトグレーのコートに白スカートを合わせ、トップスとブーツはベージュ系でそろえて、ニュアンスを帯びたカラーミックスに整えています。微妙に色味をずらすことによって、ナチュラルな雰囲気に。手持ちワードローブを生かしやすいコーデプランです。
カラーバリエーションは肌なじみのよいイエロー、シックに着られるブラック、ノーブル見えが叶うライトグレーの3種類を用意しました。いずれもマルチに着回しやすいカラートーンです。肩が少しだけ落ちたドロップショルダーなので、肩周りがつっぱらない、ゆったりした着心地。厚手のニットトップスに重ねても、ごわつきにくくなっています。
内側に着るトップス次第で、春にも着やすいロングシーズン仕様のコートです。秋も春も寒暖差が激しくなっている中、ほとんど通年で出番が見込めそうです。
【Demellier】バッグ ¥64,900
【NEBULONI E.】ワイドロングブーツ ¥97,900BUY
【SOPHIE BUHAI】ラージシェルリング ¥88,000
冬ルックで最も目立つポジションを任せられるコートがあれば、コーデに悩まず、サッと外に出られます。長くつきあいたくなる「相棒コート」の条件は、飾りすぎないシルエットと、へたりのこない上質素材、そして、ディテールへの目配り。「ガリャルダガランテ」の新作コートには、どの条件も兼ね備えたタイプがそろっているから、「次の10年」を伴走してもらえるタイムレスな1着に。そんな逸品に出会ってみませんか。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
Special Thanks!
大野ウィリアム桂充
フォトグラファーとしてアパレルや芸能を中心とした撮影を行なっており、現在6ブランドを担当。パリコレやNYコレクションのストリートスナップ撮影も行なっている。
Instagram : @wko_.16
HP : https://wkono16.wixsite.com/mysite-1