FASHION JOURNALIST RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.112
FASHION JOURNALIST RIE MIYATA
TREND TIPS Vol.112
冬から春にかけてのアイコン的アウターのトレンチコートですが、実はかなり進化が起きています。武骨さやカッチリ感が持ち味だったトレンチの常識をひっくり返すような新シルエットが登場。素材やスタイリングもアップデートが加速。春先は肌寒い日が続くから、トレンチは手放せない「守り神」的な存在。今回は海外のおしゃれスナップと、「ガリャルダガランテ」の新作ルックから、進化形トレンチの着こなし方をご案内します。
トレンチコートを粋に着こなすには、内側に着るウエアが決め手となります。トレンチには特有の武骨さがあるので、そのイメージを裏切るようなテイストで合わせると、型にはまらない見え具合に。ちょっといたずらっぽいアイテムを選べば、さらにこなれ感が出ます。
ユニークなストライプシャツとパンツのセットアップが目を引くルック。その上からトレンチをバサッと羽織って、ムードの「ずれ感」を際立たせました。でも、色が統一されているから、まとまりがあり、チグハグには見えていません。こういう程々の「ずらし」が平凡なトレンチルックから抜け出すコツです。靴とバッグは黒で引き締めています。
自分らしく着こなすなら、まず前を開けて。ボタンを閉じると、トレンチの主張が強く出すぎるから、前開けでレイヤードに仕上げるのが上策です。裾広がりのAラインやテントラインのシルエットは、ベルトを巻かずに裾を遊ばせることによって、ドレスライクな雰囲気でまとえます。
お約束の肩当てやベルトがない「崩しトレンチ」は、ソフトな印象で着やすいタイプです。ミリタリーやワークウエア風のコートはマニッシュでクールなたたずまい。タイダイ染めのセットアップの上から自然体ムードで羽織りました。無地のコートを退屈に見せないためには、目立つ色や柄のウエアに重ねて。足元にエスバドリーユを迎えて、抜け感を漂わせました。バッグでエレガントな雰囲気も寄り添わせています。
見慣れたトレンチにも、イメージチェンジの波が押し寄せてきました。大きな変化点は、軍服由来のいかついディテールを削るところ。チェスターコートのように細身で縦長のシルエットと融合するアレンジも広がって、着こなしバリエーションが一段と広がっています。
レースのようなプリントが施されたトレンチはドレッシーな表情をまといました。フォルムのほうも、シャープな縦長。きれいな落ち感が備わっています。ショートパンツで合わせて、丈違いの「長短レイヤード」を際立たせたのは絶好のアイデア。足元はエナメル系ブーツでつややかなアクセントを利かせています。
ありきたりのトレンチコートとはひと味もふた味も違うトレンチコートです。スリーブレスのトレンチ風ベストに、ボレロ風のショートコートを組み合わせたマルチWAYの仕立て。2枚をばらして、スリーブレスコート、ショートブルゾンとして別々に着られます。
両袖がふわっと膨らんだ、エレガントな立体感が目を引きます。一方、ロングジレになる身頃部分はシャープですっきり。2着をドッキングさせると、写真のような変形トレンチが誕生する仕掛けです。
大きめの襟や、突き出た肩口、ボリューミーな袖など、見どころがいっぱい。コートに視線が集まるから、トップスもボトムスもプレーンなタイプでOK。ゴールドのチェーンバッグとヒールサンダルで華やぎをプラスしました。
ベストは綿100%で、ボレロはナイロン100%という異素材のミックスだから、微妙な風合いのずれ感が装いの表情を深くしています。色はベージュを用意しました。癖が強くないから、肌に自然となじみ、自在に着回しやすい安心カラーです。
写真のように前を開けて、ゆったりめに羽織れば、かえって華奢感を引き出せます。ロングジレで使うと、ほとんどオールシーズンで着られそう。ショート丈ジャケットのトレンドに乗るには、ボレロ使いが重宝です。
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数年前のチェスターコート以降、メンズの伝統的なコートを、ウィメンズに持ち込む成功例が相次いでいます。トレンチをもっとスッキリさせたような「バルマカーン(Balmacaan)コート」もその一例。マニッシュなシルエットがプラウドな着映えに導いてくれます。
まるでメンズ物を着ているかのような、シンプルでノンシャランとしたフォルムがすがすがしいほど。あえて別ムードのデニムGジャンに重ねました。ボトムスはタイトスカートでレディーライクに。ジェンダーミックスのスタイリングを組み上げやすいのも、メンズ由来のコートだからこそです。
身頃から袖がつながったラグランスリーブは、肩周りが楽々。ボリューミーな袖にはタックを入れてあり、腕の動きもスムーズ。気負わない雰囲気まで寄り添います。袖口のベルトを締めたりゆるめたりして、カフスシルエットを自在にアレンジできるのも、芸達者なところです。
撥水加工を施した、ウールギャバ生地(毛100%)で仕立てられました。雨を弾くだけではなく、汚れも遠ざける機能素材です。色はなめらかなシルエットにマッチするベージュ1色。穏やかなカラーが品格を醸し出します。
喉元のボタン以外はボタンが見えない比翼仕立てなので、エレガントに着られます。ロング丈でもスッスッと歩きやすいのは、背中側に深く切れ込ませたベントのおかげ。両手を差し込んで歩いても様になる斜めポケットも重宝です。
出番を問わず、普段からマルチに着回しやすいユーティリティコート。ミニマル寄りのタイムレスな表情だから、長いパートナーになってもらえる予感ありのアウターです。
コートのシルエットが一段と多彩になってきました。防寒のイメージが強いコートですが、春まで着られるタイプはガウン風のゆったりタイプがおすすめ。くつろいだ雰囲気を印象づけてくれるので、やさしげなキャラクターが寄り添います。
バスローブのように自然体でまとえるガウンコートは、シーンフリーで着こなしやすい点でもウェルカム。ベルトはゆるめに巻いて、結び目は真正面からずらすとこなれ感がアップします。
上品なベージュが落ち着いたコートルックに導いてくれます。Vゾーンから少しだけトップスをのぞかせて、お好みの差し色に。アイキャッチーなネオンイエローはフレッシュな印象を呼び込みます。袖まくりで元気感を出す小技も効果的です。
見るからに軽やかなムードが備わっているのは、コートでは割と珍しいリネン(麻)を55%も用いているから。残りの45%もレーヨンで、さわやかに着られます。洗濯機洗いがOKなのも大きな魅力。春のさらに先までお供してもらえそうです。
着心地や見た目が「重たい」タイプとは違って、サッとラフに羽織れるのは、リネン主体のガウンコートならでは。コートとの付き合い方がガラッと変わる新体験が始まります。
麻特有のざっくりした風合いは、カジュアルコーディネートでの普段使いに誘います。デニムパンツやカーゴパンツとも好相性を発揮してくれそう。一方、レーヨンには自然な落ち感が宿っています。動きに応じて揺れる、優美な質感がエレガントな雰囲気を呼び込む理由です。リネンを主に使いつつ、両素材のいいとこ取りを叶えました。
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進化系トレンチは着こなしの自由度を高めてくれる、頼もしいアイテムです。コートならではのまとまりや落ち着きが備わっているから、逆にボトムスや靴で遊ぶ余地も広がります。前を開けて着ると、秋冬とはまた別の春夏レイヤードが楽しめそう。「ガリャルダガランテ」の新作から自分好みの1着を見つけて着こなしをアップデートしてみませんか。
Text / Rie Miyata
宮田理江
(ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター)
多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報などを発信。リアルトレンドを落とし込んだ着こなし提案も得意とする。コンサルタントとしてのビジネスも手がけ、企業向け提案、セミナー、イベント出演も多い。
Special Thanks!
大野ウィリアム桂充
フォトグラファーとしてアパレルや芸能を中心とした撮影を行なっており、現在6ブランドを担当。パリコレやNYコレクションのストリートスナップ撮影も行なっている。
Instagram : @wko_.16
HP : https://wkono16.wixsite.com/mysite-1