FASHION JOURNALIST RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.108
FASHION JOURNALIST RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.108
ほのかに素肌が透け見えるシアー素材は、真冬にも重宝されるようになってきました。人気を後押しするのは、年間を通じてウエアを着回す「シーズンレス」の流れ。春夏のイメージが強かったシアー服を、あえて冬に取り入れることによって、抜け感やフェミニンさを印象づけられます。冬に悩ましい着ぶくれとも縁を切れるから、スタイリングに生かす価値大。海外のおしゃれスナップと「ガリャルダガランテ」の新作ルックから、「冬シアー」の着こなしメソッドをキャッチしていきましょう。
透ける素材の使いどころとしては、これまではトップス袖やボトムス裾が多かったのですが、近ごろはアウターに用いる提案も登場しています。薄く軽やかなライトアウターを仕立てられるので、重たく見えにくいのが長所です。
ベージュのシアーコートをハイネックセーターの上から重ねて羽織りました。セーターが透けて、立体感が引き立っています。シアー素材が引き出すほっそりイメージが着ぶくれ感を遠ざける効果を発揮。アイボリーやクリーム系の近いトーンでまとめて、穏やかなムードに。足元にはゴツめのシューズを迎えて、やさしげな雰囲気を際立たせました。
スカートの裾だけを透けさせる演出は以前からありました。ロングスカートの重たさをそぎ、適度なセンシュアル(官能的)を漂わせるのに効果的な使い方です。透け加減を控えめに抑えて、ダークミステリアスに仕上げるという新しい裾景色も提案されています。
全身をブラックでまとめた、シックなたたずまい。つやめきを帯びたスカートはシアー素材で仕立ててありますが、透け度合いは低いから、落ち着きは損なわれていません。たっぷりと生地を使ったスカートだから、布が重なり合って、透け感はほんのり。大人ならではの節度を保ったシアーの取り入れ方です。
新しいボディコンシャスが支持を広げ始めました。自分の体を肯定的にとらえる「ボディポジティブ」の意識が背景にあります。こうした流れを受けて、素肌見せもバリエーションが多彩に。デコルテ周りも選択肢に加わってきました。
華やかなドレスは胸元がシアー。ようやく現実味を帯び始めた「アフター・コロナ」を見越して、パーティ仕様のドレスを「普段使い」する着こなしも広まりつつあります。素肌見せを取り入れれば、グラマラス系ドレスでもしなやかなヘルシー感がアップ。メタリックのパッファー(ふわもこ)アウターを重ねたうえ、足元はゴツめブーツで、ムードをずらした「はずし」のコーディネートです。
シアーと言っても、薄手の透ける素材ばかりではありません。たとえば、網目のゆったりしたニットメッシュ生地で仕立てたウエアは見るからに伸びやかな表情。素肌の上からじかに着るのではなく、タンクトップやTシャツに重ねれば、素肌が見えすぎる心配フリーです。
こちらのコードメッシュニットは、四角いメッシュの編み柄がアートライクな雰囲気をまとわせています。正方形の幾何学模様風モチーフがクールで知的なイメージも寄り添わせるニットトップス。「ニット=ほっこり」の常識を崩すアイテムです。
透かし編みのおかげで、かさばって見えにくいのは、ニットウエアでは異例の見え具合。タンクトップに重ねれば、程よい素肌見せがかないます。レイヤード相手を差し替えることによって、シーズンを超えた着回しに役立つ点でも重宝です。
それぞれ色の異なる5種類のキッドモヘヤ糸を組み合わせてあるので、糸自体が深みを帯びています。色はブルーとピンクベージュの2色。写真で分かる通り、ブルー味が強すぎない、ミックス感のあるブルー系トーンだから、スタイリングの選択肢が広くなっています。ピンクベージュも大人感を宿した上品な色味。「甘さ控えめ」で着こなせます。
ニットの素材は上質な毛糸の代表的なモヘヤを55%と、半分以上も使用。チクチクしにくいソフトな肌当たりを実現しました。残りはナイロン30%、毛15%で、やさしい着心地に整えています。
格子の大きなメッシュがざくざく感を引き出していて、気負わないキャラクターを印象づけてくれます。隙間からのぞく、下に着たトップスとのカラーコンビネーションを生かして、様々なテイストに寄せる着回しが可能です。白系トップスを選べば、さわやかでクリーンな雰囲気に仕上がります。
キャミソールやワンピースの上からバサッと重ねるスタイリングは、手持ちウエアから別のムードを引き出してくれそう。ドレッシーな服の「普段使い」にも役立ちます。ブラトップやスイムウエアといった、単体では着にくいスポーティ系アイテムの出番も増やせます。
チュール系素材のイメージが強かった透かし見せ演出ですが、新しい表現はニットウエアにも広がってきました。ニットでシアーを生かすメリットはナチュラルな着心地。素肌に沿うニットの特性も、自然体の着こなしに導いてくれます。
細い糸で編み上げたコンパクトでさらりとしたタートルネック・トップスは、やわらかくボディを包みます。ニットならではの伸縮性で肌になじむ感覚は「セカンドスキン(第2の皮膚)」と呼ばれ、新たな着心地が支持を広げています。程よいフィット感に長めの袖丈が冬のレイヤードスタイルにも重宝すること請け合い。色はオフホワイトとベージュの2色があります。
タートルネックには秋冬のイメージがありますが、シアー素材のタイプは、オールシーズンで着られます。季節の変わり目に悩ましい、微妙な温度調節にも便利。タートル部分はやさしく首に沿うから、リラクシングな着心地です。
ぴったり系ニットはボディラインをきれいに描き出してくれます。透かしディテールがさらに細感を引き出す仕掛け。ジャケットやカーディガンを重ねると、シャツやブラウスよりもこなれた風情に整います。体の線をあまり出したくないときにも使えるスタイリングです。
今のトレンドは、シアーウエアの通年使いを推しています。春夏はタンクトップやTシャツにオン。秋冬は羽織り物を重ねて。秋冬も保温希望の高いインナーと組み合わせれば、アウターをかさばらせずに済みます。素肌見せを秋冬にも楽しみやすいアレンジです。
トップスがスレンダー感を印象づけてくれるから、ボトムスでボリュームを出す「めりはりコーディネート」を選べます。あえてケーブル編みの厚手スカートをチョイスして、量感と質感のダブルでコントラストを際立たせた自然体のボディコンシャスコーデに仕上がりました。
シアーなトップスは、ほんのりとフェミニン感を漂わせるので、ジェンダーミックスの着こなしに役立ちます。たとえば、ボトムスはカーブ(曲線)シルエットがアイキャッチーなチノパンツとの合わせ。コンパクトなトップスとワイドめのパンツが装いに朗らかなリズムを醸し出しています。
チノパンツは割と見慣れたボトムスですが、こちらのカービーチノは立体的なシルエットが「ありきたり感」を遠ざけています。丸みを帯びたコクーン形がワークウエア風味とたおやかさを同居させました。フォルムに「味」があるので、トップスはこのようなコンパクトなシアータイプでフェミニンさを投入して。
ほのかに透けるシアートップスをカジュアルなパンツに合わせることで、互いのよさが引き立つ仕掛け。キャミソール系の上に重ねると、控えめなセンシュアリティー(官能性)が薫ります。デコルテ周りだけ素肌を透かし見せるのが大人ならではの上手な肌透かし術。ジェンダーミックス感が引き立つので、シアートップスはボーイッシュなパンツに好相性を発揮してくれます。
さらに、小物類でエレガンスを寄り添わせて大人感をアピール。ウエストの細いベルトできちんと感を演出。バッグと靴は白系でそろえて、品格ムードを醸し出しました。
【PIPPICHIC】ポインテッドトゥパンプス ¥35,200BUY
冬のシアールックを賢くまとめるコツは、厚手素材との組み合わせです。透け感が際立って、気負わないこなれムードに。シアーアイテムを1点、冬ルックに投入するだけで、着ぶくれとは無縁のコーディネートが叶います。シーズンレスに着続けやすい重宝ウエアだから、「ガリャルダガランテ」の新作を迎えて、着こなしレパートリーをいっそう豊かにしてみてくださいね。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
Special Thanks!
大野ウィリアム桂充
フォトグラファーとしてアパレルや芸能を中心とした撮影を行なっており、現在6ブランドを担当。パリコレやNYコレクションのストリートスナップ撮影も行なっている。
Instagram : @wko_.16
HP : https://wkono16.wixsite.com/mysite-1