FASHION JOURNALIST RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.107
FASHION JOURNALIST RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.107
かさばって見えがちな冬の装いを、上品にすっきりと見せるスタイリングに、「ワントーン」があります。色をそろえることによって、気品やセンスが漂う着こなし技。単に色を統一するだけではなく、異なる素材やボリュームを組み合わせると、さらに趣深いルックに整えられます。今回は海外スナップと「ガリャルダガランテ」の新作から、冬にふさわしいワントーン・コーディネートの成功法則をお伝えします。
ワントーン・ルックでは選ぶ色次第で、装い全体のムードが決まります。やさしげ、知的、ポジティブなど、まずは狙うキャラクターイメージを決めて、コーディネートに取りかかりましょう。たとえば、ブルー系はクールで理知的な雰囲気が強まる色です。
シャツジャケットやボトムス、ロングコートをブルー系でまとめた、知的な印象の濃いスタイリングです。ワンピースの上から、シャツジャケットをオン。最後はレザー風コートを羽織ってまとめました。袖口からはニットトップスをあふれさせています。このように各ピースごとに素材をずらすことによって、複雑な風合いが響き合うレイヤードに。シャープな印象を引き出すブルーで統一して、きれいな縦長シルエットを際立たせました。
キャメル系でまとめると、レトロで上品な見え具合に仕上がります。性別を感じさせないジェンダーレスの装いにもまとまるから、使いこなしたいワントーン技です。
左の女性はチェック柄のジャケットに、センタープリーツ入りのダブル裾スラックスで合わせて、マニッシュなたたずまいに。ジャケット下に着込んだ襟付きウエアも同系色。さらに、ストレッチ素材のタートルネックでしなやかにレイヤード。襟のおかげでシャープな立体感が生まれます。ベルトをジャケットの上からきつめに巻いて、シルエットにめりはりを加えました。柄物をジャケットだけにとどめた好判断が利いています。
ブラックでまとめると、重たく見える気がしますが、風合いや素材感をずらせば、ダークに見えにくくなります。逆にエレガントさが際立つ装いを演出することができるので、上手に使いたいテクニックです。
たとえば、こちらのルックは、フェティッシュなムード。メッシュ仕立てのトップスから、ブラトップを透かし見せつつ、羽織り物の両袖も柄レースでセンシュアルに肌見せ。一方、膝丈スカートはエナメル素材でつやめかせました。レザーブーツは爪先をのぞかせています。それぞれの質感を引き立て合うような組み合わせの効果で、クールでモードなブラックトーンに整えているところが参考になります。
冬らしいワントーンといえば、オールホワイトで決まりでしょう。白ならではのクリーンさ、ピュア感、気高さなどを印象づけられる点で格別の着映えに。異素材のミックスで風合いをずらすと、奥行きの深いレイヤードにまとめられます。
白で統一しているのに、こちらのウィンターホワイトが単調に見えていないのは、デニムのブルゾンとボトムスのおかげ。トップスもメッシュ地のタートルネックを迎えて、質感をずらしました。
デニムパンツは深々と折り返した裾が目を引くから、脚が長く見える仕掛け。裾を大胆にロールアップしてあるので、ありきたりに見えない「技あり」のデニムです。裾のロールアップ部分は、糸でちゃんと留めてあるので、重みで落ちてくる心配はありません。シルエットはややワイドめのストレート。腰から裾までストンとした落ち感が生まれています。
こちらはセットアップのブルゾンが用意されています。同じ綿100%の素材。どちらもワンウォッシュしてあるから、自然体ムードで着こなせます。ブルゾンは着丈が短めで、コンパクトな上半身を切り出してくれます。程よいボリュームスリーブになっていて、立体的なシルエットを演出。パンツと合わせて着れば、デニムっぽすぎないさじ加減のきれいめセットアップに仕上がります。
色はさわやかでクリーンなホワイトと、ベーシックで上品なネイビーの2色から選べます。上下ともに自宅での手洗いOKです。
セットアップの上から羽織ったのは、毛足が長めのシャギー素材で仕立てたチェスターコートです。一般的なチェスターは紳士服に由来するだけに、ややマニッシュで硬質な雰囲気が漂いますが、こちらはやわらかい風合いが生きて、やさしげムードを帯びています。
見るからに質感がソフトな理由は、表地の素材として羊毛60%に加え、モヘヤを30%も使っているから(残り10%はナイロン)。エクリュとカーキの2色を選んだのも、この風合いを最大限に引き出せる色だからです。
サイズ感はやや大きめなので、窮屈さを感じることなく、バサッと羽織れます。フロントを開けて着ても、全体の量感がしっかりあるので、優雅な見え具合に。写真の通り、レイヤードも決まります。
ノーブルな品格感をまとえるコートだから、あえてカジュアル寄りのウエアに重ねるのがおすすめのスタイリング。気負わないムードが生まれて、こなれた印象に整えられます。
白の場合、オールホワイトでまとめるほかにも、黒×白の鉄板コンビネーションや、ブルー系とのコントラスト見せもコーディネートの有力候補に。カーキもホワイトや黒、ベージュ・ブラウン系との相性がよく、合わせて着る「相棒ウエア」を選びません。お仕事にもデイリーにも着回しやすいから、自然と出番が増える、冬の常連アウターになってくれそうです。
黒はスタイリッシュにもクールにも見せやすい、オールマイティーな色です。今のおしゃれトレンドは、フェミニンさと強さを兼ね備えた女性像が主役。タフでしなやかな二面性を示すうえでも、ブラックは絶好のチョイスです。
着こなしのポイントは異なる素材感をクロスオーバーさせるアレンジ。たとえば、ほんのり透けるシアー素材のトップスに、きちんと感を備えたジャケットを重ねるようなレイヤードは、複数のムードをまとえる着方。これから徐々に増えてきそうなお呼ばれ系イベントにもなじむ装いです。
シアーなチュール素材で仕立てたクルーネックのカットソーは、ジャケットを重ねるのにうってつけの上出来トップス。ナイロン100%のニット素材なのに、ブラウスのように滑らかな着心地。素肌に張り付かないドライタッチなので、シーズンをまたいで、さわやかに着続けられます。
色はシックなブラックと、クリーンなホワイトの2色が用意されています。どちらもレイヤードしやすいモノトーンだから、自在に生かせる「名脇役」に。ネックゾーンで邪魔になりにくいクルーネックのおかげで、コンパクトなシルエットにまとまるのも、このカットソーのいいところです。自宅での手洗い可なので、ヘビーローテーションの期待にもしっかりこたえてくれます。
格上のニットを提案する「La nature linge(ラ ナチュール ラーンジュ)」ブランドのアイテムです。ランジェリーの次に身近なウエアといえるインナーは質感が肝心。着る人のイメージまで左右するキーピースと言えるでしょう。1枚で着ても、羽織り物を重ねてもきちんと上質感を印象づけてくれる、頼もしいインナーラインが生まれました。
カットソーに重ねたのは、裾のペプラム(ラッフル風の裾ディテール)がエレガントなスリーブレスジャケットです。ジレ人気が勢いづく中、レディーライクなペプラムシルエットもリバイバル。ほのかに裾がフレアになったペプラムの効果で品格が備わって映り、自然な華やぎもまとわせています。
厚手の肩パットを入れたパワーショルダーは、こびないキャラクターを醸し出す、オントレンドの演出で、モードなディテールです。ヒットを先取りしたい気分に誘われます。
表地は羊毛100%で、本格仕立てのジャケットらしさが薫ります。適度な張り感があって、きれいなフォルムをキープしてもらえるツイル素材で仕立ててあります。どちらもワントーンで着やすいベージュとブラックの2色での提案です。
セットアップ仕様になるのはベルトレスのストレートパンツ。ジャケットと同じ生地で仕立ててあり、スーツ使いにも申し分ありません。お仕事スーツとしてもきれいめカジュアルとしても重宝なコンビネーションです。さらに、前後にセンタープレスを施してあるおかげで、折り目正しい装いに整えられます。
それでいながら、楽に着やすいサイドファスナー付きでストレスフリーな着心地を約束してくれます。すっきりとしたやや幅広のストレートシルエットなので、どんなトップスや羽織り物とも好相性を発揮。脚線がスレンダーに映る効果も期待できそうです。
【La nature linge】シアークルーネックトップス ¥14,300 BUY
【Whiting&Davis】メタルメッシュポシェット ¥29,700 BUY
白や黒などのワントーンは、割とシャープではっきりした印象を生みますが、逆にグレージュやブラウンなどを使えば、ニュアンスを帯びた雰囲気にまとめられます。着こなしのコツは完全に同じ色でそろえないで、少しずつ微妙に色合いをずらしたアイテムを組み合わせて、ワントーン風の見え具合にまとめるところです。
こちらのプルオーバー・ニットトップスはグレージュのあいまいな色味が穏やかなムードを寄り添わせています。少しトーンが濃いパンツとのマリアージュで、一段とこなれた印象にまとまりました。この程度のずらし加減がグッドセンスを感じさせます。カラーバリエーションはホワイト、ブラック、オレンジも用意されています。
実は以前から「ガリャルダガランテ」で定評のある人気アイテムの今季バージョンです。人気の理由は着回し力の高さ。癖が強くないから、手持ちワードローブとマルチに組み合わせられます。
タートルネックやハイネックほどには襟が高くないボトルネックも使い勝手がよい理由。ネックにピタッと接しすぎないので、レイヤードも自分好みに組み立てられます。
毛100%の素材を使って、縫い目の出ないホールガーメント方式で編み上げてあります。縫い目がないホールガーメントだから、肩で引っかかりを感じることもなく、伸びやかに着られます。自宅での手洗いOKです。
かさばって見えないのに、どこかのどかで懐かしげな、さりげないボリューム感が備わっています。スリーブにはややゆとりがあり、ニットウエアらしいくつろぎムードも漂う演出。サイドスリットを深めに切れ込ませてあるので、正面だけといったウエストインもしやすい造りです。裾をウエストアウトすれば、広がりが出て、腰から下がスレンダーに映ります。
落ち着いたブラウン系は装いの「まとめ役」にうってつけ。ベージュやカーキ系のトップスを引き合わせれば、少しずつ色合いをずらした「トーン・オン・トーン」の趣深いコーディネートに役立ちます。
【FETICO】2WAYオールインワン ¥57,200 BUY
【2.718】エンベロープハンドバッグ ¥30,800 BUY
【NEBULONI E.】Tストラップサンダル ¥53,900 BUY
沈んだ印象にまとまりがちな冬ルックも、ワントーンを取り入れれば、くすみ感や野暮ったさとは無縁のスタイリングに仕上がります。きれいなそろい方が「おしゃれに手を抜かない人」というイメージも引き出してくれるから、ワントーンは大事な集まりでも頼りになります。ちょっとだけトーンをずらしたり、差し色を投入したりといったバリエーションも効果大。「ガリャルダガランテ」の新作を通して、冬の着こなしをワントーン・マジックでスマートに演出してみませんか。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
Special Thanks!
大野ウィリアム桂充
フォトグラファーとしてアパレルや芸能を中心とした撮影を行なっており、現在6ブランドを担当。パリコレやNYコレクションのストリートスナップ撮影も行なっている。
Instagram : @wko_.16
HP : https://wkono16.wixsite.com/mysite-1